『何度も言わせるンじゃないわよ、バカ………………』
ちいさな呟き
微妙に外された視線
紅に染まる頬
信じられなかった
目の前で起きた出来事が
耳に届いた言葉が
あまりにも突然すぎて
だけど
高鳴る鼓動が
熱を帯びた頬が
恥ずかしげな彼女の姿が
現実だと教えてくれた
僕は彼女を見つめたまま
彼女は僕から視線を逸らしたまま
身動ぎひとつせず
瞬きひとつできず
時計の針だけが
静かに音を刻む
ふと気付くと
答えを求める視線に
僕は捕らわれていた
期待
焦燥
不安
そんな色を宿らせた瞳に
はじめて見る彼女の姿
はじめて知った彼女のココロ
僕はようやく
一歩を踏み出した
彼女との距離を縮めるために
僕の想いを伝えるために
やわらかな頬に手を伸ばし
そっと手のひらを重ねる
見開かれた瞳は
やさしく
ゆっくりと閉じてゆく
僕は
想いを
唇に
重ねた