メンバーの小屋

乱乱小屋

14. Pムラ

 昨今、オウム事件の余波か、カルト栄えて、オカルトTVから消えるの感。幽霊の 夏なのにちと寂しいな。しかし、唯一、ゴールデンタイムに、残党が頑張ってる。毎 週一度の私のお楽しみだ。
 過日は「杉沢村」とやらの特集。ネット上に徘徊する都市伝説の検証だ。青森県の とある村、大量虐殺によって地上から消えた村ということで、何やら八ツ墓村+リデ ィツェ村がフュージョンしたような奇妙さ。幻の村を舞台に起きる謎の怨霊の群れ、 失踪事件と材料は揃っているのに、番組の出来はいま一つ。残念。
 だが、村はやはり実在する。それは「杉沢村」よりもっと恐ろしい村。
 やはりその所在は謎のまま。しかし、その住人は、そこかしこにおわす。あなたの 隣にも。
 地域で、職場で、家庭で、気の置けない仲間のうちに、あるいは機能的な集団の中に。
 それは「彼等」にして「彼」。否、そうはっきりと捉えられるものでもないのだ。
ただ、幾つかの兆候により、正体は見破ることが出来る。

 一、そこはかとない柔らかさのうちにつつまれ
 一、言葉は主語を失い
 一、彼我の境界は不鮮明になる
 一、つまるところエロな関係
 一、異人の兆候には過敏に反応し、あからさまな排除こそしないが、巧みにその無化をはかる

 たとえばある職場。大概仕事は暇。丸まったような言葉使いで、共通の話題を探索 し、そのやりとりに終始。「みんな一緒なんや・・」と共通点の発見には狂喜。「正 月は楽しく雨はうっとうしい」と言っておれば一年は無事過ぎる。もしこの相互確認 の失敗例が積み重なると「あいつは変人」という一括りで処理される。「和」を乱す (何よりの大罪だ)危険人物にまで昇格する場合もある。仕事に貢献したとしても、 疎まれるのだ。(変人役を能動的に引き受けることによって、難を免れることも可能 ではあるが困難)

 このような村民に囲まれたことはおありか?
 神島二郎の「第二のムラ」にでも倣って「第三のムラ」とでも名付けようかと思っ たのだが、私の頭の整理上のことだけなので、「Pムラ」とだけ名付けておくことに した。
 Pムラは、その構成員にとっても明かしえぬ共同体である。「異人」とされた人に も事態はよく飲み込めない。しかし漸次的に行われる相互確認/異人無化によって、 自分が自分であるということの負性を異人は思い知らされるのだ。単数の単独である ということの「罪」。罪の報いによって、交換や交通が禁じられた異人は、自分とい う身の内に、自らを押し込めなければならない。
 だから異人は夢を見る。いつの日か座敷牢から脱出し、村民を皆殺しにする夢を。

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