ブーツ切れ対策

先日、犬ション台で足回りのチェックをした後ハブロックの解除を忘れ、街乗りや高速を長時間走ってしまった為ドライブシャフトのブーツが切れてしまった。ま、2インチ以上リフトアップして数万キロ以上走っているから長く持った方か! 今回は、ブーツ切れの謎とその対策を研究する。

●原因調査
原因調査と言っても、切れるのは当然と言えば当然だ。リフトアップすればCVジョイントの角度もキツくなるワケで、当然、それをカバーするブーツにも無理が掛かる。ブーツ切れはIFS四駆の宿命であり、過去にも様々な車のブーツ切れの例を目にしてきたが、切れた状況・状態を良く観察すると、切れる原因は主に2つのパターンがあるようだ。
●リフトアップ
フロントのリフトアップはIFS車にとっては悩ましいところだ。フロントにはオイルパンやステアリング・リンケージなど走行に重要な部分があるため、できるだけフロントの車高は上げたい。IFS車はリジット・アクスル車と違ってフロントが剥き出しなので、フロント回りのヒットは大ダメージとなる場合が多い。特にUBSの場合、オイルパンが剥き出しなので気が付くとオイル流失っていうケースも発生する。(過去に何度かあった) ステアリング・リンケージの曲がりや破損は現場で何とか応急処置が可能だが、エンジンオイルの流出は最悪エンジンの焼き付きという事態となる。話が脱線した。
CVジョイントの角度がキツくなると、それをカバーするブーツは余計に曲げられることになる。ブーツ自体は蛇腹になっているため柔軟性はあるものの、CVジョイントに近い部分は広がり量も多いからブーツ単体での仕事量を考えた場合、CVジョイントに近い部分(輪の大きい部分)の仕事量が一番多くなる。
伸び縮みを繰り返すうち仕事をする(折れ曲がる)部分は加熱をするが、ゴムは加熱に弱いため「破断」ということになる。ちょうどタイヤのスタンディング・ウェーブ現象と一緒だ。従って、同じリフトアップ量であれば、スピードを出す人、高速を良く走る人の方が早く切れ、冬よりも夏の方が切れ易くなる。(以上、全て長年の観察結果の想像。温度の計測など実験したワケではない)
また、UBSの場合、何故か電子制御ポンプ以降のワイド・トレッド車の方が良く切れる(この原因は謎)。
●クロカン
切れるもう一つの原因がクロカン。轍が深いドロドロの道など、ロアアームまで泥が被るような場合は、ハブ側のブーツが泥や小石で痛めつけられる。結果、ブーツ切れとなるワケだが、この場合は悲惨だ。最悪、小石がCVジョイントで暴れるのでジョイント内部がキズだらけとなる。CVジョイントのボールは多少のキズは問題ないが、キズが大きいと虫食いの原因となりガタつきや異音が発生する。(ジョイントの交換となると、ハブ側は非分解でアッシー交換) 街乗りで切れる分には錆にさえ気を付ければ良いが、クロカン中に切れた場合は後で高いモノにつく場合があるので、できるだけ大人しく帰ることをお勧めする。
●対策
切れる原因をゴムの仕事量と考えると、仕事をする部分を増やしてやれば良い(バネのヘタリと一緒だ)。そう、ヒダヒダの多いブーツに替えてやれば良い。という事で、探してみると輸出用でヒダヒダの多いウレタンブーツがある。別に私が探してきたワケではない。TRACの方で探して頂いた。あまり知られていないが何時の頃か、ヒダヒダの多いウレタンブーツはUBSでクロカンをする人達の必須アイテムであった。話を引っ張ってしまった。以下に交換の様子をお伝えしよう。作業自体はカンタンで特殊工具も要らない。
ちょっと見にくいがコレがウレタンブーツ。左右2セットの内、1セットの片側だけバンドが多く入っていた。パートのおばちゃんが、おもいっきりテレビでも見ながら入れたのか?

ハブのカバーを外し、ドライブシャフトを止めているスナップリングを外す。スナップリングプライヤーが無い場合は、ちっこいマイナスドライバーで外す。
ブレーキを外し、ダブルハンマーでアッパー・アームのボールジョイントを落とす。ロアアーム側はジョイントが止まっている金具自体のボルトを緩める。タイロッドは外さなくても可。

ブーツのバンドを緩めドライブシャフトを抜く。バンドは再利用する場合があるので、返しの部分が折れないよう伸ばしすぎないこと。スナップリングを外しジョイントを引き抜く。ボールが落ちてくるので、気を付けること。なお、ジョイントの組み方には裏表があるので、よく覚えておく。グリスを全て取り除き、きれ〜きれ〜に掃除する。
 
新品のブーツを装着! 55用の物に比べ、若干ヒダヒダの数が減ったが柔らかい素材となった。このヒダヒダが気持ちイ〜!
真ん中の溝にボールが収まる
新しいグリスを入れて、ジョイントを組む。バンドを止める前に、小さなマイナスドライバーなどでブーツ内の圧力を大気圧と一緒にするのがミソ。なお、バンドは組み付け(回転)方向があるので注意! 後は元通り組み付け完成! これで、ブーツ切れの心配ともオサラバだ!

さて、ウレタンブーツの耐久性であるが、55の時代はこのブーツに替えて切れたという事例は無い(と思う。忘れた)。 ところで、このブーツ。ワイド・トレッド車に使う場合には、ドライブシャフトの径が違うためバンドの組み替えが必要になる。価格も純正品と大差ないし、バラバラ取り寄せるのも大変なので、TRACの方でキット化しないのかな? 困っているUBSユーザーは多いと思いますよ〜。
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