map_s さんの
KISSの温度「」Edition 6th


 改札から吐き出されてゆく人込み
 忙しそうに通り過ぎる隙間に
 あなたの姿を見つけた
 
 
 両手に手荷物を抱え
 少し猫背に
 きょろきょろとあたりを見回しながら
 
 
 久し振りに呼んだ名前
 そんなに大きな声じゃなかったのに
 立ち止まったあなたは
 昔と変わらぬ笑顔で振り返った
 
 
 ざわめきの中でふたりだけ息を止めてる
 立ち止まったふたりの横を
 見知らぬ人々が無表情に通り抜けてゆく
 
 
 あなたは微笑みを絶やさぬまま
 ゆっくりと
 言葉を紡ごうと口を開く
 
 
 やわらかくあたたかな唇を
 そっとひとさし指で塞いだ
 
 
 まだ言葉はいらない
 それよりも前に
 ほしいものがあるから
 
 
 じっと見上げるわたしに
 あなたはほんの少しだけ苦笑して
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 少しだけ重い荷物を両手で持ち
 あなたの腕に包まれながら
 歩調を合わせゆっくりと進む
 
 
 辿り着いた出口の先
 降り注ぐ陽射しの向こう側に
 鮮やかな初夏の彩りが広がる
 
 
 澄み切った青空
 綿毛のような白い雲
 陽を浴びて輝く若葉
 
 
 ふと立ち止まり
 天を仰いだわたしを
 穏やかな薫風が包み込んだ
 
 
 まるで
 慈しむように
 そっとわたしに触れた
 
 
 あなたのように
 

 

 

 

 

 

 


管理人のコメント
 遠距離恋愛
 それとも、長期出張なのでしょうか?
 
 久しぶりに逢った二人。
 再開の挨拶はやっぱり『KISS』
 
 初夏の雰囲気と、二人のまだ瑞々しい感じがとてもいいです♪
 
 本作品も他に漏れず、美しく詩的で、map_sさんの個性が現れています。
 この文体は、ほとんど完成されてしまったと言っても過言はないでしょう。
 
 しかも、アスカも、シンジも、レイという言葉も出ていないです。
 これはもう、オリジナルな作品、と言ってもいいですよね♪
 
 
 タイトルですが、特に指示がなかったのですが「A」にしてしまいました。
 雰囲気的にそうかな、と感じたもので。
 命名は、管理人に一任でしたよね。
 確か。(笑)
 
 
 追記
 すいません、すいません。
 本作は「R」です。
 修正しました。(^^;
 
 

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