後藤謙太郎  


『労働放浪監獄より』

  死か 狂か

死か 狂か 近代人の唯一路
すべてを得ざれば即ち無なり

ともかくもあゝ人生は死か 狂か
狂ひても行け ひと筋の道

死か 狂か 鉄火熱火に踊り込め
勇敢なれよ 破調の人生

生きんとす われ強烈に生きんとす
狂ひてもなほ生きんとするぞ

こけ笑ひ 泣くに泣かれぬこけ笑ひ
狂ひ死ぬまでこの世を笑へ

求むる生活 ダリアの情熱
真夏真昼の太陽の白熱

ダリア ダリア その情熱をわれ愛す
呪へり 怒れり 病床の閑日

白熱の太陽を思ひ 血を思ひ
生活を思ひ 病床を呪へり

闇黒 冷酷 苛酷の底より 求むる生活
太陽の白熱

白熱の闘争の巷に踊り出よ
ナッパに血潮は生活の表象

熱 光 朝の空気よ 生活よ
げにわれ切に求めて止まず

突貫 突撃 死線を突破せ
血潮の汚れは×をもて洗えよ
          (アンチ賀川ズム)

泣く勿れ 悲しむ勿れ 新人よ
勇敢なれよ 汝が戦ひ

脈々のこの熱血をいかにせむ
病床 平和 呪へり 怒れり

人生は遂に一齣の悲劇なり
呪へ 戦へ 決して負くるな

死を撰べ 自由を得ずば死を撰べ
妥協を排せよ 孤軍奮闘

×けて見よ ×は炎々と燃ゆるべし
野火の壮観 ××の狂熱

敵あらば今こそ出でよ 戦はふ 病床
平和の生活に堪え得ず

奪はれしわが青春は返るなし
憎悪に生きよ 呪咀に生きよ

あざ笑へ 変質狂をあざ笑へ
衆愚に別るゝ日は遂に来た
         (巣鴨保養院時代)



  無 題

ひとのため 社会のためと
云う奴の 腹の底まで
俺には分かるぞ

人生は何うの 斯うのと云うのかい
生き度いからだ
生きて行くのは

何とでも理屈をつけて
生きて行け
胡麻化して行け 行ける間は

飯を喰ひ
糞をたれ行く人生が
俺には すなわち生の充実

高遠の理想とやらが何になる
糞でも喰へ−−
飯が喰へぬのに

飯も喰へず 眼ばかり
パチパチさせ乍ら
霊長などと済まして居れるか

暑い日に 田の草取るのと
代議士の 地方遊説は
いづれが尊き

碌々に
性の要求も満たされぬ
俺が悪いか 制度が悪いか

ヒネクレたこの根性は
恐らくは
子供の時には無かった筈だが

平凡に たゞ平凡に暮らせと
俺に勧めし
彼の非凡人


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