直島・犬島
(2009年8月)


<第一日目>

 東京を7時40分にたつ飛行機で高松へ。15分ぐらい早く到着しました。
着いたとたんに、カンカンと照りつける太陽と湿気と暑さを感じ、四国は東京より南にあるんだなと実感しました。
東京は朝晩涼しい日が続いていたので、高松の方もそんなに暑くはないと思い込んでいたのです。

 高松空港から高松駅までバスに乗り、駅から歩いて5分で行けるというフェリー乗り場から10時14分のフェリーに乗る予定でした。
しかし、バスの時刻表を見ると、空港からのバスは10時に高松駅に到着する予定になっています。
14分でフェリー乗り場まで行って、切符を買って乗船できるのかどうか不安だったのですが、なんと空港からのバスは時刻表の出発時刻を無視してすぐに発車しました。
これなら9時45分ぐらいに高松駅に着けます。
 
 バス乗り場のおじさんが高松駅まで行かないで、全日空ホテルクレメントの前で降りるといいと教えてくれたので、ホテルで降りました。
高松港はすぐ目の前にあります。
 『二十四の瞳』で有名な小豆島行きのフェリーは直島行きよりも本数が多いようです。
 車酔いや船酔いのするので、ちょっと不安だったのですが、瀬戸内海は波が穏やかなのですね。全然揺れず、快適な約50分間でした。

          

 船着場に着くと、目の前にベネッセハウスの宿泊者用バスが待っていました。泊まるのはミュージアム棟のデラックスツインです。
他にもパーク、ビーチ、オーバルとありますが、二人部屋でまあまあ広いのがミュージアムのデラックスツインだったので、選んだのです。
パークやビーチは浜辺に近い棟で、オーバルはミュージアムから5分間モノレールに乗っていく棟です。
すべて安藤忠雄が設計しました。

 宿泊者専用のバスは宮ノ浦港から農協前(家プロジェクトに近い)、パーク棟、ミュージアム棟、地中美術館と走っています。

 ミュージアムは一見するとどこに入り口があるのかわからないような作りになっています。
壁のようなものの横を歩いていくと、瀬戸内海が見え、そこからの景色が結構いいのです。
その景色を見てから入り口に入ります。

 着いたのが11時30分ぐらいだったので、まだ部屋には入れません。チェックインは15時なのです。
荷物を置き、フロントの人の提案どおりに家プロジェクトと地中美術館を見に行くことにしました。

 ここで、私はなんで帽子や日傘を持ってこなかったのかと悔やむことになります。
とにかく暑くて、日差しが強いのです。(もちろんサングラスは常に持参しています)

 ホテルのバスで農協前まで行きました。下の写真が農協前のたばこ屋さんです。ここで家プロジェクトチケット(1000円)が買えます。


 朝早くてご飯を食べていなかったので、まず始めにご飯を食べることにしました。
よくいろいろなブログに出てくる「カフェまるや」に行ってみましたが、満席でした。ここは靴を脱いで入る、一般家庭をカフェにした所です。
しばらく町をうろついてみましたが、食べ物屋はありません。
バス通りに戻ってみると、玄米食を食べさせるお店「あいすなお」があったので、そこに入りました。
クーラーはなく、とっても暑いお店です。ひょっとするとクーラーは直島の一般家庭でも使っていないのかもしれませんね。
あいすなお定食を食べてみました。玄米がやわらかくておいしかったです。


          

 とにかく暑いので、家プロジェクトは見ないで、地中美術館に行くことにしました。

 バス停で待っていると、青い車が止まりました。
おじいさんが運転していて、「どこに行くの。」と聞かれたので、「地中美術館です。」というと「乗りなさい。連れて行ってあげる。」と言うのです。
地中美術館まで乗せてもらいました。
 夫曰く、「彼になら勝てそうだったから乗った」

 直島は漁業というより精錬所の島なのだそうです。ベネッセハウスが来て、島は経済的に潤ったのですかと聞くと、「儲かったのはベネッセだけだ。」とのこと。
島の水はあまりよくないので、パイプでひいているそうです。そういえば沼の水は濁っています。
島には小学校と中学校しかないので、高校は高松や宇野へ行くそうです。
宇野の方が近いのですが、何故か直島は香川県です。
5月の連休には島の人口以上の人が来るそうです。
「なんで観光客は夏に来るんだろうねぇ。暑くてよくないのに。」なんて言われてしまいました。ホント、その通りです。

