piano
Topページへ戻る


オーケストラの裏側(7)
<協奏曲での競演>  
パラリンピックも華やかに幕を閉じました。
体にハンディをもっていても,あの力強さとみなぎる活気は,のほほんと暮らしている凡人にはとうてい足元にも及びません。
同様に,ハンディキャップをもった演奏家は昔も今も,個性あふれる素晴らしい音楽を私たちに提供してくれています。
 昨今話題の“片手奏法”で演奏活動を再開されている舘野泉氏もその一人。脳溢血に倒れ,半身不随の身となって尚,「左手のピアニスト」として復帰されました。
以来氏が掘り起こした多種におよぶ左手だけのピアノ曲の新鮮さと,
その研ぎ澄まされた美しい音色には新たな感動が集まっています。
氏が遭遇した“不本意な人生”が,これまであまり知られていなかったラヴェルやプロコフィエフの「左手のための協奏曲」などを日の目にあてたという,「災い転じて…」になった訳です。
(舘野泉リサイタルは,4月27日イズミティで催される予定)

 
衝撃的な音との出会い
   さて今回はその「協奏曲」です。
さあ,協奏曲交響曲,はたまた狂詩曲だの交響詩(アア続けて読み上げるだけで舌がもつれますね!)という名称は,どこがどうなっている音楽なんでしょうか。機会があったら,音楽事典などを開いてみてください。
 オーケストラの演奏会プログラムでは,基本パターンとして,
序曲・協奏曲・交響曲といった順にフルコースのメニューが組まれることが多いんですね。
しかしこのセットはかなりリッチなメニューなんですが。
中でも協奏曲は,前菜の後のこってりしたスープか,またはメインディッシュの前の魚料理のようなランクに位置付けられる曲です。

 協奏曲は,中央にいるオーケストラをバックに,ある楽器の独奏者(ソリスト)がステージ前中央で演奏するもの。
その主役はピアノがもっとも多く,ついでヴァイオリン,チェロ,トランペット,クラリネット,ホルン…などと続きます。
珍しい曲では,「ティンパニ協奏曲」や「コントラバス協奏曲」などもあります。
もちろん,このときの“主役”
として立つ方は,ソリストとしての技能と才能を磨き認められたという,「特別コース」を歩んでこられた演奏家です。
  こういう曲を演奏する時は,オーケストラとソリストとが“競演”することになるので,練習時からその演奏家の個性や人柄がとても身近に感じ取れるチャンスなのです。
著名な人気ピアニストだと聞いて期待に胸躍るのですが,実際にはそれほどでもないことを練習の時点で知ることになったり,(オケのメンバー内でそんな確認がされることも)逆に会う前はマイナーなイメージであったのに,初めて音色を聴いたとたん強烈な衝撃を感じてしまった演奏家もいました。
   今もその音が鮮明に耳に残る二人のピアニストについて,次回に紹介します。


オーケストラの裏側(8)

<衝撃的なピアノの音色>
「何という音色を出す演奏家だろう!」
最初の練習時から,その衝撃的な音楽と音色に圧倒されてしまった私ですが,今も尚,あの音色以上のピアニストの音は聴いたことがありません。
その人の名は,ロシアのピアニスト,ミハイル・プレトニョフです。
えっ?きいたことが無い?そりゃーそうです。
今やロシア・ナショナル管弦楽団という自分のために作られたオーケストラを持ち,年間数十回ものリサイタルをこなす一方で,指揮者として作曲家としても,精力的にアメリカやヨーロッパ中を演奏活動で駆け巡っている人です。だから,アジアのこんなちっちゃな島国の日本には,
なかなか立ち寄ってくれる暇はないのでしょう。(実はたびたび来日はしているのですが、仙台まではなかなか来られないようです)

  私が出会ったのは,もう20年以上も前のことです。モスクワ音楽院の学生として,第6回チャイコフスキーコンクールで一位を獲得したした直後の,彗星のように世界デビューした頃のことでした。
彼が奏でる音は,練習会場にある小さな練習用のピアノなのに,突然天井までの空気全部が響き渡るような,オーケストラの壮大な音量からピアニッシモまで,変幻自在に駆使するかのような技巧。
このすごさには,本当に驚かされましたね。
当然、本番の演奏もオーケストラも聴衆も彼のピアノの大きな音楽と音の渦に巻き込まれ、自在に操られているようでした。
 
