東京大気汚染公害裁判1次判決1周年を迎えての声明

  2003年10月29日

東京大気汚染公害裁判原告団

団長  西  順 司

東京大気汚染公害裁判弁護団

団長  鶴 見 祐 策

東京大気裁判勝利を目指す実行委員会

実行委員長 本 間  

1.本日、東京大気汚染公害一次判決の言い渡しから1周年を迎えた。

判決は、国、東京都、首都高速道路公団の公害発生責任を認め、自動車排ガスによって、日々深刻な被害が発生し続けていることを認めた。

それから1年が過ぎた今日、今なお東京の大気汚染は全く改善の兆しはない。未来を担う多くの子供や若者たちが、働き盛りの成人が、そして社会に貢献してきた高齢者が、今日も自動車排ガス汚染によって発病し、地獄の苦しみに喘いでいる。これまで既に74名の原告が、この1年間に限っても13名もの原告が発作にもだえ苦しみながら命を奪われた。

被告国は未だに「自動車排ガス汚染と気管支喘息などとの因果関係は証明されていない」と責任逃れに汲々として、裁判の解決を先延ばしし、公害根絶のために真摯な努力をしていない。のみならず被告国・東京都は都内各地で新たな公害発生源となる幹線道路の建設を推し進め、被害の深刻化に拍車をかける不当な態度を改めようともしていない。


2.一次判決は初めて公害未認定患者に対する賠償を命じ、その救済が緊急の課題であることを明らかにした。全く何の補償もないため、医療費の重圧に耐えきれず、必要な治療や入院を敬遠し、服用すべき薬を節約して、命を縮める未認定患者。病気で働けなくなれば、たちまち生活に困窮、家庭崩壊、そして生活保護に頼らざるを得ない現実。この深刻な被害を救済する制度の創設はまさしく急務である。

ところが公害被害者の救済をつかさどるはずの環境省は、1年が経過しても、救済制度について全く具体化しようとしていない。原因者として救済財源を負担すべきメーカーや国・公団も、環境省が動けば検討すると消極的な対応に終始しており、公害被害者や多くの国民の声に背を向けている。

控訴を断念し、石原都知事が都議会において原告と都民に謝罪した東京都も、「救済制度は国の責任」として、被害者・原告の「国に先駆けて、せめて医療費救済だけでも」との切実な声に耳を貸そうともしていない。


3.去る10月1日から東京都のディーゼル使用過程車に対する規制が実施された。

私たちはこの規制の実施を大いに歓迎するものである。しかしその規制の枠組みは専らユーザーに規制適合車への買い替えを強制するものとなっているため、これが中小事業主やトラック労働者などの仕事や生活を脅かす社会問題となっているばかりか、この規制の実効性についても大いに危惧されるところとなっている。

他方自動車メーカーは長年にわたり大量の汚染物質を排出するディーゼル車を製造販売して、今日の大気汚染の主要な原因を作ったにもかかわらず、今回のディーゼル規制においてはその責任は全く問われないばかりか、新車の買い換え強制によって売上を伸ばしているのが現実である。


4.一次判決後、この1年間で情勢は大きく進展した。

被害救済制度の創設は大きな社会的要請となり、被害者救済とディーゼル対策の両面で自動車メーカーや行政が果たすべき責任も明確となった。しかし被告国・東京都ら、被告メーカーらは、これまで述べてきたとおり、この1年間、全くその責任を果たしてこなかった。

私たちは、被告らがこのような不識実な態度を直ちに改め、被告国は公害被害者救済制度を早急に創設すること、被告東京都は当面の緊急措置として全年齢の都民を対象にした医療費救済制度を定立すること、被告メーカーらは被害者救済制度の財源負担に応じ、制度の創設を積極的に追求することを要求する。

また私たちは、ディーゼル規制実施にあたっては、自動車メーカーの責任を明確にし、その責任で後付汚染物質除去装置の開発・実用化・装着を進めさせ、あるいは買替え等の助成制度の財源を拠出させるなどして、規制の実効性を十分に確保していくことを求める。

そしてこの自動車排ガス汚染が改善されるまで、新たな巨大発生源となる幹線道路の建設は凍結することを求める。

私たちは、これらの要求を実現し、東京大気汚染公害裁判の全面勝利、全面解決をめざして、広範な人々と連帯して闘い抜く決意を表明して、一次判決1周年を迎えての声明とする。 

 以上