それは日曜日の朝のこと

みんなで朝食を採り終えてお茶にしようとしていた時に玄関のベルが鳴った

「 は〜い どなたですか?」

シンジがドアを開けると そこには背中に赤ちゃんを背負った30代ほどの男性が立っていた

「 あぁ旦那さんじゃないですか、どうしました?」

男性はシンジの顔見知り。三人の子供達のパパで、上の男の子はふたりとも シンジの幼稚園に通っている。いうなれば お得意さんだ

「 碇さんっ!」

その男はシンジの手を両手で握ると 半泣きの顔をシンジに近づけた

「 お願いです、碇さんっ! この娘を、カオを夕方まで預かってくれませんかっ?」

「 …えっ!?」

「 実は僕の妻が… マイハニーが、身体の具合を悪くして病院に運ばれたんですっ!」

「 それは大変ですね…」

「 それですぐにでもこの僕が病院に行って 愛する妻の看病しようと思うんですが…

上の息子達ならともかく 産まれたばかりのカオと同時に妻を看るなんて とてもとても…

明日には実家の父や母が来る筈ですので 今日一日だけ この娘をお願いしたいのですが… 」

まるで神か仏にでもすがらんばかり

涙をうるうると流しながら シンジの腕を握り締める

「 わ、わかりました。今日一日くらいなら… 」

「 ありがとうございますっ!」

ぶわっ と盛大に涙を放出すると 背中に背負った赤ちゃん ミルクやオシメが詰まった手提げを渡す

そして

「 マイスイートハートーーーーッ!!! 今 行くからねっーーー!!! 」

叫びながら ドタドタと坂道を転げ降りていく

その後姿を見つめるシンジ

「 …相変わらずだな、あの人… 」

唖然と立ち尽くしていると その男性は坂の半分ほどで 急に引き返して来た

「 なんか忘れ物ですか?」

シンジが尋ねると

「 はい、大事な 大事なものを忘れるところでしたっ!」

荒い息で絶叫すると シンジの腕の中の赤ちゃんに顔を近づけた

…そして

「 カオーちゃんっっ! パパは行ってきまちゅからねぇー♪ 」

――― ぶちゅゅゅゅっっ

赤ちゃんのぷよぷよのほっぺに『行ってきますっのキス』

再び

「 愛する妻よぉーー、待ってろよぉぉーーーっ!!!」

雄叫びをあげながら走り去っていく

「 …なんなんだ、あの人は… 」

呆気にとられたシンジの顔を 

産まれて数ヶ月の女の子が不思議そうに見上げていた

 

 

 

マイ スイート ホーム

 愛しのベイビィー 

50万ヒット記念すぺしゃる

 

 

「 きゃあー、可愛いーっ!」

やっぱりと言おうか予測の範囲内と言うべきか シンジが赤ちゃんを連れてリビングに戻ると そんな声がとんだ

一番最初に来襲したのが この家で抜群の行動力を誇るアスカ

「 なになに、この子 どうしたの?」

「 あぁ 実は… 」

状況説明しようとしたシンジの言葉を わざと遮ったのは 朝食後ビール片手のミサト

「 まさか シンちゃんの隠し子じゃないでしょうね〜♪」

「 な、な、な、何言ってるんですかっ!」

「 『…この子は貴方との愛の結晶。でもこの子の本当の幸せを考えると貴方へ返すのが一番なのね。あぁ シンジさん、時々で良いから貴方を愛した馬鹿な女の事を思い出してねぇ〜』… なんてね♪」

