それはネルフが解体されて4年が経とうとした頃のこと

シンジ達チルドレンは、国連からの生活援助で貧しくも慎ましい生活を送っていたのだが

高校卒業と同時に、国連から援助打ち切りの知らせが送られたのである・・・

 

 

 

マイ・スイート・ホーム

 みんなの家

 

 

碇シンジ・・・ネルフ解体後、行き場所を無くし アスカやレイ、カヲルと共に共同生活を送っている

葛城ミサト・・・ネルフ解体後、職をなくし 覆面女子プロレスラーとして働いている

赤木リツコ・・・ネルフ解体後、マヤや青葉と共に ゲームソフト会社を興した

加持リョウジ・・・ネルフ解体後、スパイを廃業。マナ、ムサシ、ケイタと探偵事務所を開く

洞木ヒカリ・・・鈴原トウジと婚約、保母になる為の勉強をしてる

鈴原トウジ・・・大型運転免許を取って、運送会社に就職

相田ケンスケ・・・写真家の弟子となる

 

碇ゲンドウ・・・ゼーレとの戦い後、冬月と国連の査察を受ける。4年以上にも渡る査察が終わり 釈放されてみると、既にネルフは解体され ネルフの負債により破産していた

 

 

 

 

 

 

それは建築後20年は経った 古い木造の貸家だった

造りは外見を見てらすぐ判るほど安っぽく、とりあえず住めれば良いというような状態

壁なんかも薄っぺらく、人の声がよく洩れる

それは今日も・・・

 

「 いや〜、シンちゃんの料理はやっぱ美味いねぇ〜〜! 本当、久しぶり〜♪」

実に嬉しそうな女性の声。軽薄そうな響きの中にガツガツといった咀嚼音が混じっている

「 はい、これもどうぞ 」

穏やかな青年の声に 大きな歓声が湧き上がる

「 うっはぁー!サバの味噌煮♪ これ、これ!これよねぇ〜 」

「 確か大好物でしたよね、ミサトさん 」

調理人でもある彼は微笑を洩らすと、お代わりのご飯をよそった

 

10分後、その家の台所兼リビングでは お腹をパンパンに膨らませた女性・・・葛城ミサトが満足そうにうなっていた。幸せそうに腹部を撫でながら、青年に向かって意味ありげな視線を送る

青年・・・シンジは苦笑しながらも冷蔵庫を開け、350mlの缶ビールを取り出すと ミサトの前に置いた

「 一本だけですよ 」

「 サンキュ、シンちゃん♪ 」

プシュッと缶を開けると、そのまま喉に流し込む。半分ほど飲んだところで幸福そうなため息

「 ぷっはぁ〜〜 」

「 相変わらずですね、ミサトさん 」

ますますオヤジ臭くなったミサトに笑みをこぼしながら、シンジは目の前の緑茶をすすった

「 良いじゃない。シンちゃんのご飯って本当久しぶりなんだもの・・・」

瞳をトロリと潤ませながら、ミサトは残りのビールを飲み干す

そして気がついた様に周囲を見渡した

「 ・・・あれ!? アスカとレイは? 」

「 ちょっと・・・病院の方に。夕方には帰ってきますから・・・」

どことなく歯切れの悪いシンジの返事。ミサトは眼を細くしながら次の質問をした

「 ふぅ〜〜ん。で、あたしに話って何? 」

シンジは一瞬だけ下を見たが、顔を上げるとミサトに向かって身体を乗り出した

「 実はミサトさんに相談したい事が・・・・・・」

 

 

まぁ、ミサトにしてみれば聞かなくても大体の予想は出来ていた

使徒との戦い、ゼーレとの決戦を終えてなんとかサード・インパクトを阻止したネルフとチルドレン

しかし、『人類補完計画』に加担していた事実は拭えない

国連の主導の元に エヴァの完全凍結、そしてネルフの解体と決してその後の経過は彼等にとって好ましいものではなかった

何より一般の人々には『極悪組織ネルフ』のイメージが過大に流され、ネルフの旧職員達は自分の業績を誇るどころか ネルフに所属していた過去さえ隠して日々を送っている

当然、チルドレンの苦闘の歴史など 表に出る訳もなく、シンジ達は極めて『普通の高校生』として暮らしていた

・・・とはいってもやはり アスカはアスカらしく、レイはレイらしく、そして相変わらずシンジは鈍感であったのだが・・・

ミサトはその事に対しては何も異存はない

あれほどの戦いを潜り抜けてきたチルドレン

すべてが終わった今、本当に子供らしい 人間らしい年月を過ごしていくのは、彼等の『姉』としても大歓迎である

・・・ただ 一つの不安材料は

『 お金 』

 

