男の唇に伝わる甘い味わい。
みずみずしい弾力を唇の奥に吸い込みながら、その甘さに感嘆する。
「むぅ・・・いつ味わっても良いものだ・・・」
高すぎる程の天井が、その広大な拡がりによってむしろ低く感じるほどの・・・
ここは司令執務室。
常ならば部屋の主に付き従う邪魔者は、その主の策略によってケイジへと払われている。
「司令、舌を入れないでください・・・」
白磁のごとき頬を、微かに紅潮させた少女。
その口調は冷静ではあったが、瞳に揺れる動揺は隠しようも無かった。
「ふっ・・・レイ、嫌いだと言うのか?」
「いえ・・・でも恥ずかしくて・・・」
「恥ずかしい?・・・それはヒトという種の証明だ。」
「司令・・・」
「時に、シンジはもう食べたのか?」
「いいえ。・・・碇くん、苦手だから・・・」
「シンジにはこの味は早すぎるか・・・
どれ、今ひとたび味わうとしよう・・・」
「し・・・司令・・・」
痩身に似合わぬ力強い手が、更なる甘美を求めて差し延べられる。
と、そのとき。
「とうさん!!」
耐爆構造の重い扉を荒々しく跳ね開け、飛び込んできた少年。
怒りの表情を顔に貼りつけ、呼気の乱れもそのままに叫んだ。
「また隠れて食べてたねっ!?」
「い・・・碇くん・・・!?」
意外な人物の乱入に驚く少女。しかし、その見開かれた瞳には、喜びの色が強い。
「シンジッ?・・・こ、これは・・・」
対して、少年の属する組織に於いて、その序列に隔絶の優位を誇る男は狼狽の色を露わにしていた。
男が握りしめるのは『こんにゃくゼリー』
その甘さに耽溺するあまり、その小さな容器の奥底まで舐め尽くす食べっぷり。
立場をわきまえぬ情けない姿を苦々しく思った冬月によって、禁止令が出されていた筈だが・・・。
「ごめんなさい、碇くん。司令が泣いて頼むものだから・・・」
「レ、レイィィ!!」
どうやら、レイに泣きついて買ってきて貰ったらしい。
「もう!レイはとうさんには甘いんだから・・・」
「ごめんなさい、碇くん。・・・でも、お義父さんになるヒトだもの・・・」
「「レ、レィィイイ!?」」
親子の証、無意識のシンクロ。それを意に介さず、少女は続けた。
「おわびに、もっと甘いモノ・・・」
ちゅっ・・・
少年の唇に一瞬だけ触れた、柔らかな感触。
闇をも照らさんばかりに赤熱する少年を室外へと引きずりながら、少女は振り返って一言。
「・・・もう・・・ダメなの。」
後には、こんにゃくぜりーの入手元を絶たれて黄昏るオヤヂがひとり・・・
以上です。では、これからも楽しみにしてますね。
なおのコメント(^ー^)/
喰う寝る36さんから、初キス (滝汗) を頂いてしまいました。(^-^)/
ありがとうございます。(^-^)/
むう。やはりこのシリーズでは、主役はゲンドウなのか?!(爆)
ついつい、某D氏の「G」シリーズを思い出して、レイちゃんまでゲンドウの魔の手がっ!? っと思ってしまいました。(汗)
最後はこの展開でよかった〜(笑)