くさい台詞を吐きながら ヨロヨロと芝居めいた動作でソファに倒れこむ

「 ミサトさんっ!」

「 『 所詮 私は日陰の女。物陰から貴方とこの子の幸せを見守っているわ… 』 」

ハンカチを口で咥えて 嘘泣きまでする始末

普通こんなくさい芝居に引っかかる人は居ないのだが、この家には該当者がふたり

「 シンジッ! ワイは見損なったでぇー 」

「 ふ、不潔っ! シンジ君はそんな人じゃないと思ってたのにー 」

トウジが拳を握り締めながら熱く語れば、マヤは強張った顔で絶叫

…ちなみにふたりの後ろではヒカリとリツコがそろってため息を吐いている

「 ミサトさんっ、馬鹿な事 言わないでくださいっ!」

シンジは大声で叱咤した。この場合素早くそして強く否定しないと、蒼い瞳と紅い瞳の奥様方がどんどん機嫌を悪くしていく。そうなったら回復させるのは一苦労だ

しかし

突然 声を張り上げたシンジに、赤ちゃんはその身体をピクンッと震わせる

…そして 当然

 

「 びぇぇぇぇーーーんっ!」

 

最初からとんでもない挨拶となってしまうのであった…

 

 

 

なんとか赤ちゃんを泣き止ませ 物置から昔使用していたベビーベットを引っ張り出すとリビングに設置、 赤ちゃんをそっと寝かせた

そのベビーベットに赤い髪の女の子と蒼い髪の男の子が ベッタリ、不思議そうに見つめている

「 ねぇレイママ、この子どうしたの?」

「 …今日一日預かったのよ… 」

「 ふぅ〜ん…なんて名前?」

「 カオちゃんって言うのよ… 」

「 …カオちゃんね 」

三日早く産まれた女の子は すらすらと発音出来たようだが

「 …ガオちゃん?」

赤い瞳の男の子は上手く口に出来ないようだ。その度に姉に訂正させられている

「 もーマオったら、『カオ』よ 」

「 カ、ガォ… 」

「 違うでしょ! 『 カ・オ 』 」

「 カ、カ、カ、カ… 『ガオ』ちゃん 」

「 だから 『ガオ』だってばぁー…あれ?」

小首を傾げるふたりの幼児。レイは小さく微笑むとその頭をそっと撫でる

自分の名前に反応したのか赤ちゃんがその黒い瞳を開くと、丁度それがマオの視線とぶつかった

じっと互いに見つめあう幼児と乳児。黒い無垢な瞳はまんまるに見開いて、透き通った紅い瞳から離さない

「 …レイママ 」

その瞳に魅入られたまま 男の子は母親を呼んだ

「 ガオちゃんがずっと僕を見ているの…僕の事 好きなのかな?」

「 …そうね、マオのこと 好きになったのかもね… 」

透明な言葉を紡ぐレイ。自分と同じ色の息子の髪を撫でると…

「 …マオはお兄ちゃんなんだから 優しくしてあげましょうね… 」

自分より小さな存在に心を打たれたのか それとも『お兄ちゃん』という言葉の響きが気に入ったのか、幼児は元気良く笑顔で応える

「 うんっ。 僕、ガオちゃんを大切にするよ♪」

…ベビーベットの周りを 優しい風が包んでいく…

 

 

