メンバーの小屋

乱乱小屋

11. 空き地

 私がまだ小学4年生のころ、学校の空き地(敷地の内外は不明)に幽霊が出るという騒動が起こった。
 私も、「見た」と言った。その学校は、所謂進学に熱心な私立学校。小学校高学年ともなれば、ますます競争に拍車がかかった時期。それでも、学校全体に拡がったパニックを、看過すべきでないと判断したのか、真相究明というより、扇動者への糾弾会が行われた。私も糾弾対象の一人としてあった。裁判は担任主導の人民裁判形式で、黒板を背に立たされた扇動者たちは、真理の徒の容赦ない集中砲火を浴び、各個撃破され、転向をやむなくされた。私は、真理の徒が、つい最近までは、噂の拡大に一役買っていた群衆であることを知っていたので、糾弾されることよりも、その「裏切り」ぶりに呆れ果てていた。呆れ果ては、転向を告白して許された扇動者の一人が、戻った真理の徒の席上より、すかさず「あなたはなぜ幽霊を見たと言ったのですか」などと言うにおよんで、ピークに達した。
 結局、私も転向した。今とは異なり「科学万能」時代。ピカピカした未来が約束されていたのだ。幽霊なんて古ぼけた存在を虚言する私に利はなく。それでも強弁する心臓もなかった。
 空き地は、何かの施設か家屋の廃虚状。建造物の一部や、放置された植木などがあり、特異な空間を形成していた。幽霊は、真昼間に、しかとは姿を現わさずに、そこに「居た」・・らしい。
 厳格な教師たちが管理する学校の一角。みんな幽霊を見たかったに違いない。
 私は、見てみたいと今も思っている。

[乱乱小屋入り口] [小屋入り口]

Anti-Copyright 98-02, AiN. All Resources Shared.