メンバーの小屋

乱乱小屋

2. 葬式

 亡くなったのは、仕事関係の、私とはあまり良好な付き合いとは言えなかった50才の女の人。休暇中に欧州旅行し、帰国後倒れて入院。その病気は小康状態にいったんなったものの、持病の心臓がアウトになって、集中治療室行となり、そのまま果てたのだ。
 いつになく悲しい葬式になった。母一人子一人の生活だったようで、一人残された老母の悲しむ姿がそれは痛ましいものだった。そのせいもあってか、また、まだ死ぬには若いこともあってか、悲しむ人が多く、こんな「真面目」な葬式もなかった。普通なら義理で来る職場関係の人たちも泣いていたぐらいだ。
 遺体との最後の別れがあって、私はあまり気乗りがしなかったのだが、遺体に献花をした。年齢よりははるかに若く見えるその人の相貎が、老婆のそれに変貌していることに驚いた。最後は流動食の生活だったというから、管が固定されていたためか、唇がめくれあがっているのも無残だった。あまり安らかな死ではなかったのだろう。
 全ての人に共通して「死」はある。その長短とは無関係に、永遠の時間のほんのわずかな間だけ、生きることを許されているにすぎない、言わば生得的な死刑囚である。この憂鬱な逃れ得ない事実がふと頭をよぎった。

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