ネルフ解体によって、『ネルフ基金』として預けていたお金が 総て回収不能となったのである

スーパーコンピューター『マギ』によって高利で運用され 3年後には倍になって帰ってくる筈の給料が・・・

勿論それはミサト達職員にとっても大きなダメージとなったが、子供達にとってはそれ以上

なんせ死と隣り合わせにして戦って得た筈の報酬が、泡の如く消え去ったのだ

又、拙い事に彼等には身寄りも無い

シンジの唯一の肉親である父親は取り調べで拘置中

アスカも父親との絆は断ち切られている

レイやカヲルに至っては 親さえ存在しない

ほとんど無一文状態になった彼等は、子供ゆえに働いて金を稼ぐ事さえ出来ない

子供達の未来に絶望的な暗雲がたちこめた

さすがに哀れに思ったのか国連の方から生活援助の話が持ち出され・・・半分は口止め料であるが・・・シンジ アスカ レイ カヲルの4人はこのボロ家を借りて共同で生活する道を見出したのである

 

が、万年金欠の国連がいつまでも援助を続けてくれる保障は どこにも無かった

それを見越した彼等は、高校生活を送りながら 毎日せっせとアルバイト三昧

シンジは日夜レストランで働きすっかり人気者となっている。アスカはウエイトレスしながら彼に寄ってくる女達を殲滅する毎日

レイも最初はウエイトレスをしていたのだが、接客商売には無理と判明し 次の手段として同人誌で稼ぐようになった。ただ、やっぱり願望が滲み出るのだろうか、本の内容は 『シンジ』と呼ばれる少年と『レイ』という名前の少年が繰り広げる 18禁なヤヲイだった

カヲルに至っては モデルとして成功し 今では世界を飛び回っている。仕事上の都合という事で貸家を出てマンションまで借りていた。勿論、家を出る時にシンジに同居を迫ったのだが 2人の少女の反撃にあい失敗。それでもめげずにシンジに『いつでも遊びに来て良いからね』等と誘っているそうだ

高校卒業後の進路としては、シンジとレイは大学へ アスカは今更大学でもなくキャリアウーマンとしてバリバリ働くといった計画をミサトは聞いていた

・・・カヲルに関してはもはやすっかり極楽トンボと化している

秋の涼しさが押し寄せてきた今日。六ヶ月後は卒業というチルドレン達から持ちかけられる相談といえば 何やら聞かなくても分りそうなのであった・・・のだが

思いがけないシンジの言葉に、ミサトは絶叫

 

「 に、妊娠ですってぇぇーーー 」

「 ミ、ミサトさん。声が大き過ぎます 」

「 そ、それで・・・どっちが アスカ? レイ? 」

「 それが・・・その・・・」

小さくなったシンジの声に、ミサトは耳を寄せる。そして再び絶叫

 

「 ふ、二人とも、同時にーーーーー 」

 

 

 

 

数秒の空白の後

ミサトはシンジをギロリッと睨みつけると 感情が抜け落ちたような冷たい声を出した

「 シンちゃん・・・ビール! 」

「 ・・・はっ?」

「 いいから、ビール飲ませて! 」

ミサトはマヌケ顔をさらすシンジの顔を再び睨む

顔面蒼白になったシンジが恐る恐るビールを渡すと、ものも言わずに一気に飲み干した

ダンッ

空になった缶をテーブルに叩きつけると、シンジの顔に鋭い視線を浴びせながら

「 とりあえず聞いておくけど・・・父親はどっちもシンちゃんよね?」

質問というよりは確認の言葉

シンジは一度だけ 小さく頭を上下に振る

「 ・・・・・・はい 」

「 やっぱり、そうか〜〜・・・・・・」

ミサトは深い大きなため息を吐いて 肩をがっくりと落とした

 

 

考えてみれは当然の結果かもしれない

元々 互いに死線を乗り越えてきた『戦友』

それもいわゆる『お年頃』の少年と少女

しかもお互い嫌いあっている訳でもない・・・どっちかというと 少女2人はかなり少年の事を気にしていた。それが一つ屋根の下に暮らして もう4年経つ。

起こるべきして起きた、と表現すべきなのだろうか

「 それにしても シンちゃんもうかつよね・・・」

にやり 悪魔の笑みを浮かべるが、青年は顔を真っ赤にして抗弁

呆れた事に そーゆー関係になったのが つい最近のこと

・・・と、言うよりは

「 アンタ、一体誰が好きなのよ? 」

「 ・・・わたし、もう 待てない・・・」

4年間必死にアピールしても全然気づかなかった青年のあまりの鈍感ぶりに ついに我慢の限界を超えてしまった2人の少女が、有無も言わさずに彼を押し倒してしまった とか

情けないといえばあまりにも情けないシンジの告白に、ミサトは頭を抱える

「 ・・・シンちゃん。あのね・・・」

真っ赤になってウジウジするシンジの様子を見て、ミサトはアスカとレイが衝動を抑えきれなくなった訳が よ〜く判るような気がした

 

