子連れスキーにチャレンジ
…といっても、あねもね家の子どもの話ではない。
あねもねがスキーの手ほどきをしてもらった、大学時代のサークルの同期(あねもね妻・ダンナとも)、I野氏とは、彼が独身のころから結婚後も年に1〜2回、夫婦ぐるみでスキー旅行をともにする間柄であった。ところが、2年前に伴侶であるE子ちゃん(仮名)のご懐妊が発覚し、モルディブ行きやスキーに同行することができないブランク期間があったのだ。
それが、息子のよちぞう(本名:美海)が1歳を越えた今シーズンから、スキー復帰宣言をし、息子も連れて行くと言いだしたのだ。
(というか、彼ら両親がもう待ちきれないんだと思うが)
ということで、やはり大学時代の後輩2人、ayako(仮名)といとっち(仮名)も誘いこんで、今回の羽鳥湖スキーが計画された。なぜ羽鳥湖だったかというと、ゲレンデ全体が初〜中級者向けの明るく平穏な雰囲気であることと、センターハウス内の託児所は1歳児から預かりOK!らしいということ、あと、ゲレ内の宿「ロッジ羽鳥湖万平ホテル」も1泊2食1日リフト券付きでなんと9,800円というリーズナブルさであったからだった。
ま、いろいろと不安材料はあったけど、なるようになるでしょ…という感じでスタートしたツアーであった。
いきなり暗雲…?!
当日は、千葉方面に住むI野一家が愛車のオデッセイで近所のいとっちを拾って、わざわざ埼玉のわが家に来てくれ、都内に住むayakoとあねもね夫婦を乗せてまた東北道へUターン、という待ち合わせ計画。7時ちょっと過ぎた頃、千葉一行があねもね宅に予定より早めに到着した。
よちぞうは起きたばかりだが、わりと機嫌よく朝ご飯をとっている。彼は小麦粉アレルギーとのことで、両親を手こずらせているが我関せず、きょうも旺盛な食欲を発揮している。
ayakoは8時に最寄り駅に到着の予定で、駅に立ち寄って彼女を拾ってその足で出発という段取りだったが、いとっちの携帯が鳴った。ayakoからだった。
なんと、けさになって高熱が出て寝込んでいるらしい。
まさか出だしからいきなりか〜? 彼女のことだから今回も何かやってくれるとは思っていたが。
とはいっても、彼女の体が心配である。今年に入っていきなり、肺炎で入院してしまい、やっと社会復帰したところだったのだ。気持ちは行きたくてたまらん、という彼女をいとっちが諭して、とにかく今回はあきらめさせたようだ。
今回は、I野家・あねもね家・そして彼女ら2人で、3部屋を予約しているので、いとっちはこれで1人で寝ることになってしまう。さすがに寂しそうだ。なんとか、気分を盛り上げていかなくては。
気を取り直し、ほぼ予定通りの8時にわが家を出発し、外環自動車道経由で東北自動車道へ乗り、北上をはじめた私たちであった。
峠MAX。
途中、サービスエリアで2度ほど休憩を取りながらの移動。いきなり、男子2人(よちぞう除く)が急にラーメンを食べたいというので、待機しているというE子ちゃんとよちぞうを車に残し、上河内SAの建物の中へ。私もひと口もらったが、あっさりとした和風のしょうゆ味で、細めの麺がよくマッチしていて素朴ないい味を出している。
白河ICまではほとんど渋滞もなく、快調に飛ばして驚くべき早さで高速を降りた。実はここからがヤマだったのだ。栃木との県境にほど近いとはいえ、ここは東北の玄関口、福島県である。先日の大雪のなごりか、道路には雪が何度も降り積もり、溶けてはまた凍ったあとの車の轍(わだち)が深い深い溝をつくっていた。途中では、まさにほんの少し前にスリップして、ちょうどガードレールの切れ目から、田んぼに落っこちてしまった車とそのドライバーを見かけ、ゾッとする。ノーマルタイヤのオデッセイでは、いずれ危険なことになりそうだ。現におじさん1人、あやうく引っ掛けそうにもなった。
そこで、なんとか駐車できるスペースを探して、チェーンを着けることに。
スキー・スノボーレンタルの店が並んでいて、駐車場に入ってしまおうとも思うが、プレハブのような店の中で目を光らせている店主の気配を感じて遠慮してしまう。
やっとのことで適度な空き地を見つけて、チェーンを無事装着。これで少しは安心したが、だんだん険しい峠道にさしかかり、アップダウンの繰り返しと、チェーンを前輪にしかつけていないため轍に乗ったり外れたりするたび車体が左右に振られるのとでちょっとしたスリルを味わった。
