「綾波・・・今夜も会えたね・・・」
上弦の月が頼りなく照らす湖の畔。
微かにさざめく波間に、覗いては消える赤い電光。
湖底深くに横たわるジオフロントの為れの果てを眼下に控え、シンジは再会の喜びに胸を暖めていた。
髪はパサつき、頬はこけ・・・
やつれ果てたその笑顔は、しかし安らいだものだった。
「見てよ、あの灯りを。
・・・僕達が戦った意味は、今じゃもう判らないけれど・・・
僕達が守ろうとした街は、たくさんの思い出を飲み込んだまま、どこかに消えてしまったけど・・・
でも、あの灯りが見えるよね・・・
あそこにネルフがあったんだ・・・
明るかったアスカも、冷たいけど優しかった綾波もッ!?」
にわかに沸き上がった嗚咽に、肩を震わせ耐えるシンジ。
湖を渡る一陣の風。
湖畔の木々を揺らし、その道筋を示すかのように、サァッ・・・と、ざわめきを残しては消えてゆく。
「ごめんよ・・・心配しちゃうよね、こんな僕じゃ・・・
でも、綾波・・・
もう、駄目なんだ・・・
こうやって、月を見上げる事でしか・・・
あの頃のきみを思い出す事が出来ないんだ・・・」
頬を濡らす涙に気付いたのか、シャツの袖で顔を拭う。
「もう・・・くっ・・・
抱きしめることも・・・出来ないんだ・・・」
湖の中に歩を進めるシンジ。
一歩・・・二歩・・・三歩・・・
ふくらはぎの半ばまでを湖面に埋めたシンジは、両手のひらを静かに沈め、一掬いの水を胸の前に掲げた。
揺れて輝く水鏡。そこには、確かに映る、月の影・・・
「だから綾波・・・
せめて、キスだけ受け止めて・・・」
震える指が、影の形を壊さぬよう・・・
静かに・・・静かに顔を寄せる。
「綾波・・・」
「呼んだ〜?しんちゃん☆」
周囲の静寂を5キロ四方は吹き飛ばす、明るく元気な弾む声。
「ンもぅッ!!シャワーが無いからって、こんなトコまで来なくてもいいじゃない!!」
「レ・・・レイ?」
「ホ〜ント、探しちゃったんだからねっ!!
せっかく寝付いたナオまで、『ぱぱ〜ぱぱ〜』って泣き出すしぃ〜」
「いや、だって・・・もう五回も・・・」
「ぜぇんぜん足りないわよぉ、それっくらいじゃア!!
鈴原くんのトコなんて、もう三人目だよぉ!?
今年中にゼッッッタイ!!
二人目を作るんだからっ!!」
「いや、だからって・・・
キャンプ場に来てまで、そんなに激しくするコトないじゃないかぁ・・・」
「なぁあに言ってんのぉ、せっかくの萌えるしちゅえ〜しょんなんだもん☆
そだ、今度はテニスウェアでシようよ♪
もち、アンスコはぁ、ぶ・る・まっ☆ きゃぁ〜っ、しんちゃんのえっちぃ!!」
「・・・僕はそんなマニアじゃないよぉ・・・」
セミロングの銀髪をポニーテールにまとめ、白磁を思わせる白肌を真紅に染める美女。
明るいけれど、もはや必ずしも優しいとは断言出来ない彼女こそ、補完された綾波レイ。
苦手な筈の動物性蛋白質を毎晩た〜っぷりと摂取し、アスカはおろか、乳牛ミサトすら歯牙にもかけぬナイス・バディ。
彼女を娶るこそ、武門の誉れ!男子の本懐!!・・・とシンジが喜んだのは一週間・・・
鏡の中で息を吐く、夜毎やつれるおのれの姿。
『吸血鬼って、ニンニクは嫌いじゃなかったの・・・』
ぼやくシンジとは裏腹に、ニンニクあ〜んどタンパク質でスタミナ武装もばっちりレイ。
「ささっ、ナオはアスカに預けたしぃ〜、今夜のノルマはあと十回よっ、し・ん・ちゃん♪」
まるで猫の仔をつまむようにシンジの首根っこをひっつかんで、テントめがけてすきっぷレイ。
シンジの足は地面を求めながら、ぶらんぶらんと宙をさまよっている。
「あの頃の綾波はどこに行ったんだよぉ〜!!」
「いないよ?だってわたし、碇だもん♪」
「こんなのって・・・こんなのってないよ・・・」
ぶぅわっ!!と涙を溢れさせ。
「誰かぼくにっ!・・・やさしくしてよおっ!!・・・してよぉ・・・してよぉ・・・してよぉ・・・」
月に吠えるシンジ。
魂を裂くようなその絶叫は、微かな木霊を残しながら、おぼろ月夜に優しく呑まれていく・・・
もののついで。
「なんでアタシの扱いがこうなのよぉ・・・」
独り身を嘆いて不貞寝中のアスカ。目覚めのケリとともに子守りを押しつけられ・・・
ズタボロにされた寝袋と、キャッキャとはしゃぐナオを、呆然と眺めていた・・・
なおのコメント(^ー^)/
喰う寝る36さんに、アスカさんの待遇改善を要求する!(爆)
……嘘です。嘘ですってばぁ(笑)
そうそう、管理人を出演させて頂いてありがとうございます。(^-^)/
レイちゃんがママですか……いいかも(爆)