親切なおじいさんでした。

 よく調べずに行くのはいつものことですが、びっくりしたのはチケットセンターでチケットを買う前に、説明と注意があるんですね。
それを聞いてからやっとチケットが買えます。
従業員は白い服を着ています。ちょっと宗教法人の人みたいな感じです。

 チケットセンターから美術館までしばらく歩きます。道の左側にいろいろな花が咲いている池があります。これは「モネの庭」というのだそうです。
モネの愛した草花約150種類と樹木40種類が植えてあります。

          


 門から写真禁止です。

 地中美術館は安藤忠雄の設計で、主に鉄筋コンクリートで建てられた地下三階の建物で、次の作品があります。

クロード・モネ 「睡蓮の池」、「睡蓮―草の茂み」、「睡蓮」、「睡蓮の池」、「睡蓮―柳の反映」
ウォルター・デ・マリア 「タイム/タイムレス/ノー・タイム」
ジェームズ・タレル  「アフラム、ベール・ブルー」、「オープン・フィールド」、「オープン・スカイ」

 たった三人のアートだけと思いましたが、建物もアートの一種と考えれば、十分見ごたえはあります。
入り口から見たモネはとっても美しく、近くで見るのとは違いました。意外と近くで見ると、他の美術館にある睡蓮よりもたいしたことがないような気がしますが。

 ウォルター・デ・マリアの作品は大きな大理石の円が部屋の真ん中にあり、宮殿のような崇高な感じがします。

 タレルは・・・。真っ白な空間にいれられ、不思議な感覚。真ん中に座って一時間ぐらいいるといいかもしれませんが、すぐに追い出されました。残念。
オープン・スカイは本当に天井がオープンになっていて、四角に切られています。雨が降ると大変ですね。
空の移り変わりがアートなのでしょうね。

 ベネッセハウスに宿泊していると再入場できます。宿泊しているベネッセハウスでチケットに判を押してもらい、そのチケットをチケットセンターで見せるのです。
 

 二時過ぎになったので、ホテルに戻りました。しかし、まだ部屋には入れませんでした。
仕方ないので、ミュージアムの中を見て回ることにしました。
そう、ホテルの中にも現代アートがあるのです。ホテルに泊まると夜の11時まで見られます。

 私たちの部屋は2階でした。


          


 部屋にもアートが飾られています。部屋はそんなに変わったデザインではありません。
浴室がタイル張りで、ベッドの上に窓が見えます。そこからシャワーやお風呂に入りながら海が見えます。ガラスが曇るのが難点ですが。
ベネッセハウスにはテレビがありません。それでも色々とやることがあったので、全然問題ありませんでした。
テレビが見たければ1000円で貸してくれます。

 ホテルでは4時半からゲストにシャンパンやミモザを振舞ってくれます。
ホテルの人が話しかけてきました。彼は横浜で働いていて、定年後故郷の直島に戻ってきたそうです。
明日犬島に行くので、どのバスに乗ればいいのかと、明日の夕食のレストランをテラスレストランから日本食にしてもらいたいというと、すぐに手配してくれました。
明日の夕食は8時ということになりました。

 夫は部屋に帰り、私は5時からのミュージアムツアーに参加しました。
このツアーではホテルの従業員が飾ってあるアート作品について説明してくれるのです。

 最初に「雑草」という須田悦弘の作品。教えてもらわなかったら全く気付かずにいました。
コンクリートの壁に雑草があるのです。これは木で彫って彩色したそうです。

 柳幸典の「バンザイ・コーナー1996」はなんとウルトラマンとウルトラセブンが同じ方向を向いてバンザイをしています。
彼ら(?)は421体あるそうです。前は床の上に置いてあったので、子供が喜んで駆け込んでいってウルトラマンたちが倒れてしまったそうです。
また並べなおすのが大変だったでしょうね。
ウルトラマンで何を表しているのでしょうか?古い日本の国旗だそうです。そして、私たち日本人(の習性)ですかね。

