決議案:「州知事レースについて」


ブクチンは以下の決議案を1990年6月1日の「左翼グリーン=ネットワーク」第二回大会に提出した。これは、賛成24票、反対16票、棄権6票で採択された。原文は、"Resolution On Gubernatiorial Races"で読むことが出来る。また、本論文では、province(provincial)とstateという言葉が出てくるが、ここではprovinceはカナダにおける州のことを差し、stateは米国における州のことを差していると思われるため、区別せずにどちらも州と訳した。(訳者)


リバータリアン自治体連合論は、二重権力の発達を前提としている。一つは、最も十全な意味での草の根運動であり、その政治運動は自治体という政治領域における最も直接的な民衆制度に依っている。もう一つは、自治体間の連合関係であり、そこでは権力調整が連合評議会に委託され、評議会の権威は連合構造が永久に拡大する政治的管轄権を達成するようになると共に解消するのである。

国家権力は、全く逆の原理に基づいて機能している−−つまり、州知事の持つ管轄権に対する単一政体国家の先買的権威と自治体に対する州知事管轄権の先買的権威である。これは、国家主権主義者の観点からは国家の単なる「怪物」として適切に見なされている。歴史的に、数世紀にわたって、自治体群が連合的提携を確立しようとした努力に絶対的に反対して、政治的にヒエラルキーを持った単一政体国家を確立しようとする国家主権主義者の一部に対して継続的な闘争があった。フランス革命で生じた葛藤は言うに及ばず、前世紀には、「コミューン」や「コミューン群からなるコミューン」は、単一政体国家に対する正真正銘の革命的代案として進められていた。

「自治体連合論的立場のイメージ、そして、自治体連合と純粋な国家主権主義諸形態との間にいつでも存在している緊張の認識」、例えば内閣・州政府のようなものとの緊張は、左翼グリーンが押し進めている新しい政治運動にとって根本となる。リバータリアン自治体連合論は、自治体連合と連合構造を基にして社会を再解釈する闘争と、全種類の国家構造との間にあるこの緊張が左翼グリーン=ネットワークのプログラムの基礎を形成するかどうかによって、その存続が左右される。自治体連合と国家構造との区別を曖昧にすることは、この概念的・政治的枠組みを全く覆い隠し、徹底的にその性質を変えることになる。州知事選挙キャンペーンはこの歴史的に重要な緊張を全く曖昧にしている。

実際、LGN(左翼グリーン=ネットワーク)の持つ機能は、政治権力が存している場−−連合した諸自治体であれ国家にであれ−−に対する直接的で本物の対決がある時点まで、これらの区別を明確にし、それらを強調し増大させることである。

合州国とカナダの州知事職は全くの国家構造である。それらは、内閣と共に、LGNが破棄し自治体諸連合によって完全に置き換えようとしている構造を正に代表している。自治体政府における長は、どれほどその立場が専門的であろうと、少なくとも自治体そのものによって取り囲まれており、その地域社会に対して責任を負っている。州知事・その議会・議員は、本質的に、純粋な国家主権主義的諸構造を代表し、諸自治体に対して先買的権力を主張している。いかなる選挙キャンペーンプログラムも、その急進主義や主張とは無関係に、連合的自治体論の諸構造の中にある完全なる国家主権主義的諸構造の間にあるこの根本的で変更できない制度的分裂を変えることなど出来はしない。

「したがって、候補者を立て・選挙キャンペーンを行い・州知事レベルで機能するように意図した妥協をすることは、左翼グリーン=ネットワークの原理とは相容れないのである。」連合的自治体主義を支援しようとして、こうした選挙キャンペーンをリバータリアン自治体連合論の表明だと見なすことは、LGNの立場の完全なる日和見主義的降伏なのである。そして、それが「より広い」宣伝活動の場を提供してくれるという原理に基づいて、こうした選挙キャンペーンを行うことは日和見主義である。 緑の党を作りだそうとしているCOCグリーンズを問題視する人がいるのも当然であろう。何故なら、州レベルや全国レベルで候補者を擁立することは、グリーン運動を、議会選挙や大統領選挙に候補者を擁立するように推し進め、その結果、北アメリカで一般的ないわゆる進歩党・民主党・NDP党と方法的に何等決定的な違いのない慣例通りの政治政党にまでなってしまうからである。