―――ぷにゅっ

ぷくぷくした身体

手も足も本当に小さくて柔らかそう。先端についている爪なんてまるで米粒みたい

女の子は堪えきれず つい指でつつく

―――ぷにゅっ

なんとも言えない感触。それがとても心地良くて

なんだかとっても愛しくて 

   つんつん

―――ぷにゅぷにゅっ

「 えっへっへ…」

蒼い瞳の女の子の口元から笑みがこぼれる

「 あっ!? ガオちゃん いじめちゃ駄目ー 」

「 リオ いじめてないもんっ♪」

男の子の言葉に思わず頬を膨らませる女の子。口を尖らせて反論する

「 いじめたっ!」

「 いじめてないもんっ!」

「 うそつきぃー 」

「 うそつきじゃないもんっ!」

ふたりの子供の声は次第に高くなっていき それは赤ん坊の目を覚まさせた

…ぱちくりっ

つぶらな瞳が大きく開いた

一瞬 小さく身体を震わせると 段々顔がしかめっ面

「 ふぇっ…」

唇がクシャクシャに崩れていく

「 ふえっ…うえっ…」

玩具みたいな手が ギュッと握り締められて

「 うぇーんっ、ふえぇーん♪ 」

小さな口が大きく開く。そして盛大な泣き声へ

「 おっと いかん、いかんっ 」

その寸前

赤ちゃんの身体を黒い腕が抱き取った

「 うぐぅぅ えぐぅぅ♪」

くずる赤ん坊に 無骨だが優しい声

「 ん、どないしたんや?大丈夫やで…」

赤ちゃんの背中を軽く叩く

「 おっ、もしかして オシメか?」

再びベビーベットに戻すと 手馴れた様子でオムツとオムツカバーを剥ぎ取っていく

男の予想通り それはぐっしょり

「 おーいっ! 換えのオムツは どこにあるんや〜?」

「 あっ、こっちだよ 」

シンジが手提げから取り出すと 素早く赤ちゃんの柔らかいお尻の下に敷いた

「 よっしゃぁ〜 もう大丈夫やでぇ〜。どや、気持ちええやろ?」

顔で赤ん坊をあやしながら オムツの装着完了

ぐずり始めていた赤ちゃんの顔に笑顔が浮かんでくる

「 …アンタ、相変わらず 見事ね 」

アスカが感嘆の声を漏らすと 鈴原トウジは照れ臭そうに微笑んだ

「 まっ、おかんの代わりに妹の世話したんは ワイやからな 」

 

 

