先っぽくん



○月○日

 会社に行く途中、オートアンテナの先を木の枝に引っかけて曲げてしまった。埼玉県は路地が多い上、田舎のせいか庭の木が平気で道路にはみ出している所が多い。朝は当然みんな急いでいるから必然的に路地の交通量も多く、対向車が来る度にラジオのスイッチをOFFにするのは結構めんどうだ。55の場合、運転席側のピラーにあったので全く気にならなかったが(引っかけても折れなかったし)、69の場合、左のフェンダーから垂直に出ているので、車高の高い四駆にとっては折れ易い。
 しかし、よく考えると、街中を走っている分にはアンテナの先っぽが車体から出ていればラジオの受信は十分だ。何故、オートアンテナはラジオの電源を入れると全て伸びきってしまうんだろう? 電界強度に合わせて長さが変わったり、途中で止まったりするアンテナは無いのだろうか? 不便と思った人は居ないんだろうか?○月○日
 オートアンテナについて色々と調べてみる。基本的にどのメーカーも一緒でラジオの電源を入れると全て伸びきるか、マニュアル(スイッチ)でUP/DOWNさせるかのどちらかだ。乗用車の場合、運転席側のトランク近辺に付いていて、後ろ斜めに伸びるタイプが多いので全て伸びきってもあまり気にならないようだ。日産の一部の高級車種では自動的に途中で止まるタイプがある。
 四駆の場合、車高が高い上、助手席側にレイアウトされている場合が多く、引っかける事があるためかマニュアルで伸ばす車種もある。

○月○日
 
オートアンテナをマニュアルでUP/DOWNするスイッチを売っているとの情報を得てNOWに行く。確かにマニュアルでUP/DOWNできるようだ。但しラジオの電源をOFFにした場合、自動的にDOWNしてくれない。伸ばしっぱなしだと近所のガキにイタズラされそうだし、かといって、車から降りる度に一々アンテナを下げるのもめんどうだ。ボクの場合、ほとんどラジオは点けっぱなし。「ウィンドウに張るアンテナを買うかなぁ・・・。」 「でも、せっかくオートアンテナが付いているしなぁ・・・。」


○月○日
 
オートアンテナを途中で止める方法を考える。ビッグホーン回路図を見るとオートアンテナには常時12Vが流れていて、ラジオのからのオートアンテナ出力(12VのON/OFF)でアンテナのUP/DOWNを制御している。モーターの停止はアンテナユニットにリミットスイッチが入っている。
 従って、アンテナに行く常時12Vをカットすればアンテナは途中で止まり、ラジオの電源OFFで常時12VをONにすればアンテナは自動的に下がる。ここまでは簡単だ。しかし、次回ラジオの電源をONにした時には前回の位置で止まってほしい。アンテナモーターは単なるDCモーターなので、ステッピングモーターのように「何回転したら・・・」なんていう制御はできないし、タイマーか何かで通電時間の制御しか無いかなぁ?

○月○日
 オートアンテナを途中で止める方法を考える。本屋をウロウロする。

○月○日
 オートアンテナを途中で止める方法を考える。秋葉をウロウロする。マイコンでステッピングモーターを制御するキットを発見! しかし、マイコンは8ビットでオーバースペックだ。モーターの移植も行うとなるとかなり大掛かりだ。たかが車のアンテナ。何か後付で簡単に実現出来ないものかなぁ? 55かジムニーのアンテナを付けるのが簡単だが。

○月○日
 オートアンテナを途中で止める方法を考える。仕事をする。Internetをウロウロする。

○月○日
 オートアンテナを途中で止める方法を考える。仕事をする。Internetをウロウロする。

○月○日
 オートアンテナを途中で止める方法を考える。仕事をする。Internetをウロウロする。
EEPROMを内蔵したワンチップマイコンを発見する。 Microchip Technology Inc.というアメリカのメーカーの製品だ。I/Oポートやタイマーも内蔵していて、価格は1個数百円程度。秋葉で入手可能。洗濯機や炊飯器等に使われるのだろうか? 何となく使えそうな気もするが、マイコンなど使ったことがないので???。ましてや資料は英語! そもそも、電気/電子と呼ばれるものについてちゃんとした勉強をした訳ではないのでイマイチ要領を得ない!?

 よく見かけるゲジゲジみたいなヤツです

○月○日
 仕事をする。ワンチップマイコンに関する資料を収集する。

○月○日
 
仕事をする。ワンチップマイコンに関する資料を収集する。
地道な情報収集の結果、簡易的なROMライターの回路図と書き込みプログラム、サンプルプログラム、開発キット、制作記事などを入手。パソコンから書き込み可能なようだ。因みに全てタダ。

○月○日
 
秋葉原へ行く。ROMライターの部品を購入。3000円ちょっと。

○月○日
 
仕事をする。ROMライターの配線図を考える。

○月○日
 ROMライターを作る。間違いがあるとパソコンが燃えちゃうので、配線図を入念に確認しながら作成する。

○月○日
 
マイコンの命令や開発キットの使い方を勉強する。ちょっと特殊な命令だ。誰か日本語に訳してくれ〜!!

