UBS55クラッチ交換 その1

さて、前回はブーストアップを行った。ブーストアップとくれば次は燃料系チューニング(ディーゼルの場合はポンプポンプチューニング)となる訳だが、今回は、ちょうどクラッチを降ろしたのでのその様子をレポートする。
あれはビッグホーンで会社に行く途中の事だった。いつもの様に農道を80キロで飛ばし、交差点が近づく。「ブォ〜ン・ブォ〜ン」。ブレーキングしながら、3速・2速とシフトダウンする。カーブミラーで素早く左右を確認しハンドルを切る。エンジンの回転をパワーバンドにキープしながら2速・3速・4速とコーナーを立ち上がる。 「ブオォォ〜ン!」 「???」。 …タコメーターだけが上がる。 「もしや!?」 再度減速し2速・3速・4速とフルブーストをかけてみる。「ブオォォ〜ン!」 4速でフルブーストをかけるとタコメーターだけが上がる。そう、クラッチが滑っているのだ! 「そう言えば、前回クラッチを交換したのは何時かな〜? そろそろ交換時期か〜? 何せ18万キロだからな〜」 などと考えつつ会社に到着。次の休みにクラッチを交換する事にする。
1.ミッションオイルを抜く
それでは早速作業に取りかかることにしよう。55の場合、ペラシャフを抜くとミッションオイルが漏れてしまうので、まず最初にミッションオイルを抜く。抜かないでやる場合には、サランラップとガムテープで塞げばOKだが、今回はついでに交換するので抜いてしまった。69の場合は、ユニバーサルジョイントで切れるので抜く必要はない。
2.シフトレバーを外す
次にシフトレバーのブーツを外し、シフトレバーを外す。車種によってはブーツが接着剤で張ってあったり、コンソールが邪魔をして外しにくい場合が有るが、その時はミッションを降ろす際に下から潜ってシフトレバーのみを外す。今回は、素直に上から外した。
3.ジャッキアップ
ミッションを降ろすために後輪をジャッキアップする。色々試して見たが、タイヤが一番お手軽で安定する。(エア不足は不安定になるので注意! ドブのU字溝もGood!)
4×4の場合、上手くやれば自力で登れるので、タイヤを並べるだけで済む。ミッションを降ろした際に、ミッションと地面が水平になるような高さにしておいた方が後でミッションを組み付けるのに楽だ。

9.5Rのスワンパーと215のノーマルタイヤの組み合わせがGood!
4.下回りの邪魔な物を外す
ペラシャフやマフラーなど邪魔な物を外す。マフラーのガスケットは破らないように注意すること。ペラシャフが外れたら、ミッションの下にジャッキをあてがいクロスメンバーを外す。ジャッキを静かに降ろすとミッションが傾いて降りてくる。先程、シフトレバーを外さなかった場合はミッションを少し降ろしたタイミングで、シフトレバーのみを外す。あっ、そうそう。ミッションにつながっているバックギヤや4×4シフトのセンサーの電装系のコネクタも忘れずに外すこと。

5.エンジンを固定
後でミッションを乗せる時に作業し易くするため、エンジンが傾いた状態のままに固定しておく。適当なひもでOK。

単なるヒモ
6.ミッションジャッキの作成
さて、ここでミッションジャッキが有ると作業が楽なのだが、タイトルの通りイカサマ整備なのでそんな物があるハズもない。後の作業性を考え、ミッションジャッキを作成することにする。
ミッションをよく観察し重心を探す。4×4(特にUBS)の場合、トランスファーが重いので重心はかなり後ろになる。だいたい、ミッションを支えているマウントの少し後ろぐらいだろうか。適当なコンパネを用意しミッションの重心の付近に当たるようにカットする。ジャッキのお皿を外し(だいたい外れるタイプが多い)固定する。私は、ちょうどゴムマットがあったので滑り止めの為に張った。

