僅かに小枝の跳ぜる音が、凍り付いたような時の中で唯一の『命』であった。
紅い瞳の奥で、炎の赤い舌が、チロチロと揺れている。
焚き火を挟んだ対面に座する少年の姿は、炎の強い輝きに遮られ・・・彼女の瞳に映る事は無かった。
「綾波・・・。」
少年の放つ短い言葉・・・少女の名前。
ただそれだけを音にするために、彼はどれだけの勇気を振り絞ったのか。
しかし、零下の時を刻む少女に、その熱は届かない。
彼女はただ、己が手の内に黄金色を支えたまま、創世の史を見つめ続けた女神像のごとく佇んでいた。
「綾波・・・。」
少年は再び口を開く。
戦いの中で産声をあげた絆は、平和な世が育む。
厳しい寒風とも例えるべき『あの』時間を、つぼみの堅さで耐え抜いた少女は、巡る季節の中で緩やかに綻んだ。
春の午後、柔らかい日差しに溶け込む様な優しい微笑み。
碧き光が天球を包む真夏の湖畔では、初めて耳にした彼女の笑い声に、太陽を凌駕する輝きを見た。
秋・・・紅葉の散る姿が誘った、切ない迄に美しい、真珠の雫。
冬であればこそ染みわたる、分け合ったマフラーの幸せな温もり・・・。
やがて可憐な花と咲いた美しい少女。
・・・なのに。
「僕、何も聞かないよ。」
彼女は今。
「僕、綾波が何をしようとも、君の事が好きだから・・・。」
再び、極北の氷に囚われてしまった。
「だから、ね?元気をだしてよ。」
少年の微笑みすら、凍て付く銀面の上を滑り去るばかり・・・。
軽い溜め息を一つ吐き出して、少年は立ち上がった。
二人を阻む炎を迂回して、少女の背後に回り込み。
「・・・綾波・・・。」
蹲る彼女を、そっと抱きしめる。
少年の頬は赤く染まるが、少女の表情は変わらない。
炎に炙られた正面に反して、彼女の背中は冷え切っていた。
華奢な身体を包み込む、成長した少年の胸板。
己が持つ全てを懸けて、少女に温もりを与えたい・・・。
少年の願いは、白磁のごとき頬への接吻となった。
「・・・碇・・・くん?」
少女の心は、頬に感じる温もりの優しさに溶け出す。
「碇、くん・・・。」
「良かった、綾波・・・。
僕、何も聞かなかったから・・・。
何があっても、綾波が好きだから・・・。」
「・・・嬉しい。」
少しだけ名残惜しそうに、掌中の黄金色から右手を放し、少年の頬へ静かに添える。
「わたしも・・・碇くんが・・・好き。」
互いの瞳に自身が映る幸せ。
唇の距離も、感情の高ぶる様を反映して急速に縮まる・・・が。
ぷぅ。
微かに漏れ聞こえた音。
顔色も蒼白く、瞬時に時を止める少女。
「綾波?・・・あやなみぃ〜。」
そして、肩を落とす少年。
「・・・オナラなんかで嫌ったりしないよぉぉぉぉぉっ!!」
やおら天を見上げた少年の叫びを。
焚き火から漂う美味しそうな芋の匂いが、優しく包んだ・・・。
ふっ。(/_\)
レイちゃんのだったら、たとえお○らだろうと、◆△○だろうと、$%#だろうとぉぉぉぉぉ!(爆)
――どこかで書いたのとおんなじ感想ですな。(汗)
とにかく、これで「R」は12個目。(^-^)/
いつも思うのですが、
喰う寝る36さんの書くレイちゃんって、なんだかとっても らぶりぃ♪
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