「 きゃっ、きゃぁ♪」

赤ん坊から笑い声があがる度に 歓声がわいた

「 可愛いーっ!」

「 カオ―ッ、カオォォ―ッ!」

「 ガオー、ガオーッ!」

「 だから違うってば!」

「 こら、アンタ達っ! うるさくするんだったら 赤ちゃん見せないわよっ!」

アスカの叱咤に大人しくなる子供達。シンジの顔にも苦笑が浮かぶ

そこに朝食の後片付けを終えたヒカリがやってくる。哺乳瓶を消毒してミルクを詰めてきた

「 はいっ、碇くん。出来たわよ 」

シンジに渡そうとすると 突然脇からマナが立ち上がった

「 あぁー、それ 私がやりたいーっ!」

大声あげて哺乳瓶に手を伸ばす

しかし

「 アンタは駄目っ!」

アスカの蒼い瞳がマナの前に立ち塞がった

「 なんでよー、良いじゃなーいっ?」

抗議するマナを冷たく見下ろす

「 アンタ うちの子供達に何したのか もう忘れたの? 抱いていて何回も落っことしたのはどこの誰よ?」

一瞬 怯むマナ。しかし反撃

「 アスカだってお風呂で落っことした事 あったじゃなーい 」

「 あ、あれは…お湯の中だから問題ないのよ 」

アスカの額に流れる 汗 ひとすじ

「 真っ青になって動揺してた癖に…」

傷を更に深くえぐろうとするマナ。だか結局それはアスカを逆上させただけだった

「 うるさいーっ!とにかくアンタは赤ちゃんに触るの禁止。他所様からの預かりものだから怪我なんてさせられないでしょ!」

「 そんなぁ〜 」

なおも諦めきれないマナに痛恨の一撃

「 子育てに関しちゃ アンタはミサトレベルなんだからっ!」

「 ひ、酷い…」

 よよよ と泣き崩れるマナ。しかしその口撃の余波は当然飛び火する

「 ぶほっ!」

アスカ達の騒動を良い酒の肴としてしたミサトが 口からビールを噴き出す

「 き、汚ーいっ 」

「 ミサトッ! あなた何するのよっ 」

ヒカリやリツコの抗議にもかまわず 文字通り口から泡を吹き出しながら アスカとマナに詰め寄った

「 ちょっ、ちょっと 何でそれでアタシを引き合いに出すのよっ!」

一方 一度逆上してしまったアスカはやけに挑戦的。ミサトに冷たい視線を送ると

「 あら、散歩の途中で子供達を公園に置き忘れて ひとりで帰ってきたのは どこの誰でしたかしら?」

「 うぐっ 」

ミサトが絶句すると 何故かマナも口を出す

「 そうそう 酔っ払って子供を踏んづけた事もあったよねぇ〜 」

「 ぐけっ 」

「 オムツの取替えも満足に出来ず 結局 風邪を引かしてしまった人も居たわよ 」

「 … 」

「 … 」

これにはミサトのまならず マナも沈黙

「 最悪だったのは ミサトの作った離乳食。…まったく カレー味の離乳食なんか作らないでよっ!」

アスカの咆哮

実はこの事件には、匂いが気に入らなかったのか本能が危機を察知したのか ミサトの離乳食を嫌がる子供達の前で 『 変ね、こんなに美味しいのに…』と ミサト自身が味見をしてしまい自爆したというオチまでついている

「 ア、ア、アスカだって お馬さんごっこしてて子供達を振り落としたじゃないっ!」

「 そうよ、アスカだってミサトさん程じゃないけど結構酷い事してるわよ 」

「 ミサトと一緒にしないでよっ!」

「 アタシを引き合いに出すなっ!」

もう わちゃくちゃ

アスカ ミサト マナ といったこの家でも騒がしいトップスリーが ギャァギャァ叫びだす。

普通三人での口喧嘩となれば二対一という形になりそうだが 攻守次々と入り代わりしっちゃめっちゃかの罵り合いの場となった

リツコとマヤは紅茶のカップを持ったまま 地下室へと避難

トウジとヒカリ そしてレイは赤ちゃんと子供達を連れて 別室へと移動していく

「 …碇くん、後はよろしくね 」

ヒカリの言葉と共に残されてしまったシンジは 三大怪獣大決戦を前にして 人生の不合理を深く深く 考えるのであった…

 

 

 

 

 

 

午前も10時を過ぎたあたり

丘の上の屋敷の前に一台の車が停まった

かなり古い軽自動車で車体のあちこちに錆びが浮き出てボロボロの状態、普通ならとっくの昔に廃車になっているような車だ

その車から降り立ったのは 二人の老人と五羽の温泉ペンギン

そう。冬月とゲンドウ それにペンペン一家である

いつもの『釣り』に行ってきたようだが クーラーボックスを軽そうに持ち上げるところを見ると、今朝も釣果はたいした事ないだろう

…まぁ、金の無いゲンドウ達にとって 暇つぶしが最大の目的であるのだから、『予測の範囲内』 というところか

「 …ただいま帰った 」

少し疲れたような声をあげるゲンドウ。玄関の扉を開けると同時に ぐっと腰を降ろして防衛体勢へと移行する

『 お爺ちゃーん♪』と叫んで突撃してくる孫達に備えたのである

しかし その日はいつもの襲撃は無かった

「 ……むっ?」

一瞬 眉をひそめる。 孫達とのスキンシップが無くて少し寂しげ

だが、その孫達は

リビングの真ん中に布団を持ち出してきて すやすやとお昼寝中

無邪気な寝顔に ゲンドウの顔が一瞬ゆるんだ

「 …んっ?」

しかし すぐにリビングの中央に普段見慣れない『物体』を発見する。丁度 二人の孫の間に置かれていた それは…昔 使っていたベビーベット

「 …どうしてこんなものを?」

ぐいっ と覗き込むと白いタオルの中にピンクの蠢く物体を見つける

更に身体を乗り出すと そのピンクの物体は ぱちりっ と目を開いた

「 …みゅっ?」

「 …むっ?」

赤ちゃんとゲンドウのご対面

( な、なんでこんな所に赤ん坊が…?)

疑念が渦巻くゲンドウ

だが 赤ちゃんはその純真な…幼子特有の真っ直ぐな瞳で じっと ゲンドウを見つめ続ける

「 …うっ?」

髭の奥からうめき声が洩れる

しかし 赤ちゃんの瞳に魅入られた彼は、その身体を動かすことができない。その黒い瞳はゲンドウの魂までも見透かそうとするかのように ただじっと見据える

無邪気さ故に真実へと辿り着けるのだろうか

見つめ合う二人の前で 時が止まった

…が

中腰の無理な体勢はゲンドウの身体にかなりの負担を強いたらしく、腰と膝に痛みが走る

「 …ぐっ 」

小さなため息だった

しかしそれはその二人の間の不思議な空気を引き裂くのには充分で、ゲンドウが視線をずらした瞬間 赤ん坊の顔がくしゃくしゃに崩れていく

…そして

「 うぇぇぇぇーーーんっ! 」

高い高い泣き声

「 おっ、これはいかん 」

意味もなくアタフタする彼にその声は止められるはずもなく 昔孫達をあやした要領で、つい…

 

