HOME /戻る

歓びのダンス
真黒毛ぼっくす7年ぶりのニューアルバム


1.バナナフィッシュのテーマ
2.歓びのダンス 試聴1 試聴2 試聴3
3.パノラ
4.プロペラ
5.#9BLUE
6.ボニ−&クライド
7.バラ色の人生
8.さすらい波止場
9.家路
10.桜の木の下で
11.パナマの帽子
 (曲/詞:大槻泰永)

大槻泰永/ボーカル
柳平文夫/ギター
野末智美/アコーディオン
大慈弥崇/ベース
伊藤治/パーカッション
三浦宏明/ドラムス
江藤みどり/ソプラノサックス
小林礼子/ギター
塩高和之/ギター
高橋節/ウッドベース

ミキサー/秋元孝夫 デザイン/久保田敏男(影造)
1998年5〜8月 GOKスタジオ録音


DISK れびゅー

CDジャーナル 99年4月号

 85年に大槻泰永(VO)と柳平文夫(G)を中心にバンドとしてのキャリアをスタートさせた真黒毛ぼっくす。その後メンバー・チェンジを繰り返し、今は大槻の単独ユニットとなっている。活動歴を見ると、初期の対バンにはブルーハーツやエレファント・カシマシなどがあがっており、なかなか野心的な姿勢も窺えるのだが、7年ぶりという本作を聴く限りでは、もはやそんな雑念は感じられない。純粋に音楽を楽しみたい・・・・・・そんな想いが伝わってくる。ちょっと大江千里に通じる声とアコースティックなサウンドが耳を捉える一枚。(山田真弓)

 

真黒毛評論家(おにいさん)

 真黒毛ぼっくすのディスコグラフィーをみると、二つの時期に分けることができる。第一期は1980年代後半から、90年代初頭の「白痴」「月夜の散歩道」の二枚、第二期は97年の「バナナフィッシュ登場」(カセット)を挟み、98年秋に出した「歓びのダンス」と昨99年秋に青空レコードオムニバスとして発売された「青空十景」である。
 ジャケットは時に、タイトル以上に中身を象徴しているもので、第一期のモノトーンから、第二期ではパステル画調のものに変化、「歓びのダンス」では裏ジャケに録音風景のスナップが載っているが、こうしたジャケットの変貌が、演奏されている音楽の変化そのものをも暗示しているようだ。
 もちろん、この変化はカラー印刷が手軽にできるようになったことによるわけだが、それが音楽性の変化に対応してしまったあたりに時代性を見ることができる。曲作りそのものは、三コードによりミディアムテンポのものはは調性自体はメジャーでありながらマイナー調のものという、ブルーノートの音階特性によったもの、アップテンポのものは何故かダンスを意識したものという特徴に変わりはないのだが、収録作品の傾向として「歓びのダンス」では明るいものが多めに入れられている。
 「バナナフィッシュのテーマ」に始まり、レイドバックした「パナマの帽子」で終わるが、この2曲の音数の少ないアコースティックな演奏にユニット化している真黒毛ぼっくすの新しい世界の特徴が現れているようだ。前作のCDからの期間からすれば96年のバナナフィッシュを含む90年代真黒毛ぼっくすの総決算ともいうべき作品になるべき「歓びのダンス」だが、収録時間の制約もあり、なかなかそうはいかないのが久々のリリースならではということだろう。
 アルバム中のハイライトの一つといえるのがバナナフィッシュの忘れ形見のような「♯9」であると同時に、偶にライヴで演奏すると評判の良い「アラスカ」が外れていることなどはその一例だ。また、アコースティックギターの伴奏でアレンジに新境地を開いた「桜の木の下で」などもスタジオ録音ならではの演奏として、注目したい。バナナフィッシュがサリンジャーに関係なかったように、この作者は「桜の木の下で」も満開の桜の下に死体などは想像もしていないのだろう。それでいて、「これ坂口安吾ですよね」と聞き手に思わず訊ねさせてしまう不思議なセンス?を持っているのが、やはり不可解なのだが。

戻る