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ブリス
1992年03年25日〜
2000年12月03日
享年:8才8ヶ月
ブリス アメリカンショートヘア
(シルバータビー)
オス

― その5 ―

だめだと思っていたブリスの状態は少しずつ回復していきました。

病院に行った日の夜は口で激しく息をしていたので、これは本当にだめだと覚悟していました。でも、なんとか持ち越して、2日後には小さくちぎった甘エビを口にしました。私のことも分かるようになって、なでるとゴロゴロ喉を鳴らしていました。

そ れから数日は、普段やらない好物の甘エビ、鰹節、かまぼこを食べさせ、徐々にブリスは回復に向かいました。ケージの中に寝床とトイレを入れて、「カゴの 猫」をさせていましたが、1週間後には、まだほんの少し普通ではないにせよ、自分でフードを食べたりトイレに行ったりできるようになり、いつもどおりの場 所でいつもどおりに寝るという生活に戻りました。この間ずっと薬を飲みつづけていたのですが、後1週間このままの感じが続くのであれば、もう大丈夫でしょ うと医者から言われました。おそらく一時的な脳の機能障害ではなかったかと。また再発することがあるかもしれないが、このままよくなるだろうと言われるほ どの奇跡的な回復ぶりだったのです。

後 から思うとこの2週間は、ブリスにとっても私たちにとっても、とても穏やかな毎日でした。月が変わった12月2日、また前と同じように頭をもたげる様子が ありました。以前よりも状態は悪くなかったので、元気なときに血液検査とウィルス検査をしておこうということになりました。血液検査の結果が出るまで、診 察用の服を着たブリスをずっと抱いていました。診察室は奇妙なくらい静かだったのを覚えています。

洗濯機の上からこちらを見ているブリス お気に入りの場所
:ベランダの洗濯機の上
血 液検査から分かったのは、腎機能が末期で、もって半年かもしれないということでした。猫には多い病気ですが、もうずいぶん前から悪かったんだと思います。 下痢ぎみだったことを除いては特に変わったことはありませんでした。腎臓に関しては、食事療法と薬と透析でしばらく元気に過ごせる場合もあるそうです。だ から、脳のことよりもむしろ腎機能の低下をどうするかということのほうが問題だとこのときはぼんやりと思っていました。この前と同じような感じでしばらく したらおさまるのだろうと思ったのです。

それがその日帰ってから、徐々に症状が悪化して、ブリスは口で息をしてずいぶん苦しそ うにしていました。からだのバランスがうまく取れないらしく、頭を深く前にもたげて、ケージの中をふらふらごそごそ動き回って、居心地のいいからだの位置 を見つけ出そうと懸命な様子でした。こういうときは抱いてやってもとても嫌がりました。そのうち、ブリスはよろめきながらケージの中のトイレにたどり着い て、ほんの少しだけうんこをしていました。

その日はなすすべなく、寝ることにしました。夜中に何度も起きて、ブリスのケージを覗き込んでいました。

次 の朝の12月3日、ふと目がさめてケージを見ると、ブリスが死んでいました。4時間くらい前に私がトイレに起きたときにはブリスは寝ていましたから、その 数時間のうちに死んだのだと思います。口の中を見ると、犬歯の位置の舌に穴が空いていました。おそらく最期は発作が起きたのでしょう。トイレを見ると、 ちゃんとおしっこをしていました。

覚悟をしたときには死なず、覚悟をしていないときに死ぬ。命とはそういうものかもしれません。

ブリスはあれほど苦しそうだったのに、どうして懸命にトイレに行こうとしたのか未だによく分かりません。単なる猫としての習性でしょうか。生きようとする意志の表れだったのでしょうか。

こ の日、ブリスを籐のカゴに移して花で飾ってやりました。思った以上に私たちは冷静でした。それは、ブリスのほうから言うと、最後の2週間はブリスらしく普 通に生活できたからで、私たちのほうから言うと、最後にブリスの好きなものをたくさん食べさせることができたからなのです。

その後病院にウィルス検 査の結果を聞きに行きました。この検査の限りでは、今回のことはウィルスに関連する病気ではなかったようです。医者の診断によると、脳障害のひとつで、三 半規管とつながっている前庭に疾患があって、そのために頭が上がらなかったのではないかということです。脳腫瘍ならば一時的にでも治ったりしないので、脳 腫瘍ではないと。

早いものでブリスが死んで後少しで1年になります。この1年は、部屋の中にずっとブリスの影を見ていました。それが最近それをぱったり見なくなりました。つれあいに聞いたら、つれあいもやっぱりそうらしいです。そろそろブリスとの本当のお別れの時期がきたんだと思います。

おなかを上にして寝ているブリス 仔猫のブリス
懐かしい1枚

(2001年11月26日、記)


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