………にやりっ

 

「 びぇぇぇぇぇーーーーーんんんっ! 」

その『微笑み』を見た赤ん坊から更に大きな叫びとなって返ってきた

当然のことながら

「 あぁーあ、せっかく寝かせつけたのに…」

「 お爺ちゃんが 泣かせたーっ!」

「 ガオちゃん いじめちゃ駄目ーっ! 」

「 …碇、大人げないぞ…」

キッチンからシンジが、すぐ脇で寝ていた孫達が、そして後からやってきた冬月が 一斉に男を攻めたてた。泣き叫ぶ赤ちゃんとその側でウロウロするゲンドウという状況証拠では 有罪は確定

「 わ、私は何も…」

ゲンドウの弁解などなんの弁護にもならず 結局小さな声でぶつぶつ

シンジ達はそんなイジケオヤジなんかそっちのけ、赤ちゃんをあやしにかかる

「 リオやマオと同じことしただけなのに……」

なをも愚痴るゲンドウに シンジはちょっと冷たい声

 

「 父さんの顔に馴れるのに 最低三ヶ月かかるんだよ 」

 

 

 

 

30分後

その日も昼飯をたかろうとやって来たケンスケが 

部屋の片隅で背中を丸めて『のの字』を描くゲンドウの姿をカメラに写すことに成功した

『哀愁』と名づけられたその写真はとある小さな地方新聞の写真コンクールで 佳作を受賞する事になった

その時 発表を聞いたケンスケは

 

「 ……佳作ですか。やっぱりモデルかな……」

 

と、小さくコメントしたそうである

 

 

 

 

 

その後も赤ん坊は様々な騒動の原因を作った

……正確に言えば周りの大人や子供が騒いだのであが

誰が赤ちゃんにミルクをやるか

誰が赤ちゃんのオシメを換えるか

赤ちゃんを抱っこするのは?

お風呂に入れてあげるのは?

子守唄を歌ってあげるのは?

そして一緒に寝るのは?

「 きゃぁーん♪ かわいいーっ!」

「 えっへっへ プヨプヨねぇ 」

「 アスカママ、ずるいっ!」

「 カオちゃーんー こっちよぉーー 」

「 あはっ、笑った♪」

赤ちゃんが笑顔を見せる度に 周囲から歓声がとんだ

抱き上げると優しいミルクの匂い

つぶらな瞳は逸らすことなく ただ真っ直ぐに見つめる

お人形のような手足はプクプクと柔らかく膨れ なんとも心地良い

ご機嫌な笑顔は勿論だが、ちょっとした泣き顔さえも愛らしい。汚れの無い雫がポロポロとこぼれる様子は感動さえ覚える

…当然 泣かせた本人はみんなから責められる事になるのだが

日曜という事もあって 常に10人以上の人間がひしめくこの家の今日はまさに『赤ちゃんデー』 。朝からまるでお祭りのような騒ぎ

しかし

祭りはいつかは終わりを告げる

夕方になって赤ちゃんの父親と母親が迎えに来たのである

 

「 …本当、うちの人ったら大げさでして…」

多少顔色が悪いがそれでもしっかりとした足どりの母親が、深々と頭を下げながらシンジに苦笑を漏らした

「 ちょっと貧血でめまいがしただけなのに、救急車呼んだり 実家の両親に電話したりで…」

後ろを振り向くと親ばかの父親は甘ったるい声で 『 カオちゃーんっ、寂しかったでちゅかー』とさっきから頬ずり。夕方になって髭が伸びてきたであろう頬ですりすりされて 赤ちゃんはちょっと迷惑顔、しきりに父親から逃げようとしている

