「お呼びでしょうか、司令?」
NERV総司令・碇ゲンドウの執務室。
いつものポーズのままのゲンドウ、まるで付属品のように隣に立っている冬月。
青葉シゲルは突然の出頭命令に困惑しつつ、ふたりの元へとやってきた。
緊張した面持ちを解すかのように、冬月が落ち着いた声で話し始める。
「忙しいところを済まないね、青葉君。君がどうしても必要だったのだよ」
「私が・・・・・必要、ですか?」
「ああ・・・・・・これを見たまえ」
冬月がリモコンのスイッチを押すと、正面にあるモニタに見慣れた少年達の姿が映し出された。
通学路であろうか?
紅茶色の髪の少女が、蒼髪の少女と向かい合わせに何かを喋っていた。
その小脇に、魂が抜けたような表情の少年を抱えて。
『kissなる言葉を形作る三種の文字、
即ち
K・I・S!
不愉快なれどもKAWORUのK!
そして要はIKARIのI!
さらにとどめ、SOURYUのS!
これらみっつが織りなす妙味こそ、キスの真髄と知れぃ!!』
少女が高らかに宣言した直後、冬月は再びリモコンを操作した。
モニタの電源が落ち、静寂が部屋の中を支配する。
「・・・・・どうかね?」
「いや、その・・・・・どう、と仰られても・・・・」
冬月の意図が見えない青葉は、突然の質問に答える事が出来ない。
その時、一言も発していなかったゲンドウがやおらに立ち上がった。
「・・・・・・セカンドチルドレンの台詞を思い起こすが良い」
「セカンド・・・・・アスカちゃん、ですか?」
「そうだ・・・・彼女の発言も一理ある。だがしかし、それだけでは不足なのだよ」
「・・・・・・・仰る意味が判りかねますが・・・・・・」
「kissなる言葉を形作る三種の文字、即ちK・I・S・・・・全てが揃わぬ限り、真の補完とは呼べぬ。
君を呼んだのは他でもない、我ら4人が揃ってこそ・・・・・全ての条件が成り立つのだ」
ゲンドウがパチン、と指を鳴らすと同時に現れた黒い影。
彼らは目当てのモノをゲンドウの前に横たえると、再び闇へと消えた。
青葉は見た。
簀巻きのように全身をぐるぐる巻きに縛られ、ご丁寧に口には猿轡を噛まされた少年の姿を。
「し・・・・シンジ君!!?」
「フッ・・・・・これで全てが揃った。
時は・・・・・・満ちた」
「ちょ、ちょっと待ってください!
訳が判りませんよ!
一体・・・・私に何をさせようと仰るのですか!?」
驚く青葉に、ゲンドウはニヤリと口の端を歪ませた。
「良く考えてみるのだ。
KはコウゾウのK、Iは碇ゲンドウのI、SはシンジのS、そしてもうひとつのSは・・・・・・」
「ま、まさか・・・・・・・シゲルの、S!?」
愕然とする青葉を顧みる事なく、シンジに近づくゲンドウ。
猿轡を取り払われたシンジは真相を知った衝撃からか、ただ怯えるだけで声を上げる事すら出来ずにいた。
「始めるぞ・・・・・ATフィールドを、心の壁を解き放て。
欠けた心の補完。
不要な身体を捨て、全ての魂を今、ひとつに・・・・・・」
シンジの目が見開かれ、キュっと瞳孔が閉まる。
彼の眼前に迫る、父の顔。
サングラスを外し、瞼を閉じ。
微かに頬を紅く染め。
タラコのように突き出された、唇。
てらてらと光るピンク色の物体を目前にして、シンジは声にならない声で絶叫した。
そこで、彼の意識は途絶えた。
それから3分後。
ATフィールド発生を感知したとの報告を受け、執務室へと飛び込んだミサトが見たものは。
瓦礫の山と化した室内。
その中に埋もれる、3体の血塗れた物体。
そして、
気絶しているシンジを取り合う赤鬼と青鬼の睨み合いだった。
「誰か・・・・・俺に優しくしてくれよ・・・・・・」
ロンゲの呟きは、誰に聞かれる事なく掻き消えていった。
勝手に設定をパクってしまいました。
スミマセンm(__)m
管理人のコメント
「KISS」を構成する四人の男達の熱い物語を頂きました。(汗)
>「ま、まさか・・・・・・・シゲルの、S!?」
すごいです。なんだかよくわからないけど、やたらと盛り上がってます。(笑)
>始めるぞ・・・・・ATフィールドを、心の壁を解き放て
なんだか映画を見ているみたい……(爆)