TRAC2


 TRAC2を作って1年近くになろうとしている。バネのヘタリやショックの選定など、十分に時間をかけて作業をしたら、そうなってしまった。今回はその経緯も踏まえTRAC2についてレポートしよう。


●TRACサスの改良(?)点

 TRACサスを弄っているうち、もう少しセッティングが詰められるのではないか? という考えが頭を過ぎった。元々、TRACサスは開発者であるスクエア船橋のS氏のUBSショートをモデルにして作成された経緯があり、(結果的に?)軽いガソリン車やWIZARDなども考慮されている。
 UBSロングの場合、バネとショックを外したリンク類単体のサスストロークは、約630mm近くあり、現状のTRACサスにベストと思われるランチョ9008の伸び側555mmを考慮しても、まだまだ余裕のある計算だ。当然、ショックは縮み側も考慮しなければいけないが(現状では9008でほぼ限界)、この辺は工夫で何とかなりそうな気がする。また、リフトアップ量もボクの現車(UBS69GW)で約50mmと、それ程リヤが上がったな〜 という感じでもない。そこでUBSロングをターゲットとして、UBSのサスストロークの限界に挑戦するバネを作ることにした。


●基本方針

(1)ターゲットはUBS69GW(ロング)、ショートやWIZARD等の他車種は考慮しない。
(2)バネ材は、既に耐久性が実証済みのTRACサスと同じSUP12を使用。
(3)TRACサスの仕様をベースに、巻き数、ピッチ等を見直し自由長を出来るだけ長く、もう少しクロカン寄りのセッティングとする。
(4)バネ定数は現状のTRACサスが街乗りでもフワフワにならず、クロカンでもしなやかに足が動いてくれるので、現状の設定に近い物とする。
(5)ヘビーな改造はしないで、バネとショック交換程度で収まるものとする。
(6)クロカンしか出来ないバネはダメ。街乗りは捨てない。


●バネ製作

 検討に検討を重ねた結果、出来上がったのはコレ。現状のTRACサスよりも自由長が50mm長く、装着時のバネ定数は気持ち柔らかい設定だ。計算上のリフトアップ量は18mm。これ以上長くなるとリフトアップ量が大きくなり、それを押さえようとするとバネが柔らか過ぎてしまうギリギリの線だ。
上から、ノーマル、TRAC、TRAC2
 

TRAC

TRAC2

 材質 SUP-12 SUP-12
 自由長 500mm 550mm
 巻き数 12 12.5
 バネ定数 2.8 〜 4.2kg/mm 2.7 〜 3.9kg/mm

 早速装着し、試走してみる。第一印象はTRACから比べ、たいぶ柔らかい感じだ。TRACサスの特徴は静止状態で密着しているピッチの狭い部分。これが、街乗りでのしっかり感 and クロカン時の長い足の秘密。今回は、ヘタリも考慮してギリギリ密着する設定としたので、初期状態では多少隙間があってバネ定数は柔らかい感じとなっている。ヘタってくるとTRACサスの仕様に近づいてくるという1粒で2度おいしい設定だ。(本当にそんなに上手く行くかは不明) 当面は、このまま数ヶ月の実走テストとし、バネがヘタったところでショックの選定を行うことにする。尚、ショックは9008のままなので、当然、クロカン性能は変わらない。


●ショック検討

 さて、長いショックをどう納めるか考えなければならない。色々なショックを調査したが、伸び側が600mm以上の物になると、縮み側も400mm近くになってくる。UBSの場合、ノーマルでは345mm程度が限界なので、ショックのチョイスだけでは現状の9008と比べても大した結果は期待できない。そこで、ショックマウントを移動し、もっと長いショックを納めることを考えてみた。

 障害物との干渉を考えると、上側のマウントを変更するのが良い。フロアパネルまでには若干の余裕があるが、取り付けなどの作業性を考慮すると、あまり目一杯追い込むのは宜しくない。ショックを寝かせればより長いショックが着けられるが、マフラーが干渉する可能性があり、マフラーの取り回しを変更する必要がある。ボクの車のことだけを考えればそれが手っ取り早いが、それだと売り物としてはイマイチ。コンセプトからも外れる。