<「癒し」ではなく「治療」する音>
  古今東西,高名なピアニストは多々あれど,この人のピアノの音色は,「睡眠中の脳に残っている疲れや歪みすら取り除く」とか「ピアノや指揮棒を使って演奏会場中の徴聴衆を集団治療するヒーラーである」
(鷲見 弘「プレトニョフに関する批評」より)とすら評されています。
例えて言うなら,泣いてむずかる赤ん坊に子犬を見せるとします。
赤ん坊は急に,自然からの贈り物をされたようにきょとんとし,やがて微笑んだり子犬に手を差し伸べるでしょう。
そんな,人間の幸せの原点でもある,自然の喜びを蘇らせるような「絶対的感動」というものを,彼の音は人々にもたらす力をもっているといわれています。

 鷲見氏はまた,「全く音楽に興味のない集団にプレトニョフのCDを聴かせただけで,そのうちの多くがクラッシックファンになってしまった」という報告もされています。
現代社会の中で幾重にも歪められ,無理を強いられる社会にあって,
彼の作り出す音色は,ただ引き込まれて聴いているだけで懐かしい安らぎに包まれるのです。

 「癒し系の音楽」などという言葉がもてはやされる昨今,モーツァルトや室内楽など,作曲家ジャンルや形式でそれらを区別されがちですが,医学的な根拠をもって示すならば,正しい癒しの音は「音色」である,ということが証明されることになります。
プレトニョフを知ってる人も初めての人も、ぜひ彼のCDを聴いてみてください。
絶対のお薦めです。

オーケストラの裏側(9)
随分、暖かくなってきましたね。
桜も終わり、淡い新緑の季節も過ぎ木々の緑もかなり濃くなって、
夏ももうそこまで来ている感じです。
このオーケストラの裏側、先月5月はfm泉の高橋コージさんの番組「おとこのじじょう」で電波に乗せていただきまして、コージさんとの会話でお送りしました。
聴かれた方もいらっしゃいましたか?
活字とはまた違ったちょっと生々しさと新鮮さがあったのではないでしょうか・・・。
 ゴールデンウィーク中に、昔の仲間たちと一緒に演奏する機会がありました。
久しく忘れていた(?)プロの演奏家の音に包まれて、適度な緊張感を味わいつつ気持ちよく演奏することが出来ました。

 その時、前回書いたミハエル・プレトニョフが今年の年末、
東京フィルハーモニーを指揮する予定になっている事をこのオーケストラの友人から聞きました。残念ながらピアノの演奏会ではありませんが、興味のある方は是非足をお運びください。
 さて、引き続き強烈な記憶に残るもう一人のピアニストのお話です。
この時のプログラムは、モーツァルトのピアノ協奏曲でした。
モーツァルトは演奏家にとって最もやっかいな作曲家のひとり。
譜面づらはそんなに難しくはないのですが、
音の一つ一つの粒をそろえることやら音作りが大変な作曲家なんですねこれが・・・。

それが、この時もそのモーツァルトの理想的とも言えるような音が、
いつもの練習場の貧弱なピアノから出て来たからビックリ。
口をアングリ開けて呆気にとられてような感じ。
この人が、井上直幸さんでした。
後にも先にも、生の音でこんな丸くて柔らかくて粒の揃った
モーツァルトの音・音楽を聞いたのは初めてでした。

そんな、井上先生も2003年に急逝されてしまい、
もう生の音を聴くことは出来なくなってしまいました。とても残念です。
彼の書いた、《ピアノ奏法》と言う本が出版されていますので、
それを読むと彼の音・音楽の秘密がわかるかもしれません。
 

いずみっぷるの原稿より

3才から、大人の方までいろんな年齢の方がいらっしゃいます
初めての人でも安心してレッスンが受けられますので、
お気軽にお問い合わせください。

      幼児から     大人の方まで












月 謝   8,000円より 月/3〜4回(40分個人)