喰う寝る36さんの
KISSの温度「Y」Edition

 一分の乱れもないキックがコアに炸裂し、大爆発を起こす使徒・イスラフェル。
 激しい閃光と膨大なる熱量が地上から消え去った時、司令部のモニタ上に映っていたのは・・・・・・・巨大なクレーターの中心に横たわるEVA2体。
 仰向けの弐号機、その上に折り重なるように倒れている初号機。
 見様によっては、初号機が弐号機を押し倒しているようにも見える・・・・・いや、そうとしか見えない。
 
 次の瞬間、スピーカーから大声が響き渡った。
 
「キョウコッ!もう我慢できないわッ!!」
 
 再起動する初号機。顎部拘束具は弾け飛び、轟く咆吼。
 
「ユイさんっ!私だってっ!!」
 
 今度は弐号機。既に裂けた口元から、ぶっとい舌が垂れ下がる。
 
「エヴァだって人間よっ!!人造だからって、恋もすれば性欲もあるわっ!!」
「ええっ!!私だって、このまま干上がっちゃたまらないわよっ!!」
 
 ガバッと抱き合うエヴァ。貪るように求めあうクチビル(あるのかなぁ?)。
 呆然とする、発令所の面々。
 
「・・・はっ!・・・広報部!!マスコミの対応はどうしたっ!?」
 
 我に返り、指示を飛ばす冬月。しかし・・・
 
「駄目です!既に管制は解かれ、報道のヘリが数機、こちらに向かっています!!」
「追い返せ!こんな失態が知れたら・・・老人どもが黙ってはおらんぞ・・・」
「りょ、了解!・・・駄目ですっ!報道ヘリ、既に目標上空・・・放送が始まっています!!」
「くっ・・・まさかこんなところで、あっちのドアが開くとは・・・
 碇、まさか・・・これもシナリオか・・・」
 
 同時刻、シェルター内。警報解除の報にゾロゾロと帰りかけた市民が、壁掛けのスクリーンの前に集まっている。
 
「あぁら奥様。やっぱり大きいと迫力が違いますわねぇ〜」
「そうですわねぇ、タクの亭主なんて、最近私のこと見向きもしなくて・・・」
「まぁ、おたくも?実は私のところも・・・」
 
 スクリーンの惨状を世間話のネタで片付ける、素敵な奥様たち。
 ドラム缶のような巨躯の林の中に、ちらちらとオサゲが揺れる。
 
「かあさん?かあさんなんだろっ!?
 やめてっ、やめてよぉ!!」
 
 必死にインダクション・レバーを動かすシンジ。
 地上の雑事が如何なるものであったとしても、彼の救いにはなり得ない。
 
「ちょっと!!ミサト?リツコ?どうしたって言うのよ、これ!!説明しなさいよぉ〜っ!!」
 
 まるでワケが判らず叫ぶアスカ。しかし、騒然とした発令所に、答えられるものは居なかった。
 
「初号機、腰部拘束具内に圧力発生・・・上昇していますっ、装甲が保ちませんっ!!」
「なんですって!?・・・まさかアレが・・・」
 
 マヤの報告に焦燥するリツコ。
 その呟きに、ミサトはいぶかしげな視線を送る。
  『わたしに知らされていない秘密があるのね?・・・エヴァって何なの・・・?』
 
 思考の海に沈むミサト。しかしそれは、マヤの絶叫によって破られた。
 
「限界ですっ!腰部拘束具、破損!!」
 
 バキィッ!!
 
 
 幾重にも重ねられた装甲が、破片をまき散らしながら飛んでいく。
 あとから現れたモノは・・・
 
「・・・アレが・・・エヴァ?」
 
「なんてものを・・・なんてものをコピーしたの、わたしたちは・・・」
 
 我を失う二人。
 スクリーンにモザイク入りで映し出されるのは、天を仰ぐ大口径のポジトロンライフル。
 妖しく笑う弐号機。
 誇らしげな初号機。
 
「ユイさん・・・あなた、やっぱり・・・そっちのケがあったのね?」
 
「ふふっ。ゲンちゃんも、私の下で可愛らしく啼いたものよ・・・」
 
 発令所のゲンドウ。
 いつものポーズで表情を隠しているが、机に伝わる振動でカタカタと湯飲みが回っている。
 
「ふっ、無様だな、碇。」
「もっ、問題ない・・・」
 
 強がるゲンドウの足元に、汗の海が拡がっていく・・・
 
「さあ、イクわよ、キョウコ!!」
 
 銃身に手を添え、狙いを定める初号機。
 
「おっけい!おっけい!!おおぉっけぇい!!!」
 
 すかさず三連呼な弐号機。
 
「やめてよぉ・・・やめてよぉ・・・」
 
 声から力を奪われたシンジ。
 
「ちょっと・・・うそでしょ・・・?
 ・・・リツコ!?ミサト!?・・・シンジ?シンジ・・・シンジィッ!!!」
 
 怯えるアスカ。必死に助けを求めるが、救いの手は現れない・・・
 
「イィィヤアァァァッ!!!!!!」
  アスカの叫びが、虚空に消えた。
 
 
 
 積年の鬱憤は、その解消に六時間を要した。
 救助され、身体検査を受けたシンジとアスカ。
 今は二人きり、飲食コーナーのベンチで、温かいココアを啜っている。
 
「・・・アスカ・・・」
「・・・許してよ、アスカ・・・」
 
 シンジの呼びかけに、しかし、アスカは応えない。
 俯いたその表情は前髪の影で伺えないが、両手で支えた紙コップから、震えるココアが溢れ出そうとしている。
 
「・・・お願いだから・・・許して、アスカ・・・」
 
 アスカの震えがとまった。
 おもむろに立ち上がり、握りしめた紙コップもそのままに、ビシィッとシンジを指さす。
 
「じょぉっだんじゃないわ!清純無垢なアタシの『初めて』が、あんなのであって良いワケェ!?
 いぃ〜えっ!!良い筈ないわっ、あんなコトはあってはならないのよ、間違ってるのよっ!!
 断固、やり直しを要求するッ!!!」
 
 決意に満ちた表情で、ポーズをキメるアスカ。
 頭からココアを浴びて、転げ回るシンジ。
 
「ひどいよ、アスカ・・・」
 
 涙目のシンジに、容赦のないアスカの激がとぶ。
 
「ひどいのはアンタでしょっ、このバカシンジ!
 さあ、行くのよ、ヤルのよ、イクのよっ!!
 あんたのママに十ニ回もイカされたんだから、アンタは責任とって、三十六回イカせなさいっ!!」
「ムリだよ、そんなぁ・・・アスカ、許してぇぇぇ・・・」
 
 シンジを引きずって家路を急ぐアスカ。
 その襟元には過剰シンクロがもたらした、桜の散花を思わせる数え切れないキスマーク。
 
 
補記:
 シンジの桜も盛大に散った。
 
もひとつ補記:
 第一中学校で、メガネから当日の録画ビデオを買い求めるオサゲの姿が目撃された。
 
でがらし補記:
 ケイジ内。初号機の前で頬を赤らめる蒼銀の姿が、目撃されたとかしないとか・・・
 
 
 
 
 んふふ・・・わたし、キレイ?
 
 
 

kuneru36@olive.freemail.ne.jp

なおのコメント(^ー^)/

 ユイさん、キョウコさん。暴走してます……(笑)
 ええ、いい具合に。(爆)
 でも、シンちゃんも……36回なんて。(滝汗)


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