 これも柳さんのですが、土に各国の国旗をプリントし、アリを放ち、アリがその土を崩していくのを見るという変わったアートがあります。
題して「ザ・ワールド・フラッグ・アント・ファーム」。
ホテルの人がアリを殺さないようにえさや水をあげているそうです。
しばらくしてもう一度行くと、どうなっていることやら。
ミュージアムのフロントの壁にも、ドル札のアント・ファームが掛かっています。

 写真では杉本博司の「タイム・エクスポーズド」が印象的です。
室外に、いろいろな海の水平線を撮った写真、14枚が瀬戸内海の水平線と繋がるように飾られています。
どれがどの海かは全くわかりません。
外にあるので、変色していくのですが、それも一興だそうです。
実はあまり変色しないので、杉本さんは何をしたかというと、そこから見える崖の真ん中に写真を1枚置いたのです。
どこにあるのか探してみてください。

 ブルース・ナイマンの「100 Live and Die」はおもしろかったです。
日常を表す50語とDIEとLIVEを組み合わせます。例えばSPEAK AND DIE とかSICK AND LIVEのように。
その言葉が一個ずつ点滅してきます。まるで私たちの日常のように。
そして最後に・・・。

 リチャード・ロングの円は3つあるのですが、壁に書いたものが一番印象的です。
普通はキャンバスに描くのですが、彼はなんと壁に書いたのです。
安藤さんも驚いていたそうです。
二種類の円を描き、その上からエイコン川(名前が確かではありません)から取ってきた泥を指で塗りつけたそうです。
夫曰く。「僕もやってみたい。」

 ミュージアムツアーの後はすぐにバスに乗り、パーク棟まで行き、テラスレストランで夕食です。
食事は普通でした。

 食事後、19時半からのパーク棟のミュージアム・ツアーに参加しました。
パークには主に杉本博司の写真が飾られています。
彼は古代から変わらないものとして水平線を選んだそうです。


          

 部屋に帰る前に「100 DIE AND LIVE」を真っ暗な中で見ました。

 部屋にはなんと銀色の紙に包まれた夜食が置いてありました。
ちょっと思ったのですが、部屋に入るのなら、ゴミとかタオルとか変えていってくれると嬉しいのですがね。

     




<第二日目>

 朝はミュージアム棟にある日本食レストランで食べました。


           


 ホテルを8時50分に出るバスに乗って宮ノ浦港へ。
犬島へのアートシャトル便に乗るのです。この船代が2000円。高いです。高松から740円ですよ。乗る人が少ないからでしょうかね。
小さな船なので、エンジンの音がとってもうるさかったです。
直島の反対側にある精錬所が見えました。

 犬島へは約35分で着きます。写真でははっきりとわかりませんが、防波堤や岩の上にカモメが何十羽もとまっていました。


          


 犬島には90年以上も前に精錬所がありましたが、たった10年間しか操業していませんでした。
その精錬所跡を近代化産業遺産として残すと共に、環境システムを利用した施設を建設し、そこにアートワークを飾ったのです。
この精錬所はツアーに参加しなければ見られません。(2010年4月から自由鑑賞になりました。予約は要りません)
とっても暑いので、水を買い、日傘を借りて持って行きました。

 三つのグループに分けられ、見学をしました。私のグループは2人の大学生らしい男の子(写真ばかり撮っていました)と東欧から来たらしい男の人2人の計6名です。
日本語と英語の両方で案内してくれるのかと期待したのですが、英語はなく、外国人たちは英語の説明書を読んでいました。
ヨーロッパに行くと、英語、スペイン語、フランス語と三カ国語で説明してくれるのですが。
たいした説明ではないのですから、英語と日本語の両方でやってもいいんじゃないでしょうか。


          


          


 環境システムや精錬所跡の説明などを一応聞きましたが、あまり詳しくなかったので、あまり覚えていません。

 アートワークは柳幸典のでしたが、鏡を使ったものがおもしろかったです。
道の曲がり角ごとに鏡が張ってあり、前の鏡を見ると入り口の様子が見え、後ろの鏡を見ると出口の様子が見えます。
三島由紀夫の作品や彼の松涛の家の遺品を使ったアートはよくわかりませんでした。