○月○日
 
今日はいよいよ実験してみる。実験用基板に電源やLED、水晶発振器などマイコンを動かすための最低限の部品を配線する。タイマーでLEDを点滅させる簡単なサンプルプログラムを作成する。ROMライターをパソコンに接続し、電源ON! ・・・とりあえず燃えないようだ。作成したプログラムを書き込む。
 プログラムを書き込んだマイコンを作成した基板に差し込み電源ON! ・・・無反応。プログラムを消去し再度書き込む。 ・・・無反応。何回か試すうちLEDが点滅。おぉ! 何だか原因はよく分からないが、よっしゃ! よっしゃ!(これは後日ROMライターが原因と判明した。ま、何しろインチキなライターだからね。)
名称未設定 2.GIF (44404 バイト) ROM焼き中

○月○日
 
仕事をする。アンテナモーターの制御方法を検討する。

○月○日
 
仕事をする。アンテナモーターの制御方法を検討する。

○月○日
 
仕事をする。アンテナモーターの制御方法を検討する。
アンテナモーターは結構電流を食いそうなので、大きめのリレーでON/OFFすることにする。マイコンからのリレーの制御は直接I/Oに接続すると電気的に不安なので、スイッチング・トランジスタを咬ませることにする。

○月○日
 
ホックル氏の80がオートアンテナを木の枝に引っかけて曲げてしまい、アンテナユニットを交換したとのことで壊れたオートアンテナを貰う。何でも交換は大変だったらしい。実験用に使うことにしよう。

○月○日
 
実験用基板にトランジスタ、リレーを接続しモーターの動作実験をする。リレーの動作は正常に行われるが、モーターが回るとプログラムが暴走する。実験用の電源容量が足りないのかなぁ?

○月○日
 
モーター用に電源を用意し実験する。一応、正常に動作する。なんとかマイコンで制御できそうだ。機能を


カーステのオートアンテナ出力とオートアンテナの間にコントローラーを割り込ませ、コントローラにスイッチを接続しUP/DOWNの制御を行う形式とする。


アンテナのUP/DOWNはスイッチが押されている間アンテナの電源を通電するようにし、UP/DOWNのスイッチが押されていた時間をEEPROMに記憶する。ラジオの電源がOFFになったら、UPが押された時間分アンテナをDOWNさせモーターを停止する。


モーター停止後はコントローラ自身の電源をOFFにする。


ラジオの電源がONになったら、2秒間待った後、再度電源のON/OFFをチェックし、電源がONの場合にはEEPROMに記憶した時間分アンテナをUPする。2秒間待つのは、カーステのCD - TAPE - ラジオのスイッチを切り替える時間を考慮して。



○月○日
 仕事をする。コントローラの配線図を考える。

○月○日
 
UP/DOWNのスイッチを探す。会社の駐車場をウロウロする。シーソータイプのスイッチで、出来れば緑の透過照明のものが良い。大きさはインパネの何かのオプションスイッチが入るメクラ蓋の大きさだ。

○月○日
 秋葉原に行く。UP/DOWNのスイッチを探す。コントローラの部品を購入する。

○月○日
 コントローラを組み立てる。

○月○日
 
コントローラーのプログラムを作成する。かなり大掛かりなプログラムになってしまった。

○月○日
 
マイコンにプログラムを書き込む。プログラムを書き込んだマイコンをコントローラーに差し込み、モーターの替わりにLEDを接続し動作チェック! 何回か手直しのうち、なんとか動くようになった。
名称未設定 4.GIF (128393 バイト)
 完成した基板 色が変なのはスキャナで直接スキャンしたため

○月○日
 今日はいよいよ実車でのテストだ。オートアンテナの配線をカットしコネクタを付ける。コントローラを接続しラジオの電源を入れる。 ・・・動作がおかしい。UP/DOWNを繰り返すとアンテナが行ったきりになってしまう。 オ〜 マイ ガ〜ッ! アンテナくんさようなら。

○月○日
 
原因考える。モーターの停止動作がおかしい。モーターの逆起電流でアース側がマイナスに振られているのかな。コントローラーの配線を修正し、コントローラーの電源とモーターの電源を分離(と言っても大元のバッテリーは一緒なので、途中の回路を分ける)したら正常に動作するようになった。

○月○日
 
UP/DOWNのスイッチを探す。メクラ蓋を持って自動車屋をウロウロする。

○月○日
 自動車部品屋さんに希望を言ってスイッチを頼む。

○月○日
 
UP/DOWNのスイッチを探す。メクラ蓋を持って自動車屋をウロウロする。

○月○日
 
メクラ蓋と合わせる。・・・ちょっと大きい。返品だ。部品屋さんだっら色々な車種の部品を扱っているから、メーカー間の互換性も含め直ぐに分かると思ったんだけどなぁ?

