自衛隊員の奥さまへ


今朝の新聞(朝日・十二日)に「小牧基地隊員の妻は」という記事が載っていました。

『私が思いきって「自衛隊辞めたら?」と言いました。夫は「辞めない」と答えました。「自分も行きたくて行くわけじゃない。でも、だれかがいくんだから」と。この言葉を聞いて私は、ここまで来たら夫の意志を尊重してあげたい、多くの国民に前向きに送り出してほしいと思うようになりました。待つ方だってやりきれないのです。』

この文章を読んで、わたしは、いてもたってもいられない気持ちになりました。隊員たちも妻たちもとても悩んで苦しんでおられる。それがよく伝わってきました。

「誰もいきたくないんだ」「自分が辞めたら誰かがかわりに行かなければならない」「だったら自分が行く」というのはとても義侠心のある男らしい気持ちだと思います。自衛隊員としても夫としても父親としてもとてもいい人にちがいない、と思いました。

でも戦争というのはいつでも、こういういい人、いい夫、いい父親によって担われてきました。そして、それは妻たちが送り出したのです。夫の内心の「いくのは嫌だ」という気持ちを妻たちの励ましによって奮い立たせ、戦地に赴いたのです。

日本のマスコミやアメリカ政府は公表しませんが、いまイラクに送られたアメリカ兵のうち一七〇〇人もの兵士が脱走しています。その何倍もの兵士が傷ついています。イラクの人たちの死傷者はその何百倍もになるでしょう。日本の自衛隊がいくことで、また何人かの死傷者がでることになります。みなそれぞれに家族がいるのです。

いまインド洋に派遣されている自衛官は延べ五六三〇人、そのうち約六〇人が補職替え、つまり配置転換を希望し、実現していると聞いています。海外派兵を断っている隊員もいるのです。でもそういう隊員はその後の出世や隊内で卑怯者扱いされたり居心地が悪くなるかもしれません。

卑怯者でいいじゃないですか。弱虫でいいではないですか。自分は行かないで、人殺しをするかもしれないようなことを命令するような人間たちより、卑怯者になるほうがよっぽどましです。弱虫がいいんです。

女は女々しくていいんです。男も男らしくなくていい。

恋人の自衛隊員がイラク派遣に選ばれたことを知って、一人で派遣反対の署名集めを街頭で始めた札幌と千葉の若い女性のことも同じ紙面にのっていました。国や世間がどういおうと、どんな大義があろうと、まず自分のきもち「いやだ!」「いかないで!」と、土壇場になっても、わたしだったら言いたい。言う。

「わたしは自衛隊がイラクに行くことに反対です。」

水田ふう

2003.12.12


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