すぐ側の二人のお兄ちゃん達はそんな父親の愛情表現に慣れているのか あまり動揺の色がない。どちらかというと醒めた顔

将来 頼もしい子供になるのかもしれない

「 …あの人ったら…」

親ばか度120%を発揮している夫に 妻は小さなため息

「 …素敵なお父さんじゃないですか 」

シンジの言葉にもどこか白々しい空気が混じる

母親は丁寧なお礼の言葉を繰り返すと夫の所へと戻っていく

夕焼け色に染まった坂道を夫と妻 二人の幼児と赤ちゃんの五人がゆっくりと下っていく

坂の途中で家族全員で振り返り 手を振っている

シンジも思わず小さく手を振った。夕暮れの中に彼等の姿が少しずつ霞んでいく

「 …行っちゃったね 」

アスカがすっと シンジの脇に立った

「 ドタバタしたけど…でもなんか気持ちがいいなぁ 」

大きく伸びをした蒼い瞳が茜色の空を見上げる

「 ……本当ね 」

レイがシンジの隣に そっと寄り添う

紅い瞳が次第に小さくなっていく親子の姿を見つめ 優しく微笑んだ

「 ……私も今度は女の子が欲しい……」

レイの呟きを捉えたアスカは

にっこりと 意味ありげな笑顔

「 そうね、そろそろリオとマオにも妹か弟が出来てもいい頃ね 」

伸ばした手をシンジの右腕にからめる

「 …碇くん…」

レイがシンジの左肩にその頭を預けた

「 あっはっは……」

何故かシンジの口から洩れるのは乾いた笑い声

( ……そういえば 今日は日曜日だった )

不吉な予感が頭をよぎる。両脇には しっかと 奥さん達… まるで拘束するかのような

 

…どうやら無邪気な赤ちゃんは 最後にとんでもない置き土産をしていったのかもしれなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ども、どらこです

るなぶる50万ヒット おめでとうござますぅーー♪♪♪

同時に ちょっと遅れたけど

カオちゃん 誕生おめでとぅーーー

 

いやー、なおさんの顔がでれでれに溶けているのが目に見えるようです(笑)

仕事も大変らしいけど家族の為にも無理はせずに頑張ってください

 

赤ちゃんの目って本当に不思議です

スーパーなんかでふと視線があうと じっとこちらを見つめてきます

お母さんにおんぶされながら 頭だけ向けてくるんですよね

ひょっとして 『なんだ、こいつ?』と警戒しているのかもしれませんが(笑)

目を大きく見開いてまっすぐ見つめるあの瞳をのぞいていると

なんか不思議な気持ちになれます

そんな時は思わず笑顔になるんですよね

無垢な魂って 人を素直にさせるのかもしれませんね 

 

 


管理人のコメント
 管理人のコメントも久しぶりでございます。
 この度はLuna Blu 50万ヒット記念作品を、どらこさんから頂いてしまいました。
 最近はずっと更新がないこのサイトに、50万も来ていただけたなんて、どらこさんをはじめ、大切な作品を投稿していただいている方々がいればこそです。
 ありがとうございますっ♪
 
 今回は、謎の男が赤ちゃんを預けたことがきっかけで、いつものメンバーでいつもの騒動が始まります。
 僕はこの雰囲気が大好きで、特にリオとマオがカオを「が、がお…」(笑)って呼ぶシーンはほんわかとさせられますねー。
 
 >カオちゃん 誕生おめでとぅーーー
 ありがとうございます♪♪♪
 花音はすくすくと元気に育っていますよー。
 いったいどんな女の子になるんですかねー。
 髪の毛は青でも赤でもないので第一希望(?)はかなえられなくて残念ですが、いつか明後日から始まる日本最大のイベントに親子で参加できることを夢見て、しっかりとした子に育てますね。<おい
 
 ちなみに……
 このコメントは夜泣きで泣き止まない子供を膝に抱えながら書きました。
 ほほほ。
 
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