サイドシルガード



 破壊菌によるクロカン病は感染力が強く自覚症状が少ないため、知らず知らずのうちに病状が進んでしまうことが多い。最初は「スキーやキャンプ用!」と言っていた人達も、病気に冒された知人や友人にクロカンフィールドに連れて行かれたが最後、ボディーの擦り傷を気にしなくなり、やがてはパネルの凹み、サイドシルの凹みが多くなり、しまいはパネル一面乱反射な状態となってしまう…。
 これまでは毎週末にワックスをかけ、ワックスの銘柄やコーティング剤を求めカーショップを徘徊していた人達が、おおよそ車はおろか人さえも通れないような道ともおぼつかない場所を求め徘徊し、その情報はインターネットを媒介として爆発的に広がる…。

 この病気の社会に与えるインパクトは大きく、危機感を抱いた当研究所は長年この病気について、原因や対策、症状など色々な側面から研究を行って来た。そして、ついに症状が一気に進むポイントがあることを突き止めた。

     そう、サイドシルである…

 ここが凹んだ際の影響は予想以上に大きく、ドライバーは毎回車に乗り込む度に目にする凹んだサイドシルの映像で脳の神経細胞を刺激され、シナプスの増殖、ドーパミンの大量発生を引き起こし、興奮状態の記憶が海馬に刷り込まれてしまう。

 こうなったら最後、ドアの開閉に支障をきたそうともクロカンは止められず、ハンマーと当て板を持ち歩く、いわゆるクロカン廃人の日々を送ることになってしまう。
 そこで、当研究所では安全にクロカンを楽しむための予防策として「サイドシル・ガード」の開発を決行! ここに経緯と結果の発表を行う。


●調査

 サイドシルガードの歴史は古く、アメリカではRocker ProtectionとかRocker Skidと呼ばれる製品がある。例えば、UBS用ではINDEPENDENT4x、Jeep用ではTOMKENなんかが有名である(と思う)。

 形式としては、丸、または角パイプをフレームにステーで固定するタイプと、ボディーパネルにプレートを直接固定するタイプがある。

 前者は、ボディーの加工が不要で固定方法もフレームへの溶接、またはボルトオンといった形で、ボディーのオリジナリティーを重視する向きには宜しい。但し、強度を出すためには、パイプの太さ、厚さとも必要で、かえって路面との干渉を助長してしまうこともある。
 次に後者の場合だが、路面とのクリアランスの減少は最低限で済ませられるが、接地した際の衝撃はボディーを直撃するため、ヤワなボディーだとサイドシルが変形したり、ボディー全体の歪み、ドアが開かないといった現象が発生することが考えられる。特に、四駆の場合、乗用車と違ってシャーシの重さをボディーが支える程の強度は無いため、ガツン!と行った時にはヤバイかも知れない。

 で、色々考えた結果、UBSの場合ボディーが厚くただでさえ干渉し易いので、これ以上干渉物を付けるとかえってスタックし易くなってしまう。サイドシルにプレートを固定した場合、問題になるのはサイドシルの強度だが、Aピラーの付け根、Bピラーの付け根、リヤタイヤのアーチの付け根の部分には中に補強が入っていて、ある程度の力には耐えられそうな気がする。
 プレートが受けた力をボディー全体で分散できれば、上記の問題も回避できそうなので(裏付けなし)、プレート式で全体に力を分散する方法を検討した。


●検討

 当初は、サイドシルをカットし、丸、または角パイプを直接サイドシルに埋め込むことを考えた。4.5mm位のパイプを中の補強に溶接してしまい隙間はシーラーで埋めてしまえば、結構行けそうな気がする。但し、加工には結構手間がかかりそう…。
 そこで、折りを入れたプレートをサイドシルに固定し、サイドシルに発泡ウレタンを注入すれば全体的に力が分散できるのではないかと考えた。プレートを折るのは機械があれば簡単な加工だし、サイドシルに発泡ウレタンを注入するのも容易な作業だ。問題は発泡ウレタンのコストだが、色々調べてみると1万円前後で何とかなりそうな感じだ。


