「綺麗でしたね・・・・・」
「うん・・・・・」
僕は山岸さんに誘われて、駅前にできたプラネタリウムを見に行った。
その帰り道、公園の中を並んで歩く。
雨上がりの夜空は雲ひとつなく、蒼い月が皓々と夜道を照らす。
よほど気分が良いのか、普段は無口な彼女もいつになく多弁だった。
プラネタリウムを見に行くのなら・・・・・と昨日読んだ本の内容を、ずっと僕に聞かせてくれている。
「星って、様々な色に見えますよね?
赤、青、黄・・・・・ちょっと目瞬いただけでも色が変わって。
あれって、星の温度によって決まるらしいんです。
表面の温度の違いで分類するスペクトル型、というのがあって、温度の高い順からこう並ぶんです」
彼女は不意に立ち止まると、しゃがみ込んで地面に指で何かを書き始めた。
R−N
/
O−B−A−F−G−K−M
\
S
「・・・・・なんだかよくわからないや」
「左側から順番に温度が下がっていくらしいんですよ。
O型とB型は青白、A型は白、F・G型は黄色、K型はオレンジ、M型は赤、N型は一番赤いんですって」
「へぇ・・・・・化学記号みたいだね」
「ええ・・・・・それで、この順番の覚え方もあるらしいんです」
山岸さんは記号の下に、こんな英文を書いた。
『Oh Be A Fine Girl Kiss Me Right Now,Sweetheart.』
思わず僕は感心してしまう。
昔歴史の授業なんかで覚えた語呂合わせみたいなものが、英語にもあるなんて知らなかったし。
でも・・・・・
「すごい・・・・・けど、なんか恥ずかしいね・・・・・」
「フフっ・・・・・シンジさんはこういう台詞、言えませんか?」
「え・・・・・」
僕は地面から視線を上げた。
濡れ羽色の髪。
月明かりに照らされた、桜色に染まる頬。
僕をまっすぐにみつめる、潤んだ瞳。
さくらんぼのような唇が、何かを言いたげに小さく開いていた。
その表情を見た途端、頭の中が痺れて。
月の光に導かれるように。
滅多な事では言えないような台詞を。
僕は、呟いた。
冬間近の肌寒い夜。
彼女の身体と唇の温度が、僕に重なった。
コレなら痛くないでしょう(笑)
残念ながら今晩は月も雲に隠れてますが・・・・・
蛇足ですが。
『蒼い月』、直訳だと『Blue Moon』ですかね。
これが『once in a blue moon』ってなると『滅多にない』という意味になるそうです。
ちょっとシンちゃんの台詞にも引っ掛けてみましたが、如何?
map_sさんからマユミさんを頂いてしまいました。
う〜む。博学で、しかもセンスがありますねぇ。山岸さん。(^^)/
ちょっと分けてほしかったりして。(^^;
それにしても、こんな迫られかたをしたら、シンちゃんでなくとも……(^^;
シチュエーション的にはアスカかなぁ、ってmap_sさんは言ってましたが、
僕的にはアスカさんなら、なおおっけー!(笑)
いえいえ、本作でマユミさんの魅力の一端を、垣間見た思いです。(^^)