バネが取れる謎

クロカン・ウィルスに感染しサス・ストローク病が進行してくると誰でも一度は発症するのがバネの脱落。これは、UBS(UCS)特有の病気で、一度発症するとなかなか完治することは難しい。今回は、その症例について研究する。
この病気の発症には幾つかのパターンがある。
●標準型
バネやショックに対する情報不足により、街のショップなどでセット販売されている「○○インチUPキット」と称するキットを組んでしまい、仲間とのクロカン走行でサスストローク不足を感じ、適当なショックに替えてしまったパターン。街のセット販売ものはクロカン走行は考えられていない場合が多く、バネ・ストーロークも大して無いため、当然、長いショックを入れればバネは脱落する。最初に行ったショップを間違えると発症し易い。
買った本人は、バネやショックのストロークについてはある程度認識しているが、肝心のサス本来のストロークを認識していないため発症するケースが多い。クロカンを専門とする医師が、適切なバネとショックを処方することによって完治する。
●無頓着型
何も考えずに適当なバネとショックを入れてしまったパターン。ショップの片隅に転がっていたり、友人から貰ったショックを「長けりゃい〜や」と、マウントの形が合っているだけで入れてしまったケースが多い。あまり金銭的に余裕が無い人やズポラな人が多く、たとえバネが脱落してしまっても気にしない患者が多い。当研究所の統計ではO型の人に多く発症する。
ショックが長すぎる場合にはバネの脱落だけで済むが、たいがいの場合、長いショックは縮み側も長いため、荷物が多い場合やハードなクロカン走行時など、リヤ・サスが目一杯縮むようなケースで、ショックが底付きし破断やマウントの脱落が発生する。UBSの場合、ショックマウントの脱落が多いようだ。クロカンを専門とする医師が、適切なバネとショックを処方することによって完治するが、患者自身、病状に気が付いていない場合が多く、性格的なもの手伝って完治は難しい。
●ストローク絶対型
上記症状が進行し手遅れになってしまったパターン。サスストロークを長くすることを絶対とし、バネ、ショック、サスペンション単体のストロークをmm単位まで正確に把握し、バネが脱落する極限までのショックをセットする。脱落の原因究明や対策などの考察にも長けており、その知識は専門医をも凌駕する。こうなると完治は難しい。なお、クロカン走行だけを考えるタイプと、オンロードでの走行性をも考慮するタイプに分けられる。一見すると、前者の方が病状が重いように思えるが、相反する問題を考えつつ「自分はまともだ」と、思っている後者の方が重症である。以下は、「ストローク絶対型」の末期患者の症例である。
下の写真は犬ション台でバネ脱落の検証をしているところ。こういった検証はリフトなどでは危険(と言うか不可能)なので犬ション台が望ましい。

バネはTRAC。ショックはランチョの9008(555mmm)。
更に9008以上のショックを入れた場合を想定しショックマウントは外してある。
縮み側はほぼ目一杯。UBSの場合、340mm程度は確保したい。
UBSのスプリング・シートは浅いため、バネの先端だけが接触し辛うじて脱落を免れている。アクスルはフレームに対し斜めに捩れるから、上下のスプリング・シート角ズレは、バネ自体が吸収することになる。
因みに、ノーマルのバネは先端がテーパー状になっていて捩れを吸収するシカケとなっている。社外品では超高級バネのジオラマに見られる。

こちらは右側の拡大写真。
スプリングシートに当たっているのはバネの途中。そう、UBSスプリングシートは左右同じものを使っている。
この場合、上の写真(左側)の方がバネの先端しか掛かっていないため、ここがアクスルのワインドアップなどでズレるとバネが脱落する。従って、バネ脱落の大半は左側が多い。
因みに、リフトで両足を上げただけだとこ、れらの現象には殆ど気が付かない。犬ション台になどに乗せて、目一杯荷重を掛けると分かり易い。

バネが脱落する原因としてはもう一つ。アクスルのズレだ。UBSはセンター4リンクの形式を採っているため、大きなサスペンションの動きはアクスルのズレに繋がる。ラテラルロッドでアクスルの左右の位置決めをしているタイプは、みなこうなるだろう。

さて、バネの脱落対策であるが、これは初期のもの。ステンレスのホースバンドである。コストパフォーマンスに優れ、錆びない、何処でも手に入るという画期的なアイデアだ。
取り付けは、バネがずれる方向、つまり前内側を止めると良い。上下のスプリング・シート角のズレを考慮して内側だけ止めるのがミソ。
因みに、上側のスプリングシートはお皿が大きいので、外れることは無いようだ。(ゴムシートの噛み込みが見受けられる場合はあるけどね)

こちらのタイプはTRACでの試作型
アルミ削り出しの高級なもの。コスト的に合わず試作でボツになった。

こちらのタイプはTRAC製品型。
取り付けたのは初期型UBS69で、後期型のUBS69とスプリング・シートの深さが若干異なっているようだ。
ハンマーで矯正し、ついでに白く塗ってみた。
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