「Luna Blu」様、2周年記念SS
「2周年記念日のKISSの温度は?」 by イイペーコー
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かきかきかきこ。
「ふぅ・・・遂に明日で2周年の記念日だと言うのに」
そう・・・その記念すべき良き日の前の晩、アタシは、今や日課となっているカレンダーへの“×印”を書き込みながらため息を洩らした。
まずい。 まずいわ!
え? ナニが不味いのかって?
食事への不満?
やーねぇー、もちろん、シンジの手料理はいつも美味しいわよ!
そうぢゃなくって!
いいコト?! 明日という記念日を迎えると、アタシのシンジが出会ってから2年という歳月が経過した事になるの!
そう・・・あの、ロマンチックな太平洋のクルージンクの最中に、船上で運命の出会いを果たした日から、まる2年が経つの☆
なに? ちょっと事実と違う・・・ですって?
いいのよっ! 計画は予定通りよ! 2%の誤差もないわっ!
はぁー・・・ホント、あの日から2年が経つのよねぇ。
それなのに! それなのに!
この晴れの良き日に“るな”とか“ぶる”とかいうサイトは40万ものヒットを迎えようとしているのにぃ!
なんで、シンジはアタシにナニもしてこないのよっ!
これぢゃ、ヒットさせようにもカスリもしないわよう!(謎)
この人類史上最高の美少女と同じ屋根の下で、ずーっと一緒に暮らしてんのよ!
一生懸命に恥ずかしさに耐えながら、毎日のようにノーブラ、タンクトップという艶姿で「第2次シンジ悩殺計画」を遂行しているのに!
まる2年が勃つのに、なんでシンジはタタないのよっ!
むう・・・いけないわ。
あんまり、おしゃべりが過ぎると、アタシの清楚で可憐なイメージにコンマ1ミリ程度のキズが付いてしまう可能性があるわね。
もう少し現状を冷静に分析し、傾向と対策を検討する必要があるわね。
まずは・・・やっぱり、キスの回数よね(ぽっ)
アタシは指折りしながら数えようとした・・・が!
あーん! 分かっているわよう! 指なんかで数えなくたって、1回しかないわよ!
しかもその直後に照れ隠しの為に、うがいまでしちゃったし(汗)
はう・・・アタシって、ホントにおバカよね。
・・・って、めげているヒマはないわ。
アタシとシンジとの熱愛ぶり(?)をしっかりと検証しないとね。
続いてはデートの回数♪ コレは多いわよ〜☆
なんせ、毎週の休日の度にシンジを連れ出しているもんね。
え? シンジには何と言ってデートに連れ出しているのかって?
やーねぇ、もちろん“買い物の荷物持ち”よっ!
・・・・・・・・・はっ! ひょっとしてシンジってば、デートって思っていないかも(汗)
あ、ありえるわ!
あの国宝級に鈍感なアイツのコトだもん。
文字通りに荷物持ちだと勘違いしているかもしれないわ!(汗)
やっぱりデートって言えば、白いワンピースとつばの広い白い帽子を身に付けて、芦ノ湖遊覧船&展望台&温泉巡りコースでないとマズイのかしら。
でもでもでもでも!
キスはたったの1回でも、たとえシンジがデートと思っていなくても!
この百戦錬磨の史上最強の美少女たる惣流・アスカ・ラングレーに敗北の二文字はありえないのよっ!
そう! あの奥さんとのアツアツぶりで、サイトの常連達を駆逐している○おさんにだって負けられないわ!
確か、な○さんってば2人の可愛い子供が居るんだったわよねっ!
上等ぢゃないの! それならアタシはシンジの子なら20人だって産んでみせるわよっ!
子供はいらないのじゃなかったのか?・・・ですって?
そんな有史以前のコトなんて覚えてないわね。
アタシは今という世界を生きているんだから♪
さて、そんなコトよりも、まずはどうやってシンジをその気にさせるかよねぇ。
やっぱり、千里の道も一歩から。
20人の子作りも2度目のキスからよね♪
それもやっぱり明日が勝負ね!
アタシとシンジの大事な2周年という記念日に2度目の熱いキスを交わして、一気にシンジを陥落させて見せるわよっ!
その為にも今夜は早く眠っておいて、明日の為に体力を温存しておかなくっちゃ!
だってぇ・・・シンジってば、朝まで寝かせてくれないかもしれないし(ぽっ)
こうして、アタシは決戦となる明日を控えて、高ぶる気持ちを抑えながら、どうにか心地良い眠りにつくコトができたのだった・・・。
「さて・・・シンジ君、どうするつもりなの?」
「ど、どうするって言われても・・・」
ニタニタと笑みを浮かべながら肘鉄を当てるミサトさんの問いに、僕は答えに窮してしまう。
そう・・・僕とミサトさんは、アスカの部屋の前で彼女の独り言に聞き耳を立てていたんだ。
え? 盗み聞きは良くないって?
