前書き


本論文は、AK Pressから出版されている小冊子To Remember Spain: The Anarchist and Syndicalist Revolution of 1936の前書きである。原文はPrefaceで読むことが出来る。なお、視覚的な問題で、「スペイン」は「西班牙」と漢字表記しておいた。

以下のエッセイは、1936年〜1939年の西班牙革命・市民戦争を分析したものではない。むしろ、過去二世紀中に起こったものの中でも最大のプロレタリア階級・農民革命を思い起こしたものである。エッセイには、1930年代の終わりに起こった3年間の闘争におけるアナキスト運動とアナルコサンジカリスト運動(これら二つは明らかに違うものとみなさねばならない)の一般的概要と評価が書かれているものの、これら複雑な出来事を充分に解明しようと意図してはいない。

西班牙革命は左翼がそれまで創り出してきた運動の中でも最大だったと言っても過言ではない。その理由については、このエッセイが明らかにしてくれることだろう。西班牙のプロレタリア階級と農民とは、我々には知り得ない名もなきアナキスト闘士によって導かれ、1930年代に「プロレタリア社会主義」と呼ばれたことの限界ぎりぎりまで行き、多少ともその限界を乗り越えたのだ。。アナルコサンジカリストの全国労働連合とイベリア=アナキスト連盟(CNT-FAI)の指導者が期待したり、明らかに欲していた以上に、アナキストとアナルコサンジカリストは自発的にかの有名な産業・農業集産集団を形成したのだ。これこそが、西班牙革命をそれ以前のいかなる革命とも明確に区別していたのである。こうした集産集団が、西班牙の地主・産業ブルジョア階級・教会のために1936年7月に武装蜂起を行ったフランコ主義者の将軍に対抗して、革命初期に死んでいった何千人もの男女を義勇軍として派遣したのである。

今日の左翼が自分たちが革命的時期と連続しているのだという感覚−−その理想主義・原理原則・思想−−を失ってしまわないよう、西班牙革命におけるアナキストと左翼社会主義者の同盟の試みを忘れてはならない。この連続性を失ってしまえば、政治的日和見主義と、必要な時にだけラジカルな美辞麗句を改良主義の政治と混ぜ合わせているファッショナブルなイデオロギー多元論に寄与することになるのである。

以下のエッセイは、革命時の出来事を学問的に研究したものではなく、幅広い読者層の目にとまるように意図して書かかれている。西班牙リバータリアン運動の概要と題された最初のエッセイは、サム=ドルゴフの「アナキスト=コレクティブ:1936年〜1938年の西班牙革命における労働者自主管理」(New York: Free Life Editions, 1974)の前書きに書いたものである。サム=ドルゴフの本それ自体は、包括的な書物というよりも抜粋をまとめたものである。二つ目のエッセイ五十年を経て:西班牙市民戦争は、New Politics 誌、第一巻、第一号(1986年夏号)に掲載されたもので、西班牙革命の半世紀記念を祝すために書いた。New Politics(注)の編集者であり、友人であるフィリス=ジェイコブソンとジュリス=ジェイコブソンに、エッセイをここに転載する許可を与えてくれたことに対し謝意を表したい。

本書を CNT-FAI の革命家、ガストン=レヴァルとホセ・ペイラツ−−驚くほどの誠実さでコミットした同志だ −−に捧ぐ。

Murray Bookchin
Institute for Social Ecology
Plainfield Vermont 05667
February 28, 1993

(注)New Politics, P.O. Box 98, Brooklyn, New York 11231.


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