『カタカタ』


三ヶ月ぶりにネクタイを締め
スーツに袖を通した時
背筋が伸びた気がした
ほんの三秒くらいだったけど

三ヶ月ぶりに社員証を見せて
自社ビルに入ってみる

カタカタ

皆さんキーボードを叩いて
誰もこっちをみない
確かに皆さんに用ではないけれど
三ヶ月ぶりですよ 皆さん

就職マニュアルより抜粋

 入社すべきでない会社
 「頭の悪い人達が集まって仲良くしてる会社」
 「頭の良い人達が集まって背を向けてる会社」

席に着き引出しを開けると
蛍光ペンや消しゴムがごっそりなくなっていた
今日は私物を持って帰る
無造作に詰め込んだ七年半は予想より軽かった

油切れで停止している課長に油を差して
再起動させてから挨拶
身体に気を付けてがんばってくれなんて
よくいうよ居眠りしてたくせに

「T田さん、お疲れ様でした」
新入社員の女の子
造花と見間違うほど心のこもらない花束
いやな役目は常に新人だ

これでセレモニーは終了と
心なしか皆さん満足そう

エレベーターのドアが閉じるまで
キーボードの音が響いていた

カタカタ


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