ある冬の日
 「
 報告します」 
 抑えた声が聞こえた。 
「あと5分ほどです」 
 静かに頷いて、周りを見回す。 
 窓の外は雪が降り出す一歩手前の灰色の空。温もりの届かない部屋の隅は、だから凍るように冷たい。 
 井戸の傍でおじいさんが、小さな女の子と一緒に火の番をしているのも見えた。 
 時折勢いの強くなる火に、女の子がよりはしゃいで薪をたす。 
 そこだけを見れば、平和な冬の日だ。 
 一階へ移動した。 
 隣の部屋では、和装に身をかためた女性たちが忙しく立ち働いている。 
 そろそろいい頃合だ。 
「突撃!!」 
 僕の合図で、一斉に子どもたちは走り出す。 
 たった今、まるめられたばかりのお餅を狙って――。