『マーベル・フローズンの日記』
時間が経過したものは古くない
マーベル・フローズンの日記の
かすれた文字をなぞる
記憶は波紋
生まれ ひろがり 消えてゆく
脇役こそ真のスタア
名も無き者よ勝どきをあげよ
鍬を持つ手に銃を取り
はかなく散った青年
祈りを言葉に変えて
後世に残して逝った
忘却は癒し
過去にすがりつく囚われびと
退廃の歴史を語り街を出よ!
通り過ぎた名前
口に出したなら年老いてゆく
最期の瞬間に浸るためなら
善い事だけを取っておけ
追憶は憧憬
見知らぬ風景が呼ぶのは
それがあなたの心象だから
感じるままに発したならば
あなたは気付くだろう それが
とある農村の青年が
この世に託した祈りの言葉だと
沈黙は歴史
たとえその名は知られずとも
草の下を耳から耳へ
伝えられたそれはいのちを持ち
悠久を流れる大河のように
時代を超えてひとびとを潤し
大いなる拠り所として
受け継がれてゆく
マーベル・フローズンの日記は
あたかも人の気配を避けるかのように
陽に焼けた書架に静かに佇んでいる