メンバーの小屋

乱乱小屋

3. Ophelia

 「英国ロマン派展」。「英国」で「ロマン」と付けばなんだかだるい感じ。ルネサンス盛期の画家ラファエルロ以前の作品を理想としたつまりラファエル前派の展覧会。以前ラファエル前派展として開催されたこともあるのだけど、その時は無知でみすみす見逃してしまって残念。ようやくまとめて見れた。まあ19世紀後半の芸術運動なんだけど、素敵につきる。絵画史的には象徴主義にあたるんだけど、19世紀後半といえば機械と科学の時代。英国では産業革命の絶頂期だ。その時流に抗うように、神話や聖書等の古典的世界やダンテ、シェークスピアを題材としている。ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティやアルバート・ジョージフ・ムーア、ウィリアム・ホフマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイ等が代表的。その鮮やかな陰影を含まない色彩が、明るい闇を暗示する。白日にさらされた死の予感が、独特の甘美さ官能さを持ってせまってくる。
 とりわけ一番見たかったのは、ミレイの「オフィーリア」(1852)だ。シェイスクピアの「ハムレット」に登場する少女オフィーリアは、ハムレットに捨てられたと思い込み、狂乱の果て小川で溺死する。その水死体を描いたものだ。ガイキチ監督のダリオ・アルジェントの「トラウマ」のワンシーンにこの絵が突然登場して、私はそのふい打ちに狂喜した。この展覧会では、同タイトルで、ジョージフ・セヴァーンとジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの作品が出ていた。これもキレたのと死の暗示のそれぞれのオフィーリアでなかなか良いのだが、やはりミレイのが見たかった。しかし、ムーアの「ソファー」(1875)ルイス・ウェルデン・ホーキンス「ヴェール」(1909)ウィリアム・ブレイク・リッチモンド「ヴィーナスの水浴」(1891)枚挙にいとまがないほどの傑作ぞろいに脳内麻薬が充満してしまった。

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