 次に下側の移動を考えてみた。こちらは実現可能そうで、早速、50mm延長するブラケットを作ってみた。ボルトオンを考え、ノーマルのショックマウントを利用して取り付ける形としたため、ちょっと大きなものとなってしまった。ノーマルのショックマウントをカットし、単純に延長(溶接)するだけであれば比較的簡単だが、それではコンセプトからは外れてしまう。
 しかし、試作したブラケットはお世辞にもスマートとは言えず、機能的には問題ないが、あまり着ける気にはなれない。
 以上のようなことを色々とやって、結果、数ヶ月の時間が流れた…。


●ショック決定!

 長いショックを入れるもう一つの方法としては、縮み側の規制=バンプストッパの延長が考えられる。但し、サスの基本は縮み側だし、縮み側を規制すると横転し易くなるのでボクの好みではない。実は、長いショックを入れるとバンプストッパを支点(正確には違うけど)にしてタイヤが内側に入り過ぎる(縮み過ぎる)ので、インナーフェンダーに干渉するギリギリの最低の規制が必要となる。ショックを取っ払って犬ション台で現物合わせしたところ、20mm程度の規制が良いようだ。この状態でショックマウント間を測定すると、伸び側605mm、縮み側375mmの9116あたりが適当なサイズとなる。バネの遊び具合やホーシングのズレ等も考慮すると、バネが外れない程度でまずまずのサイズだ。ショックマウントの移動の手間・コスト・効果等を考えると、この仕様がコストパフォーマンスが良いようだ。(別にRS9000シリーズに拘る必要はないが、減衰力が調整できるのでセッティングが楽なこれを採用)
 尚、この状態でワンタッチスタビ解除(試作)は、スタビのアーム自体の長さが足りなくなって撤去となった。スタビリンクの延長等ではどうにもならない。


●テスト

 さて、問題はアクスルが目一杯縮んだ時に、縮み側に問題が出ないか? これは、9008の場合も同様なのだが、ショック自体のバンプストッパ、ブッシュの潰れなどのマージン以上にアクスルが縮もうとすると、最終的にはショックの破損かショックマウントの脱落となる。感覚的には、ランチョのバンプストッパは結構丈夫で、マージンも10mm程度は稼げそうなのでたぶん大丈夫だろう…。早速、犬ションに乗せてみる。

 まずはフロントから。この仕様で800mmの犬ションを登り切った。

 こちらはリヤから見た図

 縮み側も目一杯。これで、タイヤはギリギリ インナーフェンダーに干渉しない程度。

 次にリヤから。今までのTRACサスでも登り切っていたので105mmの角材を敷く。これでちょうど目一杯だ。

 こちらは、伸び側のバネの様子。

 これが拡大したところ。アクスルがかなり捩れているためバネの外側が浮いているが、バネ自体にはもう少し余裕がある。ま、この辺がベストかな。

 こちらは縮み側。バンプストッパーはペッチャンコ。バネの隙間にはもう少し余裕があるが、キチキチだとバネに優しくないので、ま、こんなもんか。

 トレーリングアームの捩れも目一杯。


●最終結果

 さて、最終結果だが、今のところ全く問題無い。この仕様で街乗り&クロカンで半年以上乗っているからショックマウント等の方も問題は無いだろう。バネの例の隙間も、今は付くか付かないかの状態で、まずまずの状態だ。実際に乗った感じも、初期の動きがTRACよりも柔らかいかな? って感じだが、沈み込みの剛性感は変わらず。(ま、当然か) リフトアップ量はTRACから比べ15mmアップで、ノーマル比では2.5インチアップってところだ。ヘタリの方は予想以上に少なく、現状、取れる気配は全くない。
 個人的な感想としては、街乗りとクロカンが半々(気持ち的に)な人や、 WIZARDなどの軽い車はTRACがベスト、それ以上のクロカン性能を求める場合はTRAC2ってパターンかな。


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