遠景に見える花火。人なく、喧騒なく、ただ街の天空に輝く。切り絵の如き。
錦菊、銀菊、冠菊、スターマイン・・・打ち上がっては消え、打ち上がっては消え・・
光跡の後にとどく遠雷もまた不可思議。狭間の暗転に轟く音の独り。
花火はその燦然とした光が主役にあらず。暗闇を刹那、その輝きによって支配するも、やがて潰えてしまうその虚しさの中にある。
光が漆黒に破れさる様こそ人が見たいもの。光彩の祝祭を楽しむふりをして、それを盗み見る。
だから、人の生に重ねることは自然なこと。花火と。
ささやかな線香花火に、ある筋ジスの知人がポツリ
「僕らの運命やなこれが・・」
彼は、死を共に臨む日々。
花火がまた打ち上がり、やがて姿を消す。
一つ、また一つと。
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