「 ・・・で、これからどうするつもり?」

今更過去の出来事を変える事は不可能。それよりは未来を計画した方が有意義である

・・・と、いうよりはそれしか無い

「 アスカも綾波も産むって言ってます。僕もそれには賛成ですし、精一杯の事はするつもりです 」

珍しくも決意に満ちた男の顔をする

幸いな事に少女達は『婚姻』にはそれほど拘ってない。一緒に暮らしていければそれで十分だし、今のご時世では『非婚』という選択肢さえある

レイとシンジは大学への道は断念する事にした

出産に向けて当然お金が必要になるし、そんな体で進学する事は出来ない

「・・・別に大学に行かなくても、小説は書けるから・・・」だそうだ

それはアスカにしても同じ事。とりあえず子供が手が掛からなくなるまで キャリアウーマンへの道は遠回りする事にしたそうだ。2,3年は育児に専念するとのこと

「 ふっ。アタシにはまだまだ時間はたっぷりあるからね♪ 」

シンジにしても一家の大黒柱として働く事を決意した

「 目的があって大学を目指した訳でもないですから・・・」

学資を廻す事で当座の生活はなんとでもなる

ただ、新しく持ち上がった 問題とは・・・

 

「 ・・・住む家が無いんです 」

 

 

なんでもこの貸家を取り壊してマンションを造る計画が進んでいるらしい。それで持ち主から期限まで立ち退きを求められているそうだ

かといってこれほど安い物件(ボロ家)を新たに探す事が出来るだろうか

そもそもこの家を借りる時にも散々探し回ってやっとの事で見つけたものだった

試しに自分達で調べてみたのだが、マンションでは高すぎるし、アパートではいづれ子供2人増える事を考えると どうにも狭い。おまけにいささか特殊な家庭環境なので変な噂を流されるのもごめんだ

条件的には一戸建ての貸家が良いのだがとれもこれも予算をオーバーする物件ばかり

国連からの援助は打ち切られる。アスカとレイには子供が産まれる。おまけに家を追い出される

それこそにっちもさっちも行かなくなってやっとの事ですがったのが、プカプカ浮いている藁こと 葛城ミサトだった訳である

しかしながら この藁は 実に意外な提案をするのである

「 ふぅ〜〜ん・・・」

しばらく考え込んだと思うと、急に顔を上げて

 

「 ・・・それなら、いっそ・・・ねぇ、シンちゃん。あなた、家を建てる気はない? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後、ミサトに車で連れ出されたシンジは小高い丘のふもとに居た

周囲はまだたっぷりと自然が残っている・・・というよりほとんど『原野』。車がやっとすれ違い出来るかどうかといった道が細々と続いている

「 ここら辺もすっかり寂れちゃったわよね。しょうがないか・・・もう5年近く経ったんだし・・・」

ミサトは車を停めると、感慨深そうに辺りを見渡す

「 あっ、でも ここも来年になったら開発されるから家も人も集まるわよ。さっき何かの工事していたの 見たでしょ? あれ、駅を作っているのよ。4月には全線開通の予定だから すぐに開発ラッシュが始まるわよ 」

丘に向かって登りながら ミサトは説明した

「 ・・・そういえば確かテレビで言ってました。市の中心部から直通電車が通るって・・・」

シンジも思い出したように語る。事実、あちこちに建設会社や不動産屋の看板が目立つように建てられていた。一部では既にブルトーザーで地面を掘り返している場所もある

鉄道が通り駅が出来れば それこそあっという間に人が集ってくる。荒野も開発されてすぐに住宅地や商業地に変身だ。地価もぐんぐん上昇する

「 ・・・でも、そうするとこんな所に家を建てるなんて・・・予算オーバーじゃないですか?」

開発が決まった時点で、砂糖に群がるアリの様に いろんな会社が土地を買い漁る筈である。そこに『個人』が介入する余地など残っているだろうか

しかし、ミサトは謎めいた微笑みを浮かべると 丘の上の斜面を登っていく

後を追う様に シンジも坂を駆け上がる

そんなシンジの視界に飛び込んできた光景は・・・

 

   『 廃墟 』 だった

 

 

