メンバーの小屋

乱乱小屋

4. アンソロジー 殺したい人・殺した人

(1)東京都 14歳男子

 趣味は、ただ寝ていること。いつもいつも眠い。ずっと寝ていて、記憶が戻らないといい。ふだんの生活も、ブラーッと腑抜け状態で生きているだけです。生きる喜びなんて、別にない。毎日の生活で、一番楽しさを感じるのは、飯を食べているときくらいかな。女の子にも、おしゃれにも関心はない。親友と呼べるような友だちもいない。でも、寂しいとは思わない。だって、自分の気持ちを分かってもらったところで、友だちもどういていいか分かんないだろうし、逆に親友から打ち明けられても、うざったい。幼稚園のときは、将来は消防士になりたいと思っていたけど、今の学校にいると、もう夢も希望もなくなって、とりあえず生きているだけで、ただ息をしているだけで十分みたいな感じになってしまう。今の世の中には、青春なんていう言葉は似合わない。世紀末で、「修羅の道」みたいな状況がこれから始まるんだと思っている。学校でも街でも、人はとりたてて意味もなく暴力をふるい始める。そう、自分の意見を言う代わりに、暴力で表現する。そういう単純で原始的な暴力なり力で示す以外に、コミュニケーションのとれない時代が来る。そして、自分の考えを言葉ではっきり言える人は、やがて淘汰されていく。(中略)ストレスがたまると、いろんなモノを壊したりして発散している。川で泳いでいるカモを見つけては、石を投げたりする。家の中に入ってきた猫は、エアガンで撃ちまくる。すごく気持ちいい。人を殺したいと思ったことは何回もあります・・肩がぶつかってもすぐ殴りかかるような、オレたちからすると、ほんとうにもう意味の分からない人たち、そういう人たちは殺してもいいような気がする。奴らを「もう二度と痛みのない世界に葬ってやりたい」と思う。そう思っているのは、オレだけでなく、友だちもみなそういう意見だ。極端なこと言うと、殺人などしなくて済むように、劣性遺伝子をあらかじめ排除してしまう法律を作ればいいと思う。

(「14歳・心の風景」NHK出版より抜粋。一部編集してある)


(2)兵庫県 A少年

 「懲役13年」  いつの世も・・同じ事の繰り返しである。止めようもないものは止められぬし、殺せようのないものは殺せない。時にはそれが、自分の中に住んでいることもある・・・「魔物」である。仮定された「脳内宇宙」の理想郷で、無限に暗くそして深い腐臭漂う心の独房の中・・・死霊の如く立ちつくし、虚空を見つめる魔物の目にはいったい、「何」が見えているのであろうか。俺には、おおよそ予測することすらままならない。「理解」に苦しまざるをえないのである。魔物は俺の心の中から、外部からの攻撃を訴え、危機感をあおり、あたかも熟練された人形師が、音楽に合わせて人形に踊りをさせているかのように俺を操る。それには、かって自分だったモノの鬼神のごとき「絶対零度の狂気」を感じさせるのである。とうてい、反論こそすれ抵抗などできようはずもない。こうして俺は追いつめられてゆく。「自分の中」に・・・しかし、敗北するわけではない。行き詰まりの打開は方策ではなく、心の改革が根本である。大多数の人たちは魔物を、心の中と同じように外見も怪物的だと思いがちであるが、事実は全くそれに反している。通常、現実の魔物は、本当に普通な「彼」の兄弟や両親たち以上に普通に見えるし、実際、そのように振る舞う。彼は、徳そのものが持っている内容以上の徳を持っているかの如く人に思わせてしまう・・・ちょうど蝋で作ったバラのつぼみや、プラスチックで出来た桃の方が、実物は不完全な形であったのに、俺たちの目には完璧に見え、バラのつぼみや桃はこういう風でなければならないと俺たちが思いこんでしまうように。今まで生きてきた中で、「敵」とはほぼ当り前の存在のように思える。良き敵、悪い敵、愉快な敵、不愉快な敵、破滅させられそうな敵。しかし、最近、このような敵はどれもとるに足りぬちっぽけな存在であることに気づいた。そして一つの「答え」が俺の脳裏を駆けめぐった。「人生において、最大の敵とは、自分自身なのである」魔物(自分)と闘う者は、その過程で自分も魔物になることがないよう、気をつけねばならない。深淵をのぞき込む時、その深淵もこちらを見つめているのである。
 「人の世の旅路の半ば、ふと気がつくと、俺は真っ直な道を見失い、暗い森に迷い込んでいた」

(文芸春秋98年3月号 正常と異常の間/立花隆より抜粋)


(3)佐賀県 17歳

 自分の中に別の自分がいる。そいつが人を殺せと言っている。

(2000年5月11日 朝日新聞夕刊)


(4)サンフランシスコ ゾディアック

 俺は人を殺すのが好きだ 楽しくてたまらない 人殺しは森で動物を殺すよりずっと面白い なぜなら人間が一番危険な動物だからだ 生き物を殺すのはわくわくする 女とセックスするよりも楽しい 何よりもいいのは 俺が死んだら 天国で生まれ変わって 俺を殺したやつらが俺の奴隷になることだ 俺の名前は教えない 教えたら君たちは 俺の死後の奴隷狩りを 邪魔したりやめさせようとするからだ EBEORIETEMETHHPITI

(「平気で人を殺す人たち」ブライヤン・キング著 イースト・プレスより)


  1. 昨今の14歳の代表例として。彼が必ず殺人者になるわけではない。が、その空虚感に着目した。
  2. 酒鬼薔薇聖斗が少女襲撃事件後に書いたもの。結局彼は、魔物と化してしまったのだろうか。
  3. この5月に起こったバス・ジャック少年の押収メモに記載。
  4. 参考として。60年代後半、サンフランシスコ市を恐怖に陥れた謎のシリアル・キラー、ゾディアックの挑戦状。(2) 事件との類似性が、当初取り沙汰されていた。その本質的な差がわかるかと思う。

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