○月○日
 
UP/DOWNのスイッチを探す。メクラ蓋を持って自動車屋をウロウロする。どうもイスズ車は日産と部品の互換が多いようだ。スイッチの大きさがピッタリなものがある。ホンダのステップワゴンのスイッチも入りそうだ。

○月○日
 再度部品が入ったとことで自動車部品屋に行く。 ・・・ちょっと違う。またまた返品だ。年式によってだいぶ違いがあるようだ。やっぱり車検証のコピーとかが無いと部品屋さんもダメなのかなぁ?

○月○日
 自動車屋に行く。年式を確認する。部品屋さんに年式を伝える。

○月○日
 
再度部品が入ったとことで自動車部品屋に行く。今度はバッチリ! バッチリ! スイッチの接点出力を確認し、コントローラと接続するハーネスを作成する。

○月○日
 最終的なテスト。スイッチを接続しラジオの電源を入れる。
 スイッチのUPを押す。ウィィィ〜ン・・・。アンテナが上がる。
 ラジオの電源を切る。ウィィィ〜ン・・・。アンテナが下がる。
 再度ラジオの電源を入れる。ウィィィ〜ン・・・。アンテナが上がり、元の位置で止まる。
 おぉ! カンペキ! カンペキ! しばらく様子を見ることにする。

○月○日
 
不便な点が見つかった。電界強度が弱くなった場合アンテナを最大に伸ばすために、ずっとUPのスイッチを押していなければならない。特にFMの場合は、電波の特性から周りの影響を受け易い。ワンタッチで最大まで伸びてほしい。プログラムを変更しワンタッチUP/DOWNの機能をつけることにする。ソフトで制御すると、こういった場合に便利だ。

○月○日
 色々試した結果、人間がスイッチをワンプッシュする時間は200msec〜300msec必要だ。そこで、400msec以内にON→OFFが行われたらワンタッチUP/DOWN。それ以上押されていらた通常のUP/DOWNとする。プログラムの方は結構大掛かりな改造だ。

○月○日
 
改良したプログラムを書き込む。
 ラジオの電源を入れる。ウィィィ〜ン・・・。前回記憶した位置までアンテナが上がる。
 UPスイッチをワンプッシュする。ウィィィ〜ン・・・。アンテナが最大まで伸びる。
 DOWNスイッチをワンプッシュする。ウィィィ〜ン・・・・。アンテナが元の位置まで戻る。
 ウン! こいつは便利だ! またしばらく様子を見ることにする。

○月○日
 
会社からの帰り道、細い路地を走っていると対向車が路肩によけて待ってくれている。すれ違いざまにクラクションを「ピッ!」っとやる。
 ウィィィ〜ン・・・。アンテナが上がる。 「???」
 試しにDOWNスイッチをワンプッシュする。ウィィィ〜ン・・・。アンテナが元の位置まで戻る。
 どうやらクラクションの鳴らし方によってはワンタッチUPの誤動作をするようだ。ワイパーやウンカーなどのノイズでは誤動作しないから、クラクションの振動板から何か強烈な電波が出ているのだろう。

○月○日
 秋葉原に行く。シールドケースを購入する。こいつで電波対策できれば良いが・・・。因みに、今まで使っていたのは単なるプラスチックケース。早速、ケースを組み替えテストする。状況はだいぶ良くなったが、連続的にON/OFFを繰り返すと希に誤動作する(もっとも、そんなクラクションの鳴らし方はしないが)。ワンタッチUP/DOWNの信号線にもノイズフィルタが必要なのだろうか?

○月○日
 ノイズフィルタに関する資料を収集する。

○月○日
 
秋葉原に行く。ノイズフィルタについては幾つかのタイプがあるようだが、一般的なLCフィルタを試してみる。回路の定数はノイズの性質や配線の取り回しによって、カット&トライで決めるようだ。幾つかの部品を購入し、早速、家に帰って実験だ。

○月○日
 
フィルタを色々と試してみるが、完全にノイズを取ることはできなかった。ソフトで対応することにしよう。スイッチからの信号の検出を、20msec以下のONの状態はノイズと判別するように変更する。プログラムを変更し試してみる。街中で試すとウルサイので、土手へ行ってクラクションを鳴らしたり、ウインカーを点けたり、色々な操作を複合的に試してみる。犬を散歩させているおじさんが不思議そうにこちらを見ている。今度は大丈夫のようだ。
名称未設定 3.GIF (77567 バイト)

 

 

 

 

 

 完成した先っぽくん。こういった製品は他にも需要があると思うのだが・・・。TRACで商品化しないですかね。

 




 色々あったが、やってみると結構大変だ。たかが車のアンテナ。されどオートアンテナ。ところでもう一つ不便に思っている点がある。パワーウィンドウだ。ボクはよく窓を半分ぐらい開けて走っているのだが、車から降りるとき窓が全部閉まるまでパワーウィンドウのスイッチを押していなければならない。どこかの外車みたいに、キーロックしたら自動で閉まってくれないかなぁ。

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