その丘は台地になっていたようで、頂上部分はかなりの敷地が水平に広がっている。但し何年も放置されていたらしく雑草が膝の辺りまで生い茂っていた。そんな植物の間から天に向かってそびえ立つ 何本もの柱 崩れかかった壁  そして錆びた鉄の枠

何か大きな建物の廃墟跡である。半分は無残に崩れ落ち 焼き焦げている

「 ・・・こ、これは 」

思わず近づこうとしたシンジの足元が急に崩れだす

「 うわっ!」

雑草のおかげで気がつかなかったが、そこは円錐状に地面が削られていた・・・奇妙なくらい正確に地面に開いた穴

『クレーター』 つまり爆発の跡

「  シンちゃん、気をつけてね 」

ミサトの忠告に従い慎重に歩を進めていくと、やがて半分崩れ落ちた玄関らしきくモノへと突き当たる

その壁にかすかに残っている 見覚えのある印。斜めに断ち切られた真っ赤な葉が一枚

・・・ネルフのマークである

「 ・・・ミサトさん、ここって・・・?」

シンジの問い正しげな視線に、ミサトは腕を組んで大きく胸を張った

「 ・・・第六方面前進基地、略して第六基地。そう、ここにはネルフの偵察基地があったの 」

 

ネルフが第三新東京を中心にして張り巡らせたクモの糸。つまり巨大軍事網

主に箱根方面の山を越えて侵攻してくる敵を捉える為にこの基地は造営された

大きなレーダーサイトと小規模ながら迎撃兵器を備え、地下は避難シェルター兼用の弾薬倉庫

巨額を投じて作られた『軍事基地』であった

最後のゼーレとの決戦によって地上部分は半壊されたが、それでも強固に作られた基礎部分は頑強で、5年以上経った今でもいささかも崩れてない

・・・・・・そう、それこそが関係者の悩みの種でもある

・・・頑強過ぎたのだ

ネルフが解体され ネルフの資産と共に当然この基地跡も国連に接収された。国連としては今更この土地に軍事基地を作る必要性はなく ネルフの負債をいささかでも減額する為に 土地を民間に売却する事になった

民間の不動産会社でも、数年後には開発される予定の地域でもあり 丘の上という立地から抜群の景観を期待できるこの土地に触手を伸ばすのは当然である

しかしそこでネックになっのが この堅牢すぎた建物跡

軍事目的で作られた基礎と地下部分は 特殊なコンクリートと建材で構成された正に『特注品』

試算した結果 これを全部取り除くには膨大な費用がかかる事実が判明した

不動産会社としては当然これを全て撤去したうえでの売却を望む。自分達で取り除くには金がかかりすぎ そんな費用を土地の売値に含んだら とんでもない売却値になる。むろんそんな土地売れる筈がない

国連の方でも対処に困った。試しに国連工作部隊に撤去させようとしたら削岩機やドリルの刃はすぐにボロボロ クレーンや重機を導入するにも立地が悪く難しい。地下50メートルまで深く掘って作られた地下シェルターを完全に除くには 丘を全部取り崩すしかなかった

除去する為の経費が 売却予定値の数倍から数十倍に当たる事が確定

『N2爆弾でも使ったら一発なんですけどね・・・』 と、工作隊の部隊長は無責任にもこうのたまったそうだ。そんなモノ使用したら経費は数百倍に膨れ上がる

結局不動産会社と国連との取引は完全に破綻

ならば工場か研究施設として売れないかと打診してみたが、立地もよくなく 何よりも悪名高いあの『ネルフ』の基地だったという事実は大きなマイナスポイントにしかならなかった

結果として国連としては売却するどころではなく、逆にわずかとはいえ日本政府に土地の税金さえ払わねばならない事態となった

それから4年、完全な『厄介モノ』となったこの土地の処分が巡り廻って 元ネルフ作戦部長であるミサトの元に舞い込んだのである

 

 

「 ・・・ここに、ですか?」

ミサトの言う『マイホーム予定地』を聞いて、しばし呆然と周囲を見つめるシンジ

ぐるりと見渡せば 小学校や中学校ならグラウンドを含めてすっぽり入るだけの余地がある。個人の住宅の敷地と言うより、十数戸分に分譲して売り出すだけの広さだ。しかし基地跡が撤去出来なければ買う人も居ないだろう

・・・不気味な廃墟跡、それもあのネルフの施設跡の脇にわざわざ家を構えようとする酔狂な人間はまず出ない

小高い丘の上という場所も眺めは最高だが、生活環境として難しい面も出てくる。実際 この地区も開発に伴って電気や水道も普及する筈なのだか、丘の上まで広げる計画は今の所無いようだ。下手すると『陸の孤島』と化してしまうかもしれない

