マイ スイート ホーム 

バレンタインすぺしゃる

 

 

パタパタパタ♪

廊下から小さな足音が近づいてきて キッチンで洗いものをしていたシンジが振り向くと、入り口の影から赤い小さな頭が こっちを覗き込む

「 ぱ〜ぱっ♪」

蒼い瞳をきらきらと輝かせた女の子が 幼い口調でシンジを呼んだ

「 ん、どうしたの リオ?」

濡れた手をタオルで拭きながら近寄ると 幼女はなにやら両手を後ろに隠して もじもじ

「 あのね・・・これ、あげる!」

ちっちな手の上に乗っていたのは ビニールに包まれた小さなチョコがひとつ

・・・いわゆる チロルチョコ

「 これを・・・僕に?」

「 うん♪ リオからパパへのプレゼントだよ 」

「 でも、これ・・・リオのおやつじゃないの?」

不審そうに娘の顔を見ていると なにやらぐいぐいとシャツを引っ張る手

見下ろすと いつのまに現れたのか 青い髪の男の子がシンジの気を引こうとやっきになっていた

「 どうしたの、マオ?」

膝を屈めて幼児と同じ視線になると、男の子はなにも言わずに ぐいっと手を突き出した

そこにあったのは2本のチョコポッキー

「 ・・・僕に?」

シンジの言葉に対して 男の子は軽く頭を縦に振るだけ

そんな父親の疑問に応えたのは 三日早く産まれた お姉さん

「 だって 今日はバレンタインなんでしょ♪」

「 ・・・そうか、14日か 」

やっと理解したシンジに 女の子は元気よく抱きつく

「 それでね、それでね。 リオはふわふわのクリームがいっぱいのケーキが欲しいの♪」

「 ・・・僕は ミニカー 」

「 イチゴもいっぱいあるといいなぁ〜」

「 ・・・消防車が欲しい 」

「 ちょっ、ちょっと 待って 」

殺到する子供達を押しどどめると シンジは尋ねてみた

「 なんだよ、それは?」

「 だって バレンタインに男の人にチョコをあげると お返しをしてくれるんでしょ♪」

「 ・・・一ヶ月たったら 三倍になるって・・・」

嬉しそうに顔を輝かせる子供達の前で シンジは思わず頭を抱えた

「 それって・・・ミサトさんでしょ?」

「「 うん♪ 」」

男の子と女の子の声はきれいに唱和したのである

 

 

 

 

 

 

 

 

「 まったく ミサトさんにも困ったよなぁ〜 」

夕食も済んで 部屋でくつろぎながらシンジはレイに愚痴をこぼしたりしてみせる

「 あんまり子供達にデタラメ教えるのもなぁ・・・明日 幼稚園で広がってなきゃいいけど・・・」

ぼやくシンジに対し レイはレモンティーを一口すすって

「 ・・・加持さん、一昨日から出張してるから・・・」

「 ・・・逃げたな、加持さん 」

はぁ とため息をつくシンジを レイの紅い瞳は温かく見つめている

「 ・・・大丈夫、私が明日 子供達に教えておくから・・・」

「 ありがとう 助かるよ、レイ 」

見つめ合う二人の顔に 柔らかな微笑みが浮かんでくる

・・・なんとなく いい雰囲気

しかし

パンッ

勢いよく扉が開かれ 部屋に入ってきたのは金色の髪をなびかせた絶世(自称)の美女

「 ヤッホー 来たわよ シンジー!」

魅力的な肢体を包むのは薄いピンクのネグリジェ

そして首には赤いリボンが巻かれている

「 うっふっふっ・・・今夜のバレンタインプレゼントは・・・あ・た・し♪」

妖艶な仕草をするアスカに対し シンジはなぜか引いていく

冷たい声を発したのは もうひとりの奥さん レイ

「 ・・・手抜きね 」

「 むっ、なんでよ?」

ぷっと頬を膨らませるアスカに 彼女はあくまでも冷静

「 ・・・去年も一昨年も同じだったじゃない・・・そもそも最初のバレンタインは市販のチョコケーキ 次の年は手作りのチョコ そして売っているチョコレートと 段々ランクが下がっていたわ・・・明らかな 手抜きね 」

「 うっさいわね! そういうアンタはどうなのよ?」

「 ・・・わたしはちゃんと買ってあるから 」

すっとテーブルに乗せたのは 青いリボンでラッピングされた四角い白い箱

しかしそれを見たアスカは 嘲りの顔

「 なによ、それ・・・駅前の店で特売してたやつじゃない 」

「 ・・・でも、わたしのには真心(まごころ)が添えられてあるから・・・」

ぎろりっと睨み返す

バチバチバチ

ふたりの奥さん達の視線は交差し バックに映るのは雷鳴の中で対峙する紅の獅子と白き虎

部屋中に立ち込める 一発即発の緊張感

「 だいたいなんでアンタがシンジの部屋に居るのよ?アンタの順番は水曜と土曜日じゃないのよ!」

「 ・・・それを言うなら今日は木曜日。火曜日でも金曜日でもないわ・・・アスカは今夜用事がない筈・・・」

じろりっと見つめ合う紅と蒼の瞳が 次第に熱さを増していく

爆発寸前で二人の間に割り込んだのは 夫であるシンジだった

「 わかった、わかったってば!じゃぁ 今日は三人一緒に寝ようよ。ねっ、ねっ 」

必死に宥めようとするシンジの言葉に ふたりの妻達の顔がみるみるうちに柔らかく変化

「 まっ、それで勘弁してやるわよ 」

「 ・・・問題ないわ・・・」

少しだけ染まった頬がなんとも愛らしい

二人を魅了する笑顔を浮かべながら シンジは内心でそっとため息を吐いた

 

『 まっ、今週は日曜日が二日あったと思えば いいんだから・・・』 

 

 

 


管理人のコメント
 本当に久しぶりのマイスイートホームです♪
 今回はバレンタインすぺしゃるということで、子供達と、奥様方であるアスカさんとレイちゃんからシンジ君にプレゼントがありました。
 でも子供達はお返しがお目当てのようです。
 ミサトさんはどこへ行っても、困ったちゃんなのですね。
 
 また今回のお話で、今まで明らかになっていなかった、シンジ君達の夜の生活の一部が明らかになりました。
 なるほど。そうなっていたのですね。


 いや、表を作るほどのことでもないですが。(笑)
 しかしこれによると、アスカさんの方がおいしいのではないかなぁ?
 (追記:すいません。日曜日は3人でしたね(^^;;;)
 でもなにより、うらやましいと思う反面、シンジ君の体力を心配してしまいます。
 
 なにはともあれ、どらこさん、ありがとうございました♪
 
 この作品を読んでいただいたみなさま。
 のあなたの気持ちを、メールにしたためてみませんか?
 みなさまの感想こそ物書きの力の源です。


 どらこさんのメールアドレスは seiriyu@e.jan.ne.jpです。

 さあ、じゃんじゃんメールを送ろう!

△INDEX