そんなおっかなびっくりドライブはたっぷり2時間ほどもかかったろうか。やっと、「羽鳥湖スキー場」の駐車場についたときは、ドライバーのI野氏のみならず、みんながみんな、げっそりと疲れはてていた。
ネゴシエーター登場。
まずは荷物を運びだし、ホテル内に入る。
さっそく玄関脇にayakoが宅配で送った荷物一式を発見。(・_・、)グスン
そうだ、彼女の予約分はどうなるんだ?! フロントで、あねもねダンナが事情説明。
やがて、わが意を得たりという顔で一同の方へ。どうやら、彼の巧みなネゴシエーション(?)が成功してキャンセル料はいっさい取られないことになったようだ。
ayakoの荷物は、スキーバッグだけで板が見あたらなかったため、送付物の内容を確認するためにいとっちが電話で確認。どうやら、ayakoったらひと眠りしたことで朝の高熱がすっかり下がって、今は来なかったことを後悔し、どうにかして我々と合流できないか、そんなことばかり考えているという。
こちらに着いたら、さすがに福島、気温はかなり低く(体感温度マイナス5度くらい?)、ときどき突風のような地吹雪が吹いていた。無理して来ても、さらに病状が悪化するだけだ。連れて来なくて正解だった。
ホテルは「軽井沢万平ホテル」と関係があるのかないのか、名前は見たところ高級そうな香りがするが、実は「ロッジ」とつくとおり、必要最小限の設備をもつ、ごくごく質素な宿であった。
建物はけっこう古いが、部屋は充分な広さがあって、寝泊りにはなにも不自由はない。外風呂は大浴場というよりは、家庭用のお風呂がややでっかくなった、というほうが正しい。その外風呂の脱衣場が更衣室を兼ねていて、最初に到着したときの着替えはここでする。そのときは正直、「こんな風呂に入るのか…」とがっかりしたけれど、洗い場に入ってみると意外と広いのでちょっと安心。
まあ、どうしても外風呂がいやだ、という人には内風呂もありますよん。
着替えを終えたら、すでにお昼を回っていて、ホテルのフロント脇から直結の、レストラン(というより大食堂)で、先に昼食をとろうということに。毎年夏スキーもやるという、滑り屋いとっちは、あねもね家&I野家合同スキーには初参加、この私たちのだら〜んとしたスタンスにややとまどい気味のようだった。すまぬ。
パウダースノー=寒い(永遠のテーマ)
さて、食事も終わり、やっとゲレンデへ板をおろすときがやってきた。
前回の舞子後楽園スキーで、スキーウェアのパンツがキツくてかなりヤバかったため、実は今回のツアーに先立ち、おニューのウェア(もちろん上下)を買ってしまっていたあねもねにとっては、ウェアおろし(?)ともなるきょう。今までのイケイケっぽいぴったりしたものに比べて、ダボダボなシルエットのもの。色はグレー系。今まではお花のワンポイントがついたブルー系でわざとヘタそうに見せていたのに対して、こんどのは柄も入ってなくユニセックスタイプの渋めなやつ。上手そうだと思われたらどうすんべ…。それより、吹雪のときなんか、相方に見つけてもらえるんだろうか、やだよ遭難は。
などと、おバカなことを考えつつも、リフト券売り場へ。2日目のリフト券はパックに付いているので、1日目は4時間券のみ購入。しかも、I野夫妻は、よちぞうを交代で見るため、2人で1枚分を求めた。
まずは小手調べで、ホテル前の「ファミリーコース」を滑ってみる。I野家は、まずはダンナが参加。
うわわ〜、雪質が最高! さすがに東北圏の雪は違う。しかも、今年は特別に気温が低く、雪が締まっているようだ。
ボーゲンに毛が生えた程度の滑りしかできない私でも、少しうまくなったような気分。
とてもよく整備された雪面はフラットで、まったくコブもなく、気持ちよく飛ばせる。
天候としては、少し雪がちらついているが、まあまあのコンディションだ。でも、やっぱり寒い。
リフト上では、無風のときは「寒いかな?」って程度だけど、ときどき突風におそわれると「助けてくれ〜! 降ろしてくれ〜! 顔が痛い…。板が押されて足が痛い…」状態になる。あなどれぬ。
寒くないところを選べば、当然雪は湿っぽくて重いし、軽くてきめ細かい雪を求めれば、寒さはハンパでないことを覚悟しなければいけない。どっちも…なんて望むのはやっぱり、ワガママとしかいいようがない。でも、寒いのはやだなあ(じゃなんでスキー場に行くか)。
