map_sさんの
KISSの温度「M」Edition 3rd


「綺麗でしたね・・・・・」
 
「うん・・・・・」
 
 僕は山岸さんに誘われて、駅前にできたプラネタリウムを見に行った。
 その帰り道、公園の中を並んで歩く。
 雨上がりの夜空は雲ひとつなく、蒼い月が皓々と夜道を照らす。
 
 よほど気分が良いのか、普段は無口な彼女もいつになく多弁だった。
 プラネタリウムを見に行くのなら・・・・・と昨日読んだ本の内容を、ずっと僕に聞かせてくれている。
 
「星って、様々な色に見えますよね?
 赤、青、黄・・・・・ちょっと目瞬いただけでも色が変わって。
 あれって、星の温度によって決まるらしいんです。
 表面の温度の違いで分類するスペクトル型、というのがあって、温度の高い順からこう並ぶんです」
 
 彼女は不意に立ち止まると、しゃがみ込んで地面に指で何かを書き始めた。



          R−N
         /
O−B−A−F−G−K−M
           \
            S

「・・・・・なんだかよくわからないや」
 
「左側から順番に温度が下がっていくらしいんですよ。
 O型とB型は青白、A型は白、F・G型は黄色、K型はオレンジ、M型は赤、N型は一番赤いんですって」
 
「へぇ・・・・・化学記号みたいだね」
 
「ええ・・・・・それで、この順番の覚え方もあるらしいんです」
 
 山岸さんは記号の下に、こんな英文を書いた。
 
『Oh Be A Fine Girl Kiss Me Right Now,Sweetheart.』
 
 思わず僕は感心してしまう。
 昔歴史の授業なんかで覚えた語呂合わせみたいなものが、英語にもあるなんて知らなかったし。
 でも・・・・・
 
「すごい・・・・・けど、なんか恥ずかしいね・・・・・」
 
「フフっ・・・・・シンジさんはこういう台詞、言えませんか?」
 
「え・・・・・」
 
 僕は地面から視線を上げた。
 濡れ羽色の髪。
 月明かりに照らされた、桜色に染まる頬。
 僕をまっすぐにみつめる、潤んだ瞳。
 さくらんぼのような唇が、何かを言いたげに小さく開いていた。
 
 その表情を見た途端、頭の中が痺れて。
 月の光に導かれるように。
 滅多な事では言えないような台詞を。
 
 僕は、呟いた。
 
 
 冬間近の肌寒い夜。
 彼女の身体と唇の温度が、僕に重なった。
 
 
 
 
 
 コレなら痛くないでしょう(笑)
 
 残念ながら今晩は月も雲に隠れてますが・・・・・
 
 蛇足ですが。
『蒼い月』、直訳だと『Blue Moon』ですかね。
 これが『once in a blue moon』ってなると『滅多にない』という意味になるそうです。
 ちょっとシンちゃんの台詞にも引っ掛けてみましたが、如何?
 
 
 
 
 


 map_sさんからマユミさんを頂いてしまいました。
 う〜む。博学で、しかもセンスがありますねぇ。山岸さん。(^^)/
 ちょっと分けてほしかったりして。(^^;
 それにしても、こんな迫られかたをしたら、シンちゃんでなくとも……(^^;
 
 シチュエーション的にはアスカかなぁ、ってmap_sさんは言ってましたが、
僕的にはアスカさんなら、なおおっけー!(笑)
 
 いえいえ、本作でマユミさんの魅力の一端を、垣間見た思いです。(^^)
 


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