●実施

 まずはプレートの製作だが、材質はジュラルミンやステンレスが強度もあって錆にも強くオススメだと思う。特に、ステンレスの場合は固くスキッド性があって岩の乗り上げなどには大変向いていると思う(加工は大変だが…)。但し、コスト的にはかなり高いものになってしまうので、当然、当研究所としては鉄(t=4.5mm)をチョイスした。

 これをプレス屋に行ってちょこっと曲げて貰えば事は簡単なのだが、加工賃もバカにならない。50mm×1800mm×4.5mmのフラットバーはジョイフルホンダでも300円である。折りの部分を溶接で繋いで作るとしても4本購入すれば済むから、たった1200円でOKである。溶接の方は自分でやればタダなので、例によってサンダーの歯が何枚かあればOKだ。

 ということで、長さ1600mmのフラットバーを溶接で繋ぐという暴挙を決行! 作業自体はそれ程難しくもなく、製作から取り付けまで1日で余裕で終わった(写真撮ったんだけどなくなっちゃったんだよね〜)。プレートの固定は隙間にシーラーを入れてサイドシルにリベット止めを行い、上から黒の缶スプレーで塗装を行った。

 注意: シーラーは塗装できるシリコンが入っていないタイプを使うこと。


 さて、次にウレタンの注入である。ウレタンはY speedで購入した。価格は4kg入りの「ハードウレタン 4」で9800円。親切な対応で、直ぐに入手することができた。


 注入はフロント/リヤのどちらからでも良いが、作業がし易いフロントから行った。サイドシルの中は回りの鉄板が冷えているので、ハロゲンランプで暖めておく。


 化学反応し易いように湯せんにかける。


 サイドシルはステップを外すとこんな感じ。


 ウレタンを注入する穴をホールソーで空ける。UBSの場合、内部が補強パネルで幾つかに仕切られているので必要に応じて4ヶ所空けた。


 注入に際しては、はみ出た事を考慮してマスキングを行う。内装に付いたら取れないよ〜。


 注入は、じょうごが付属していたが穴が大きい方が一気に注入できるので(時間が勝負!)500mlのペットボトルを利用した。


 ウレタンの混合は取説では同じ分量と記載されていたが、たぶん厳密には重量比を同じにする必要があるんじゃないかと思う(勝手に判断!)。念のため、上皿天秤で重さを量ってみるとこれだけの違いがあった。


 攪拌用に割り箸が付属していたが時間が勝負なので効率よく混ぜられるよう、ドリル+六角レンチを用意した。たぶん、攪拌が十分じゃないと均一に発泡しないと思われる。


 作業手順は、原液A、原液B、を容器に入れ一気に攪拌。時間は10秒くらいだろうか。そして手早く一気に流し込む。サイドシルの下の隙間からウレタンが多少漏れてくるが、あまり気にするまでもなく直ぐに発泡が始まる。


 足りなければ何度か注ぎ足してあふれるまで作業を行う。


 前が終了したら前輪を持ち上げ後ろに移る。


 同様にウレタンを注入する。


 前後が終わったら車を水平にし、真ん中から注入を行う。シートベルトを取っ払うとちょうど良い大きさの穴があって、注入されている様子が伺える。


 以上で完成! 因みにサイドシルガードの全体はこんな感じだ。







 さて、効果の程だが、ジャッキアップテストなどは行っていない。あまりボディーに負担をかけるのは宜しくないと判断したためだ。 >恐ろしい結果になったりして〜!?
因みに、これまでに岩への軽いヒット数回、モーグル(土)での地面へのヒット数回を経験しているが、今のところ特に不具合は発生していない。

 そうそう、使った発泡ウレタンの量だが、UBSの場合、4kgではちょっと足りず5kgくらい必要であった。不足分は同様のものジョイフルホンダで購入したが、2400円/1kgするので失敗分を考慮すると、「ハードウレタン 6」(6kg)を購入した方がお得かな。


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