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あんずの発作について 

あ んずのてんかんの発作が初めて起こったのは1999年の9月10日の早朝4時ごろでした。あんず、3才2ヵ月のときです。私は人間の発作の知識があったの で、これはてんかんに違いないと思い、目をしょぼつかせながらも発作がどれくらい続くのか時計を睨んでいました。つれあいは発作を見たのは初めてで、もう あんずは死んでしまうんだと思ったらしく、あまりのショックにぐったりしてしまいました。

もしかしたら、一回きりの発作かもしれないので、しばらくは様子を見てみることにしました。でもその後、あまりに頻繁に発作が起こるので投薬を開始しました。

こうした発作が起きたときには、てんかんの他にいくつかの病気を疑います。脳に関わりのあるジステンパーや脳腫瘍、脳には直接関わりのない心臓病な どです。ひとつひとつの疑いを消すにはいろいろと検査が必要ですが、あんずの場合は、血液検査くらいはしたと思いますが、その他の検査は一斉していませ ん。初めての発作からの経緯を見れば、他の病気だとは考えられなかったので、大学病院に予約をとって、わざわざ全身麻酔をしてMRIやCT検査をして脳腫 瘍ではないことを確かめることがそんなに重要だとは思えなかったのです。

普通言われるてんかんは「特発性てんかん」とか「真性てんかん」と呼ばれています。人間の場合と同じく、原因はまだ解明されていませんが、神経伝達の異常によって脳内で過剰放電(脳波の乱れ)が起きることは分かっています。

犬 のてんかんは、初めて発作が起こった年齢が1歳くらいまでは「先天性」や「遺伝性」の可能性が高く、3歳くらいからだと「特発性」の可能性が高いと言われ ています。きちんとした血統管理が行われていれば、まず遺伝的に問題のある犬は繁殖に使いませんから、この点、かなり正確に推察できます。あんずはペット ショップから来た子で、もちろん血統書もあり、繁殖者名も書かれていますが、現状では調べるのにはかなりの時間と手間がかかります。だから、あんずの場合 は特発性である可能性が高いということしか言えないし、反対に遺伝的な可能性も残っているわけです。

てんかん の遺伝性が証明されている犬種や、遺伝する可能性が高い犬種がいます。ゴールデンは後者のほうです。個人的にはアイリッシュ・セッターの名前をよく耳にし ます。私の友人の場合はボストンテリアでした。ニューファンドランドの話も聞きました。シェルティやコーギーもいます。

あ んずの発作はいわゆる「大発作」で、丸まるようにからだを硬くしながら意識を失って倒れ、左右対称のけいれんが起こります。けいれんがおさまった後は、し ばらく四足で泳ぐような動作があります。この間呼吸が止まり、歯茎からは血の気が引きます(呼吸が戻っているときもあります)。呼吸が戻るまでの発作の時 間は、短い場合は数十秒、たいていは数分続きます。呼吸が戻るとき、激しく息をし始めることがあるので、このとき唾液がこぼれ出ます。その後、横になったまま意識が回復します。一連の発作の間に、おしっこやうんこが出ることもあります。

あんずの場合、のべ数時間〜24時間程度、数回〜7,8回程度発作が続きます。つまり、初めの発作があって、次の発作が数時間後に起こるというパターンを繰り返すわけです。ときには、「重積状態」になることもあります。発作の前に、前触れである「前兆(オウラ)」はほとんどありません。また、発作を誘引するものも特定できません。一番初めの発作はだいたい深夜から早朝の時間帯に起こることが多く、寝ているときに起きます。

2002/1/19から20にかけて起こった発作をまとめた表

発 作後には朦朧状態があって、たいてい部屋の中をうろうろ歩き回りますが、以前、遠吠えのような鳴き声を出したこともありました。発作のときは言うまでもあ りませんが、朦朧状態のときには名前を呼んでもよく分からない様子ですし、なでるとビクッと驚いたりもします。その後、歩くのをやめて眠ります。そしてま た数時間後に次の発作が起きます。発作が何度も起こった後は、疲れているので歩き回らずに、横になったまましばらくすると眠っています。

ひ とまとまりの発作が終わると、その後2日くらいは、目をシューッと細めるような様子をします。だからこの様子があると発作が終わったことが分かるのです。 ときどきは、突然この様子だけが見られることもありますが、このときは発作は起こりません。また、寝ていて突然飛び起きたり、片耳だけをヒクヒクさせるこ ともあります。脳波が悪さをしているのだと思いますが、このときも発作は起きません。

たくさんの症例を聞いて いるわけではありませんが、少なくともあんずの発作は決して軽くはないようです。理想的には、薬を飲んで年に1度か2度程度の発作に抑えるんだそうです が、あんずの場合薬が効いているとはあまり言えないし、理想とはかなりかけ離れた発作が続いています。でも、私たちはあんずの発作に慣れっこになっている ので、それはそれとして、結構のんきに考えています。つまり、大学病院に行ってあれこれやってもらおうとか、発作を抑えるために薬の数と量を増やそうと か、あまりそんなふうには思っていないのです。

てんかんの発作は病気ではなくて症状みたいなものです。だから、治すというよりは一生つきあっていく感じです。もちろん、発作が止まらなくなれば死んでしまいますから、そこだけが心配です。

私 は、初めての発作からずっと記録を取ってきました。起きた日と時間とその様子を短いメモにしてあります。なにか発作のパターンが分かればいいなと思ったの ですが、この3年間の記録を眺めてみても、発作を引き起こす原因は分かりませんし、発作の起きる周期も回数も程度もまちまちです。

あ んずが一生この発作と付き合っていかなければならないということが分かったころ、つれあいとはいろいろ話し合いました。あんずがこれからどうなるかは分か らないけれど、日々、犬らしく普段どおりの生活させてやろう、できるかぎりいろんなところに連れて行ったり、いろんな経験をさせてやろうと思いました。そ して、例えば私たちがいないときに発作が止まらずにあんずがひとりで死んでいったとしても、絶対後悔しないということを心に決めました。そして、私はあん ずが7才まで生きることを目標にしました。

あんずは今、6才と2ヶ月です。この分で行くと来年の目標は達成できそうじゃないですか。

あんずの記録は、てんかんの発作がある犬を飼っている人だけではなく、てんかんの発作がどんなものなのかを知りたい人にぜひ見てほしいと思っています。

2002年09月16日
6年前にあんずがうちに来た日を記念して

投薬:あんずの場合は、フェノバール、エクセグラン(現在エクセグランのみ)→2002年09月22日に一旦中止しました
ジステンパーや脳腫瘍:脳に関わる発作を「症候性てんかん発作」と呼ぶ
心臓病:脳に関わらない発作を「非てんかん発作」または「てんかん様発作」と呼ぶ
唾液がこぼれ出る:「泡をふく」と言ったりするが、とても差別的で傷つく言い方なので安易にそう表現しないでほしい。人間の場合もそう
重積状態:前の発作が終わってすぐに次の発作が続くこと
前兆(オウラ):その犬によっても違うが、歩き回ったり、鳴いたりといった、普段とは違う様子を言う
発作を誘引するもの:例えば、強い光とか音とか、気温・気圧の変化(季節の変わり目)など

=== 正確に書いたつもりですが、もし、間違いがあったらご指摘ください ===

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