それはそうだけどさ・・・リビングに居ても聞こえてくるぐらいの大声で独り言を呟いているアスカも困ったものだと思うよ。
そう・・・アスカって、考えている事を口に出してしまうクセがあるんだ。
そして今夜は、その独り言の声があまりにも大きかったんで、何事かと心配して部屋の入口まで様子を窺いに来たという訳なんだ。
でも、まさか・・・アスカが、そんな事まで考えていたなんて・・・ちょっと、いや、かなり驚いた。
そりゃ、もちろん僕だってアスカの事は大好きだよ。
でも、こんな僕では彼女に不釣り合いだと、ずっと思っていたんだ。
アスカには・・・きっといつの日か、彼女に相応しい魅力的な男性が現われて、彼女の心をひとりじめにしてしまうんだ・・・って、ずっと思っていたんだ。
「アスカがあそこまで気持ちを固めているのよ。
だから、シンジ君もしっかりと答えてあげなくっちゃね♪」
僕の背中を後押しするように、ミサトさんが励ましてくれる。
もっとも、半分は楽しんでいるようだけどね。
でも、おかげで踏ん切りがついたような気がする。
明日は僕の方からアスカに告白しよう。
「僕、がんばります。
かなり時間は掛かると思いますけど・・・きっといつの日か、アスカの隣りに並んでも相応しいと言われる程の男になってみせます」
ちょっとだけ力強くそう宣言した僕に、ミサトさんは「今でもシンジ君はとっても魅力的よ」と笑顔で答えた後、こう続けたんだ。
「さ〜て! こういうコトは先手必勝よ!
明日はアスカがアヤシゲな作戦を実行に移す前に、シンジ君からアクションを起こすのよ!」
「そ、そういうものなんですか?」
「そういうものなのよ♪」
なんだかミサトさんってば、作戦部長として手腕を振っていた頃よりも活き活きと目を輝かせているような気がする。
ホント・・・やっぱり、アドバイスと言うより楽しんでいるんだろうな。
その期待に満ちたミサトさんの円らな瞳は、僕の何らかの行動について『言明しないと承知しないわよ』と雄弁に語っている。
「えっと・・・それじゃ、明日のなるべく早い時間に僕の方から告白します」
ぼそぼそとそう答えた僕に対して、ミサトさんはあからさまに不満の表情を露にする。
「だーめ! アスカはシンジ君とのセカンド・キスを熱望してるのよ!
もっとも、それ以上のコトも期待しているみたいだけどね」
「せ、セカンド・・・キス・・・ですか」
「あら? だって、さっきのアスカの話によれば、もうファーストキスは済ませちゃったみたいじゃないの。
いつの間に済ませちゃったのか、おねーさまとしてはそのシーンを見そこなったコトは残念な限りだケド、2人の記念すべき2周年記念日に交わすセカンド・キスだけは、絶対に拝ませてもらうわよん♪」
ど、どうやら冗談じゃないみたいだ。
この様子だと、隠し撮りするビデオカメラの設置場所まで考えているような感じだなぁ。
「そ、その・・・いきなりは、やっぱり恥ずかしいですから、例えば朝食に使うスプーン越しに間接的に・・・はダメですか?」
そんな妥協案を示した僕に、ミサトさんは大きく首を左右に振った。
「ナニを言ってんの、シンジ君っ!
スプーン越しに間接キスですって?
それじゃあ、あまりにも冷え切っているわ!」
「つ、冷たいんですか?」
「そう! 押しも押されぬアツアツでピチピチの16才のカップルに相応しい“Kissの温度”は、やっぱり寝起きに一発よ♪
眠り姫のアスカ王女を目覚めさせるのは、シンジ王子のあつーいクチヅケで☆・・・って、相場が決まってるの!」
「ね、寝起きに・・・“いっぱつ”・・・ですか?」
きっと僕は、これ以上ないぐらいに頬をリンゴのように真っ赤にしていたんだと思う。
からかいモードを全開にしたようなミサトさんの追撃の手が及んでしまった事は言うまでもないよね。
「やーねぇ、シンジ君♪ そっちの“一発”ぢゃないわよん♪
まだまだ2人は若いんだからね!
ソッチの方は、もうちょっとオトナになってから、ちゃんとセキニンを取れるようになってからにしてよねん☆」
けたけたと笑いだすミサトさん・・・。
でも、その笑顔の本当の意味は、戦いが無事に終って、僕やアスカに普通の日常が訪れた事を心の底から喜んでいるのだと思う。
「さぁ! 明日の朝は決戦よっ!」
えっと・・・心の底から喜んでいるのだと思うんだけど・・・・・・たぶん。
やっぱり、実は楽しんでいるのかな(汗)
そして・・・翌日。
眠り姫を目覚めさせる為に熱いくちづけをした王子様はと言えば・・・。
ぱっちーーん!!
「エッチ! ヘンタイ! チカンっ!
イキナリ、ナニすんのよっ!!(ぽっ)」
眠り姫からのきつーい“一発”を受けて、僕の頬は再びリンゴのように真っ赤に腫れあがってしまったんだ(汗)
そして・・・その一部始終をミサトさんに録画されて、数年後の結婚式の披露宴で、抜き打ちで上映されてしまう事なんて、この時はまだ知る由もなかったんだけど・・・まあ、幸せになれたんだからいいよね・・・うん。