喰う寝る36さんの
KISSの温度「R」Edition

 男の唇に伝わる甘い味わい。
 みずみずしい弾力を唇の奥に吸い込みながら、その甘さに感嘆する。
「むぅ・・・いつ味わっても良いものだ・・・」
 高すぎる程の天井が、その広大な拡がりによってむしろ低く感じるほどの・・・
 ここは司令執務室。
 常ならば部屋の主に付き従う邪魔者は、その主の策略によってケイジへと払われている。
「司令、舌を入れないでください・・・」
 白磁のごとき頬を、微かに紅潮させた少女。
 その口調は冷静ではあったが、瞳に揺れる動揺は隠しようも無かった。
「ふっ・・・レイ、嫌いだと言うのか?」
「いえ・・・でも恥ずかしくて・・・」
「恥ずかしい?・・・それはヒトという種の証明だ。」
「司令・・・」
「時に、シンジはもう食べたのか?」
「いいえ。・・・碇くん、苦手だから・・・」
「シンジにはこの味は早すぎるか・・・
 どれ、今ひとたび味わうとしよう・・・」
「し・・・司令・・・」
 痩身に似合わぬ力強い手が、更なる甘美を求めて差し延べられる。
 と、そのとき。
「とうさん!!」
 耐爆構造の重い扉を荒々しく跳ね開け、飛び込んできた少年。
 怒りの表情を顔に貼りつけ、呼気の乱れもそのままに叫んだ。
「また隠れて食べてたねっ!?」
「い・・・碇くん・・・!?」
 意外な人物の乱入に驚く少女。しかし、その見開かれた瞳には、喜びの色が強い。
「シンジッ?・・・こ、これは・・・」
 対して、少年の属する組織に於いて、その序列に隔絶の優位を誇る男は狼狽の色を露わにしていた。
 男が握りしめるのは『こんにゃくゼリー』
 その甘さに耽溺するあまり、その小さな容器の奥底まで舐め尽くす食べっぷり。
 立場をわきまえぬ情けない姿を苦々しく思った冬月によって、禁止令が出されていた筈だが・・・。
「ごめんなさい、碇くん。司令が泣いて頼むものだから・・・」
「レ、レイィィ!!」
 どうやら、レイに泣きついて買ってきて貰ったらしい。
「もう!レイはとうさんには甘いんだから・・・」
「ごめんなさい、碇くん。・・・でも、お義父さんになるヒトだもの・・・」
「「レ、レィィイイ!?」」
 親子の証、無意識のシンクロ。それを意に介さず、少女は続けた。
「おわびに、もっと甘いモノ・・・」
 
  ちゅっ・・・
 
 少年の唇に一瞬だけ触れた、柔らかな感触。
 闇をも照らさんばかりに赤熱する少年を室外へと引きずりながら、少女は振り返って一言。
「・・・もう・・・ダメなの。」
 後には、こんにゃくぜりーの入手元を絶たれて黄昏るオヤヂがひとり・・・
 
 
 以上です。では、これからも楽しみにしてますね。
 
 

kuneru36@olive.freemail.ne.jp

なおのコメント(^ー^)/

 喰う寝る36さんから、初キス(ファーストキス) (滝汗) を頂いてしまいました。(^-^)/
 ありがとうございます。(^-^)/
 むう。やはりこのシリーズでは、主役はゲンドウなのか?!(爆)
 ついつい、某D氏の「G」シリーズを思い出して、レイちゃんまでゲンドウの魔の手がっ!? っと思ってしまいました。(汗)
 最後はこの展開でよかった〜(笑)


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