次に、羽鳥湖唯一のクワッドを使って、向かって左の方のエリアへ行ってみる。全体に小さくまとまったゲレンデで、このクワッド一本で、ほぼ羽鳥湖のコースすべてを網羅している。いちばん長いコースをとれば、1.7kmほどの距離を滑れる。斜度は最大20度程度で、中〜上級者にはもの足りないだろうが、ビギナーには天国のようなゲレンデだと思う。休日でも比較的空いているし、晴天率も60%だという。
この「イーストコース」は、ブナ林の間を優雅に滑るという感じの初・中級向けコースでなかなかよい(実際にはけっして優雅とはいえないフォームだと思うが)。私以外はみな、空いているのをいいことに飛ばしまくっている。
隣接する「スクランブルコース」の一部は、バッジテストか何かが行われているのか、ゲートと旗門が設置されていて一般には閉鎖されていた。リフト上から見おろすとなかなかいい感じの斜面。明日は開いていたら滑ってみよう。
3本ほどで、I野家は選手交代、E子ちゃんと合流した。今度は、同じクワッドで上がって、向かって右の方のコースに流れてみる。いちばん右の「プロムナードコース」は、だらだらした超ビギナー用コースで、止まりそうになり逆につらい。途中で、他の選手は羽鳥湖唯一のモーグルバーンへ分岐していった。下で合流して様子を聞いてみたら、コブなどはまったくなかったらしい。
次に、もう1本中心よりの「ハーリーウッドコース」へ。「ハリウッド」なのかと思って、よく見たら「ハーリーウッド」。
途中から、「ボーダーバレーコース」へと分岐するとのカンバンが。そちらに入ってみると、巨大なハーフパイプ状(とい状)に深く掘られたコースが延々と続いている。まさに「ボーダー」御用達のコースだった。
でも、振り子のように左右行ったり来たりしながら降りていくのが意外と楽しかった。
細かいターンの練習にもなるので、スキーヤーにもお勧めかも。
日が傾いてくると、いちだんと冷え込んできた。もう1〜2本滑ったところで、あまりの寒さ(特にリフト上)に降参し、制限時間前に宿に入ることには、さすがのいとっちも異論はないようだった。
「ロッジ羽万」(仮名)
入浴をし、しばしあねもね家の部屋に集まって、ビールでひと休みすると、夕食の時間となった。
メニューはステーキにスープやサラダがついて、定食形式なのだがなかなかおいしかった。この値段でこの味なら合格だろう。
よちぞうは、いろいろ食べたそうにしているが、小麦粉はふだん意識していないいろいろな食べものにひそんでいるらしく(たとえばハンバーグのつなぎに入っているパン粉などもアウト)、全食、彼らが持参してきた専用のアレルギー食のレトルトを、出されたライスを取り分けたものにかけて食べさせていた。
せめて、レトルトを温めてあげられたらなあ、と思う。
夫婦が交代で食べさせているのだが、これほどあざやかな連携プレーを私はかつて見たことがない。さすが、2人とも福祉関係の職についているだけあって、子育ても天職というしかない。お見事。
部屋に戻ると、しばらくののち、またあねもねルームへ集まる。
仲間と来るスキーは、この時間がまた楽しい。あとになってみると、なにが楽しかったのかさっぱり思い出せないのだが、とにかく楽しい。
過去の経験から、2人がやっと寝られるくらいの、部屋の狭いペンションなどに泊まってしまうと、この時間が楽しめないものになる。だから、仲間で泊まるときには部屋が広いところを選ぶというのが絶対に譲れない条件。その点では、このホテルには及第点をあげられると思う。
部屋の備品としては、バス&フェイスタオルやハミガキセットなどのひと通りの洗面グッズはあるが、冷蔵庫や貴重品入れなどはない。ドライヤーもなく、外風呂の脱衣所に1台あったが壊れていた。テレビはもちろんある(無料)。
あと、ある程度のランクのホテルであれば、ベッドサイドにアラームや集中スイッチなどがあるが、ここにはごくふつうの目覚し時計が置かれているのみ。裏には「羽万」とマジックで書きなぐられている。
「ロッジ羽鳥湖万平ホテル」というのはなにかしっくりこないが、「羽万」だったら許すぞ。
