天界より遣わされし2番目の使者は、実は魔界より遣わされし1人目の少女でもあり、
魔界より遣わされし2人目の少女と、様々な場面でのアクセスが生じるのであった。
序章 − 書記官
皆さん・・・ 初めまして、私の名はペンネムエ、と申します。
多分、限りなく100%に近い方々は私の事をご存じ無いと思いましたので、
最初に、『初めまして』 という挨拶をさせて頂きました。
私は元々、天界の住人の1人だったのですが、
人間に筆記法を教えた事によって神の怒りを買ってしまい、
遂には魔界へと追いやられるハメになった哀れなフォリンエンジェル(堕天使)でございます。
この世界(魔界)へと貶められた直後は、絶望感に目の前が真っ暗になるような感覚を味わい、
出来うる事ならば自分で自分の生を絶ってしまいたい。と、本気で考えた事が有るくらいなのですが、
いくら堕ちたとはいえ、天使である私にそのような事が出来る筈もありません。
やがて時が経つるにつれ私の心も段々と癒されてきて、
今では、私が元々持っていた才能を買われまして、『この世界で随一』
と言われております名門の貴族の家において、書記と執事の仕事を担わされております。
尤も、私のフルネームは知らなくとも、私の伝えた筆記法という物については、
今日の皆さんの日常の中で、それも頻繁に使われ続けている事でしょう。
そう、筆する事(Pen)、そして、記する事(Name)は。
おっと、どうやら話しが全く見当違いの方向に行ってしまったみたいですね。
誠に申し訳ありません。そろそろ本題の方に入りたいと思います。
おそらく皆さんのうちで大半・いえ殆どの方は、今私が居るこの魔界という特異な空間について、
恐怖と混乱が絶え間なく繰り返される、暗黒と混沌の世界。
というイメージを抱いておられる事でしょう。
もし、そのイメージが正確なものだとしたならば、
この世界において重要な位置をなすこの名家において、
その全てを記録しなくてはならない私の仕事は、とてつもなく大変で、
かつ様々な困難を伴うものとなる所なのでしょうが、
実際の魔界は、実に秩序と均衡の採れた世界であり、むしろ人間の世界よりも退屈な程なのです。
そうは申しましても俄には信じられないでしょうが、これは純然たる事実なのです。
何故ならこの魔界は、圧倒的な力を保持した4人の大魔王(サタン)によって完全に掌握されており、
彼らに逆らう者など皆無であるからなのです。
そのため私の書記としての仕事は、開店休業といった状態がもう思い出せない程長く続いていて、
私はただ、執事の仕事のみを黙々とこなしていれば良かったのです。
これ迄は実に平穏で、満ち足りた状態だったこの魔界なのですが、
ところが何故か最近になって急激に慌ただしさをみせるようになり、
私としても随分久方ぶりに”忙しさ”というものを経験する事になってしまったのです。
今日は、皆さんにこの世界の事をちょっとでも理解して貰うために、
私がしばらくぶりに書き記したこの記録を、ほんの少しだけお見せする事に致しました。
それでは、ページを捲ってください。