『鴉の森』
ほつれた振子時計が十二時を告げる
日付の更新は昼と夜の交代を意味しない
曖昧に昼は夜を呼び
夜は夜明けに追いやられる
二つ目の太陽が沈む頃
焼け焦げた鴉が
いまにも泣き出しそうだったから
拾い上げて連れて帰る
「おまえ、死ぬのか」
と訊いたら
弱々しく何かを訴えているようだった
家に着いたら何か食わせてやるから
心配するな
もしもおまえが天寿をまっとうしたら
庭に埋めて弔ってやる
そしてそこから名も無き草が生え
やがて鴉の森になるだろう
鴉の森はお前たちを忌み嫌うものはいない
森の木々は逞しく成長し
お前たちの巣になり
にんげんが現れる前
お前たちが食べていたものを実らせる
にんげんなどいなくても
生きてゆけることを見せてやれ
鴉としての自我を
誰に媚びることなく開放するんだ
鳥かごに入ることを拒否し続けた
鴉のプライドを見せてやれ
鳥としての尊厳を取り戻せ
賢いお前なら分かるだろう
お前たちの世界 お前たちの森
賢いお前なら見えるだろう
お前たちの世界 お前たちの森