ミッションジャッキができた
7.ミッションを降ろす
ジャッキでミッションを支えながら、ミッションをエンジンに止めているボルトを緩める。ラチェットハンドルのエクステンションバーはミッション用の長いものが売られているのでそれを購入すること。外国製ブランドモノは高いがKTCの焼き入りなら1万円以下で買える。一緒に専用の首振りコマも購入すること(ミッション用以外の物だと割れてしまう時がある)。ごく普通のエクステンションバーの継ぎ足しはトルクが逃げて怪我をするのでNG! 素人はテクが無い分安全の為ちゃんとした道具を使用すること。それでも工賃を考えれば安いモンだ。
ボルトが全て緩んだら、ミッションを軽く揺すりながら引き抜く。外れない場合には、ミッションとエンジンの間の問題の無さそうな所にタイヤレバーなどを入れてこじる。

8.クラッチの交換
ミッションが降りればあとは簡単。クラッチカバーを止めているボルトを緩め、クラッチディスクを取り外す。クラッチディスクやクラッチカバー、をチェックする。クラッチを頻繁に滑らせたりすると、フライホイールに焼き付きやヘア・クラックが入るのでよく確認すること。小さな焼き付きは、細か目のペーパを当てておけばOK。私のは、多少の焼き付きはあったものの、ディスクも未だ使えそうだった。(あまり減るとディスクのリベットがフライホイールを削ってしまう。しかし、何で滑ったのかな…?)
次に、エンジンとミッションのオイル漏れを確認する。多少のニジミは良くあるが、垂れるようであれば、シールを交換した方が良い。イスズ車はオイル漏れは標準装備なので、それ程酷くもないのでそのままにした。新しいクラッチを組み付ける際には、ディスクのカスなどの清掃と脱脂を十分に行うこと。シフトフォークとレリーズベアリングはミッション側に付いてくるので、これも交換する。

この他、パイロットベアリングも交換した
9.センター出し
クラッチディスク、クラッチカバーを取り付ける際には、ミッションのシャフトが入る穴のセンター出しをしておく。センター出しには専用工具が有る。無い場合には適当なパイプにガムテープを巻いた物でもOK。要はセンターが出れば良い。

10.一服
さて、ここからがポイントだ。作業は正確を要するので、BOSS +1でも飲んで一息入れる。
11.ミッション組み付け
クラッチを交換したら、ミッションを組み付ける。あせって力まかせにゴリゴリこじっても上手く入らない。ジャッキを静かに上げ、エンジンとミッションを平行にする。エンジンはひもで固定しているので、地面に対し水平になっているハズ。適当な板切れをジャッキとミッションの間に挟み微調整をする。ボルトの穴の位置も正確に合わせること。
ミッションの位置合わせが済んだら、ミッションをシャフトの回転方向に少し揺さぶりながら一気に押し込む。位置が正確に合っていれば、「スコッ」っと入るハズ。焦らず正確に一気にやる。
12.その他部品の組み付け
ミッションが入れば、作業は終わったも同然! エンジンのひもを外し、バラした逆の手順でボルト類を止める(なんだかイスズのサービスマニュアルみたいになってきた)。 クラッチが正常に切れる事を確認し、エンジンをかける。シフトレバーをミッションの穴に差し込み、1速にシフトし自力で台から降りる(ミッションオイルが入っていなくても、多少の走行はOK)。
13.オイルを入れる
ミッションオイルを抜いてしまった場合には、シフトレバーの穴からオイルを入れる。ミッションの給油口のボルトを緩めておき溢れたらOK。オイルが入ったら、シフトレバーを止めブーツを付ければ作業完了。(外した配線も戻してね。)
さて、クラッチ交換が完了し試走へ! 2速・3速・4速… おぉ! 滑らない!
やった〜! 直った〜! と喜んだものの、半年後、思わぬ事態に…。
詳細は次号で! 乞うご期待。
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