そんないくつもの不利な条件が重なってこの予定地の値段は驚くほど安い。シンジ達が引越しを考えて貯めていた貯金で何とか購入出来る程だ

「 もっとも不動産所得税はちと高いけどね。何しろ周りの地価が凄い勢いで上昇しているだもの♪」

いくら丘の上が安くても周囲の地価が高ければ 当然納める税金も高くなる。お役所仕事の典型ってやつだ。

・・・実際、国連の方で売り急ぐのもそれが原因の一つとなっている

「 土地と家の名義人はシンちゃんって事で良いでしょう。建設費に関してはわたしも何割か援助するし きっと他にもスポンサーが出てくるわよ。」

「 えっ!?」

ミサトの思いがけない話に シンジは振り返る。するとそこには不思議な笑みを浮かべたミサトが腕を組んでいた

「 勿論、条件があるわ。家が完成したら・・・わたしも一緒に住まわせて貰うからね♪」

呆気にとられたシンジに まるで悪戯が成功したかのように彼女は不敵に笑った

「 ミ、ミサトさんも此処に?」

「 あら、わたしと一緒は嫌?」

「 い、いえ。そんなつもりじゃなくて・・・」

顔色を赤や青に変えて慌てるシンジの様子に、ミサトはお腹を抱えて必死に笑いをこらえる

そして笑いを抑えると 呟くようにポツンと・・・

「 ・・・もう、ひとりでは生きていけなくなっちゃったから・・・」

「 ・・・・・・ミサトさん 」

久しぶりに見た彼女の切ない顔に、シンジはそれ以上声をかける事が出来なかった

ミサトは、知らない間に自分より高くなったシンジの顔を見上げて

「 わたし達・・・もう一回 『家族』としてやっていけないかな?」

心の傷痕から血がどくどくと流れていくような 痛みを伴う叫び

孤独な影を見せる『姉』の姿に、シンジは何度も何度も首を上下に振った 

 

 

「 別にこれを完全に撤去する必要は無いのよ。この基礎は造りがしっかりしてるし、残っている壁なんかもそのまま利用しましょ 」

生い茂った雑草からかすかに見えるコンクリート部分を軽く叩きながら、ミサトはシンジを案内した。一見もろそうな廃墟跡だか 実はとてつもなく頑丈だ

「 本当は最初にリツコが名乗り出たんだけどね・・・」そこで初めてミサトは言いよどむ。前々から彼女は自分の自由に出来る研究施設を欲しがっていたのは事実だが・・・

ネルフの幹部職員が、ネルフの施設跡を買い取る。それもマッドサイエンストと名高いあの赤木リツコが・・・である。

それだけで不正な香りと危ない雰囲気が満載だ。国連に要らぬ緊張を押し付ける事になるし、そもそもあの『天災科学者』を野放しにするような計画には 親友であるミサトも危機感を抱かずにおれなかった。何らかの抑えが無ければ危険極まりない

「 リツコは大きな地下室が欲しいだけなんだって。・・・何の研究するつもりか知らないけどね・・・」

「 ・・・・・・ 」

「 で、此処の地下を使わせてやる代わりに 当然リツコにも協力してもらおうと・・・ね♪」

つまり自分達が抑えになるついでに リツコからも金や技術を搾り取ろう・・・というミサトの計算でもある。勿論 シンジにそこまで裏の事情を説明するつもりもない

「 ・・・って事はリツコさんもこの家に住むんですか?」

「 う〜〜ん・・・まぁ、そうなるかもしれないわね♪」

あっけからんなミサトの返事に、シンジはこの先の展開が見えてきたような気がした

どうやら此処に大きな家を建てて、アスカやレイそれに子供達 ミサトにリツコ 多分その他にも何人かで暮らす事になりそうだ

「 ・・・つまり此処に建てるのは 『みんなの家』 って事なんですね 」

「 シンちゃん・・・やっぱ 嫌?」

ミサトの質問に一度だけ目を閉じる。脳裏に浮かぶのはドタバタで毎日が呆れる程にぎやかな日々

そしてどこか吹っ切れたような笑顔で

 

「 いえ、それはそれで何か楽しいような気がしますね 」 

 

 

 

 

 

 

 

 


管理人のコメント
 本当にお久しぶりのマイスイートホーム。
 わくわくしながら読みました♪
 しかし、ミサトさんは藁なんですね。
 でも今回は役に立ったので、流木くらいには進化したのかな?(笑)
 
 さて今回のお話は、続きがあります。
 しばらく「G」とは違う(笑)、どらこさんわーるどが楽しめそうです♪
 
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