喰う寝る36さんの
KISSの温度「R」Edition 12th

 僅かに小枝の跳ぜる音が、凍り付いたような時の中で唯一の『命』であった。
 紅い瞳の奥で、炎の赤い舌が、チロチロと揺れている。
 焚き火を挟んだ対面に座する少年の姿は、炎の強い輝きに遮られ・・・彼女の瞳に映る事は無かった。
 
「綾波・・・。」
 
 少年の放つ短い言葉・・・少女の名前。
 ただそれだけを音にするために、彼はどれだけの勇気を振り絞ったのか。
 しかし、零下の時を刻む少女に、その熱は届かない。
 彼女はただ、己が手の内に黄金色を支えたまま、創世の史を見つめ続けた女神像のごとく佇んでいた。
 
「綾波・・・。」
 
 少年は再び口を開く。
 
 戦いの中で産声をあげた絆は、平和な世が育む。
 厳しい寒風とも例えるべき『あの』時間を、つぼみの堅さで耐え抜いた少女は、巡る季節の中で緩やかに綻んだ。
 
 春の午後、柔らかい日差しに溶け込む様な優しい微笑み。
 碧き光が天球を包む真夏の湖畔では、初めて耳にした彼女の笑い声に、太陽を凌駕する輝きを見た。
 秋・・・紅葉の散る姿が誘った、切ない迄に美しい、真珠の雫。
 冬であればこそ染みわたる、分け合ったマフラーの幸せな温もり・・・。
 
 やがて可憐な花と咲いた美しい少女。
 
 ・・・なのに。
 
「僕、何も聞かないよ。」
 
 彼女は今。
 
「僕、綾波が何をしようとも、君の事が好きだから・・・。」
 
 再び、極北の氷に囚われてしまった。
 
「だから、ね?元気をだしてよ。」
 
 少年の微笑みすら、凍て付く銀面の上を滑り去るばかり・・・。
 
 
 
 軽い溜め息を一つ吐き出して、少年は立ち上がった。
 二人を阻む炎を迂回して、少女の背後に回り込み。
 
「・・・綾波・・・。」
 
 蹲る彼女を、そっと抱きしめる。
 
 少年の頬は赤く染まるが、少女の表情は変わらない。
 炎に炙られた正面に反して、彼女の背中は冷え切っていた。
 華奢な身体を包み込む、成長した少年の胸板。
 己が持つ全てを懸けて、少女に温もりを与えたい・・・。
 少年の願いは、白磁のごとき頬への接吻となった。
 
 
「・・・碇・・・くん?」
 
 少女の心は、頬に感じる温もりの優しさに溶け出す。
 
「碇、くん・・・。」
 
「良かった、綾波・・・。
 僕、何も聞かなかったから・・・。
 何があっても、綾波が好きだから・・・。」
 
「・・・嬉しい。」
 
 少しだけ名残惜しそうに、掌中の黄金色から右手を放し、少年の頬へ静かに添える。
 
「わたしも・・・碇くんが・・・好き。」
 
 互いの瞳に自身が映る幸せ。
 唇の距離も、感情の高ぶる様を反映して急速に縮まる・・・が。
 
 
 
 ぷぅ。
 
 
 
 微かに漏れ聞こえた音。
 顔色も蒼白く、瞬時に時を止める少女。
 
「綾波?・・・あやなみぃ〜。」
 
 そして、肩を落とす少年。
 
「・・・オナラなんかで嫌ったりしないよぉぉぉぉぉっ!!」
 
 やおら天を見上げた少年の叫びを。
 
 焚き火から漂う美味しそうな芋の匂いが、優しく包んだ・・・。
 
 
 


 ふっ。(/_\)
 レイちゃんのだったら、たとえお○らだろうと、◆△○だろうと、$%#だろうとぉぉぉぉぉ!(爆)
 ――どこかで書いたのとおんなじ感想ですな。(汗)
 とにかく、これで「R」は12個目。(^-^)/
 いつも思うのですが、
 喰う寝る36さんの書くレイちゃんって、なんだかとっても らぶりぃ♪
 
 
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