『Luna Blu』10万ヒット記念
10万回目の祝辞

「そう……10万ヒットなのね」
「綾波、そんな風に軽く言うなよ。悲しくなるじゃないか」
 
 レイのその言葉に、流石のシンジも頭を抱えた。
 個人のHPが6桁の大台に乗ると言う事の重大さが、彼女には分かっていないようだ。
 しかし、それも仕方が無い事だろう。
 彼女は本は読む事はあっても、ネット上でメールのやり取りさえ、した事が無いのだから。
 
 レイはシンジの言葉に、戸惑っていた。
 だから、こんな風に彼に聞くしか、他に無かったのだ。
 
「そうなの?」
「決まってるじゃないか」
「決まってる? 命令なら、そうするわ」
 
 決まり事を規律とでも解釈したのか、レイは彼に向かってそんな事を言ってきた。
 シンジは彼女のその言葉に、レイの人としての悲しさを知る。
 ただ大人達に利用される為に生まれた、彼女の境遇を。
 
「これは命令とか、そう言うことじゃないんだ」
「じゃあ、どういう事なの?」
「なお さんのサイトが、大きな節目を迎えたんだ。とっても嬉しい事なんだよ」
「嬉しいの……?」
「そうだよ。だからみんなこうして、温かな言葉を なお さんにかけているんだよ」
 
 節目を祝うと言う事が、彼女には良く理解出来なかったようだ。
 誕生日さえない彼女は、他人からお祝いされた事が無いからかもしれない。
 節目……嬉しい……温かな言葉…………。
 
 それは彼女の理解の範疇を超えていたのか?
 いや、彼女は知識の上では、それを理解出来ていた。
 しかし、それを心から表現する術を、持っていなかったのかもしれない。
 
 レイはそこで、思考が袋小路に入り込んでしまったように、考え込み始めた。
 
「………………………………」
「綾波、どうしたの?」
「ごめんなさい……こういう時、わたし、何て言って良いか分からないの」
「お祝いの言葉を言ってあげれば良いんだよ」
「………………」
「………………」
「……お祝いの言葉って、どんな風に言えばいいの?」
「こういう時は『おめでとう』って言って上げるべきだと、僕は思うよ」
 
 そう言いながら、シンジはレイに向けて優しく微笑んだ。
 優しい気持ちが、彼女の心に染み込んでくる。
 それは第五使徒の攻撃を受け、自分の身を案じてくれた、その時の彼の優しさと同じものだったかもしれない。
 レイはあの時の事を思い出しながら、生涯二度目の心からの笑顔を浮べて、こう優しく静かに言ったのだった。
 
「なおさん……10万ヒット、おめでとう」
 
 
 
 
 
 


 なおのコメント

 『Luna Blu』10万ヒット記念に、MAP1144の中川 健(仮名)さんから頂いてしまいました。
 掲示板に書いていただいたものをサルベージしたものです。(^-^)/
 
 レイちゃん!
 ありがとう!<違う(巨爆)
 
 中川さん書くレイちゃんってかわいくてイノセントでとってもキュートです。
 ありがとうございましたぁ。(^-^)/
 
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