あかし


 どうぞ、はいって・・・
 
 あの日から、どれだけの時間が過ぎたのだろう?
 長い間コンクリートが剥き出しだった、パステル・イエローの部屋に向かう廊下も。
 
「へぇ・・・レイって、良い趣味をしてるんだね? 」
 
 限りなく白に近い、淡い緑に覆われている。
 
 そう? ・・・ありがとう
 
 ほんとうに、あれからどれだけの時間が過ぎたのだろう?
 あの日以来初めて、この部屋はわたし以外のヒトを受け入れるのだ。
 
「・・・じゃあ、はじめようか? 」
 
 そして、わたしの新しい生活が始まる。
 
 ・・・ヒトは、群れなくては生きていけないから・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「それにしても、レイがこの部屋をまだ使っていたなんてね。・・・どうして今まで教えてくれなかったの? 」
 
 ごめんなさい。あなたには一生教えてあげられないの。
 
「・・・そうなんだ。理由があるんだね? 」
 
 ええ・・・ あなたにだけは、決して言えないの
 
「・・・どうして・・・僕だけ、なの? 」
 
 だって、悲劇のヒロインごっこで、毎年あなたを殺していたなんて・・・
 
「レイ・・・声に出てるよ? 」
 
 
 
 
 
 新居に佇む二人の間を、重い沈黙が支配した・・・あうぅ・・・
 
 
 
 
 
 
 
 


管理人のコメント
 あかしの続編です。
 まさか、レイちゃんが悲劇のヒロインごっこをしていたなんて。(^^;
 しかし、喰う寝る36さんの作品は、色の使いが細やかですね。
 清楚として、レイちゃんにぴったりな印象を持ちました。
 「限りなく白に近い、淡い緑」
 この部分、好きです♪
 僕も修行中ですが……なかなか。(^^;
 喰う寝る36さん、素敵な作品をありがとうございました♪
 
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