ただひとつ不満だったのは、おみやげ売り場がなかったこと。正確には、レストランの隅っこに、小さなおみやげスペースというか、ポテチ2種類とポップコーン1袋(…は夕食後にはもうなくなっていたが)と、地酒とコースターか何かの民芸品がサビシク乗っただけの、テーブルとワゴンが1台ずつあったのだが。私たちは今回残念ながら不参加となってしまった、ayakoに渡すおみやげがほしかったのだった。これじゃあいくらなんでもなあ…って感じだった。頼むから、おみやげはもう少し充実させてください。それから、名前に付けるのは「ロッジ」か「ホテル」か、どっちかにしてください。まぎらわしい。
いっそのこと、「ロッジ羽万」というのがいいんでは。
託児所デビュー
2日目、雲一つない晴天に恵まれた。
考えてみると、I野夫妻と来るスキーは、晴天率が高い。だいたい少なくとも1日は、いい天気だったという記憶がある。こりゃこんがり焼けそうだ…。
朝食後、のんびりと用意をして、チェックアウト。忘れないうちにと、ayakoの主なき荷物を復路の便に載せる手続きをする。せめてなにかおみやげをつけて送ってあげたかったんだけど、「羽万」なのでしかたがない。
きょうはよちぞうの初託児所チャレンジをするという。2月下旬から、E子ちゃんは職場復帰(注:看護婦)するため、託児所には早く慣れさせたいらしい。アグレッシブな夫婦である。
とりあえず、託児所「チビールーム」に向かったE子ちゃんを置いて、I野氏と我々は先に滑っていることに。
いとっちはファンスキー(短いやつ)を持ってきていて、きょうはまずそれをやってみるらしい。ストックを使わないで滑るなぞ、私にはまだちょっと挑戦する勇気がない。彼女もしばらくすると飽きて、普通の板に履き替えてしまった。
しばらくして、E子ちゃんと合流。無事、預けられたようだ。よちぞうは若い女性(保育士さん)が好きなのらしい。
全員揃って、2日目は、向かって左側の、中級エリアに絞って滑ることに。
きのう閉鎖していた、スクランブル上級コース(実はそんなに急斜面でもないのだが)もきょうは開放されている。旗門はないが、スタートのゲートはそのままになっていたので、レース気分で1人1人くぐってみる。私の実力では少し難しめのコースなので、みんなあっという間に見えなくなってしまうが、なにしろ雪質がいいし、コブもなし、幅にも余裕があって、空いていたので、無理をしないように落ち着いて、踏みしめるように確実にターンを切りながら降りていけば、それほど難しさは感じない。
いや、けっこう楽しい。みんな抜かしてってくれるから、コース独り占めだし(爆)。
これでもう少し、スピードを恐れずに滑れれば、完全に足が揃うんだろうけどなあ。
羽万をあとに
カレーの匂いに誘われ、クワッド乗り場に併設されている第3レストハウス内で昼食をとろうということになり、キリもいいのできょうのスキーはこれでアップすることにした。いとっちがやや不満げだが、きょうは全員がけっこう中味の濃い滑りをしたし、なにしろ寄る年波なのでこれくらいで勘弁してほしい。
スキールーム兼ゲームコーナーで着替えと荷造りを終えて休んでいると、あねもねダンナがなにかを発見。1台のゲーム機がプレイできる状態になっていた。たぶん前の人がお金を入れた後途中で席を立ってしまったんだろう。しばしそのシューティングゲームに興じる。
こうして、昼過ぎに「羽万」をあとにし、再び轍の雪道を慎重に走り出した。この晴天で、だいぶ路面も溶けていて、チェーンも巻いているのできのうよりも走りやすく、1時間ほどでふもとの町に出た。
東北道に乗ってまもなく、那須高原SAというところでラーメンを食べようということになり(なにか、きのう食べてからすっかりラーメンづいてしまった)、ayakoへのおみやげ物色も兼ねて休憩。
ここには「白河ラーメン」なるものがあるらしい。頼んでみると、スープはどろっとしていて、真っ黒く(注:しょうゆ味)ややくせのある味で、麺は太めでゴリゴリした感じ。好みもあるだろうけど、我々の間ではあまり評判はよろしくなかったようだ。きのう食べたもののほうがおいしかった。
ayakoへのおみやげにドレッシングの味違いのものを3本買い、帰路についたのだった。
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