 喫茶コーナーのようなところでツアーは終わりました。
次のアートシャトルまで1時間以上あります。喫茶コーナーでオリーブ・サイダーを飲み、しばらく休みました。

           


 ここのトイレは変わっています。なんととなりとの境はあるのですが、壁のところが30センチぐらいあいているのです。
見ようと思えば便座に座っている足が見えるのです。私が入った時に人がいなくてよかったわ。

 まだ時間があったので、チケットセンターに戻り、港をウロウロしてすごしました。
とにかく暑くて、動くのも嫌なぐらいです。


           



 アートシャットルに乗り、直島に戻りました。

 港からのバスで、同じ犬島ツアーに参加した人たちの話が聞こえてきました。
彼らはグループできたらしいのですが、案内が75歳のおばあさんで結構いい話をしてくれたそうです。

 お昼がまだだったので、また農協前でおり昨日チェックしておいたよさそうな喫茶店に入り、注文をしました。
さすがにお昼の時間は過ぎていたので、空いています。
一応ご飯モノを頼んだのですが、しばらくするとお店の女性が私たちの前に入った6名の人たちに、お昼の用意ができませんと言っています。
おばさん方は出て行きがけに、「もっと早くいってよね」と怒っていました。
その後4人組の人たちもピザならできますと言われていました。
じゃあ、私たちは・・・?
そうすると私たちのところにきて言うことは、「ご飯がないので、ひとつだけできますが、どちらにしますか?」
え〜、二人いるのに、一つしかできないのでしょう。なんで一つだけ注文するのよ。
「じゃあ、いいです」と言ってでましたが、こんなこと東京ではありえませんね。
観光客慣れしていないのですね。

それからご飯を求めて、私たちは彷徨いました。どこに行ってもご飯はないのです。
そして、結局昨日の「あいすなお」に行って、私はソーメン定食を夫は昨日と同じあいすなお定食を頼みました。

天気がよく、湿気と暑さでとっても疲れました。
食事を食べても元気は戻ってこず、家プロジェクトを見ないでホテルへ戻り休憩をすることにしました。

 4時50分のバスで再度地中美術館へ行きました。
このころになると入場者も少なく、じっくりと鑑賞できます。が、モネがよっぽど好きなのか、一人男の子がずっと動かず、モネの前にいすわり、残念。
諦めて終了時間までオープン・スカイでボーと空を見ていました。

 地中美術館は6時で閉館です。

 ホテルのバスに乗り、パーク棟へ行き、海岸に出てみました。
海岸には有名なカボチャがあります。
常に人がいるので、カボチャだけの写真はなかなか撮れません。
夕暮れのカボチャはなにやら考え事をしているようにも思えます。

 パークにあるショップでカボチャの置物とTシャツを買いました。
(ショップの写真に一人変な人がいますが・・・わかります?)

   
          


          


 買い物後、ミュージアムに戻り、モノレールに乗ってオーバル棟に行ってみました。(ホテルの鍵がなければいけませんので、あしからず)

                     

オーバルから戻り、 しばらく休みを取り、食事に行きました。

ところが・・・。レストランは満席。お待ちくださいとのことで、またアートを見て、部屋に戻って連絡を待ちました。
お夜食が来てしまいました。
だいぶたってから連絡がありました。
食べ物に苦労するなんて思いもしませんでした。
結局食事ができたのは9時過ぎでした。


               



<第三日目>

 朝食は昨日と同じミュージアムにあるレストランで食べました。
昨夜遅くに食事をしたせいか、食欲がなく、なにやらおなかの調子がよくありません。
私は洋食にし、夫は和食。和食のメニューは毎日違うようです。
   
 食事後、またモノレールに乗ってオーバルへ。


          


 部屋数が多くないので、人があまりモノレールを使っていないようです。いつも待たずにモノレールが使えます。


          


 オーバル棟の上から直島が360度見えます。
夜と朝では表情も変わります。

 浜におりてみようかとも思っていたのですが、私の身体の調子がよくありません。
外の暑さと中の寒さで身体も疲れてしまったのかもしれません。
1時間ばかり時間があったのですが、部屋でのんびりしました。    

 11時半のフェリーで高松へ行き、14時半の飛行機で東京に戻りました。


          

                                     部屋の窓から見た景色                         フェリー乗り場のかぼちゃ



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