すべての戦いが 終わった後、ネルフには 国連主体の査察が 入った

人類補完計画・・・その忌まわしき陰謀を解明する為に

査察は 結局 数年の長きに渡り、チルドレンと 呼ばれていた子供達も 成長していった

行き場所を無くした 子供達・・・犯罪者かもしれない彼等を 親族は 引き取るのを 躊躇したのだ・・・は、渋々ながらも 小さな家で共同生活を始める

誤解や すれ違いなどから 様々な争いもあったが、やがて 家族としての絆を 築いていった 子供達

彼等は 監視を受けながらも、順調な 中学生活 そして 高校生としての日常を楽しむ時間を 与えられる

しかし、高校卒業と 同時に、国連からの生活援助も打ち切られる事になった

エバァのパイロットとして 受け取れる筈の サラリーは、ネルフの解体によって 消滅し、自分達の力だけで 生活していかなけばならない羽目となっていく

そこで 彼等は、他のネルフ幹部と共同で 遠く離れた郊外に、広大な土地をタダみたいな値段で購入し、大きな屋敷を建てる事とした

丘の上の その家・・・1階と2階には アスカ、レイ、シンジとその子供が2人 それにミサトと ペンペン一家

地下室に リツコ、マヤの師弟コンビ

屋根裏には ゲンドウと 冬月が 何時の間にか 住み着き

離れに住む トウジと ヒカリの新婚夫婦は 屋敷の一部を使って 幼稚園を経営し

庭のプレハブ小屋には 加持と3人の脱走兵トリオ マナ、ムサシ、ケイタが 探偵事務所を営んでいる

当然 いつも うるさい程 賑やかだった・・・

 

 

 

 

マイ スイート ホーム

愛しの子供たち

 

 

「 ただいま〜 ♪ 」

シンジが 男の子と 女の子を 引き連れて 帰ってくる

「「 おかえりなさい ♪ 」」

アスカと レイが出迎えると、それぞれの子供を 抱き上げた

「 ただいま、 アスカ ママ! 」

栗色の髪の 女の子が、元気よく母親に抱き着く

「 ・・・ただいま、レイ ママ・・・」

蒼い髪の男の子が レイの胸の中で 甘えた

シンジは、そんな いつもの情景に 頬を緩めると、両手に 買い物袋を持ち上げて 台所へと 向かう

「 ごめん、遅くなっちゃったね。すぐに晩飯の仕度 するから・・・」

後ろでは 子供達が それぞれ 今日あった出来事を 母親達に 報告していた

「 ほら、これ! パパに 買ってもらったのよ♪ 」

「 良いわねぇ〜、リオ。ご飯 終わってから 食べるのよ 」

手の中の チョココロネを 得意そうに 見せびらかす 小さな女の子

その隣では 男の子が ポケットから 慎重にアニメのキャラクターが描かれているお菓子を 引き出している

「 ・・・僕は これ・・・」

「 ・・・そう、よかったわね 」 と 頭を撫でる レイ

そんな やり取りを聞きながら、父親である シンジは 台所の扉を開けた

 

この家には、二十畳近くもある台所が 用意されている

そこでは、ヒカリが 夕食の仕度に 取り掛かろうとしていた

「 ごめん、洞・・・ヒカリさん。遅くなっちゃったね・・・」

慌てて 青いエプロンを身につける シンジ

「 ううん、私も今来たばかりだから・・・お米だけ 洗っておいたわ。」

と、黒髪の女性は 炊飯器の セットをする。

「 今日は18人だから、3升で いいわよね?」

「 うん。特売で 鳥肉が 安かったから、から揚げと 照焼きにしようと 思うんだけど・・・」

「 そうね。時間も無いから それで良いんじゃない?」

シンジは 丁寧に手を洗うと、まな板の準備をする

「 それじゃぁ、から揚げのタレ 作ってくれるかな? それから カツオの切り身が あるから、お刺し身にしたいんだけど・・・」

「 OK♪ 任せて頂戴!」

ヒカリは 手早く 調味料を 混ぜ合わせた

 

鳥肉をまな板に広げて 半分は 小さくぶつ切り、そして 調合した タレに漬け込む

残りの半分は 切り開いて、こちらも タレに漬け込んだ後、鉄板に並べて上に玉ねぎやレモンのスライスを振り掛ける

一方 ヒカリは、新鮮なカツオを 捌くと 串に刺して 表面を軽くあぶった

そして 冷水に冷ましてから 皿に切り分けていく

皿の中央には 大葉を敷いて その上に 葱や生姜の細切りを こんもりと 盛り付ける

シンジは 鳥肉を漬け込む間に、味噌汁の用意

たっぷりのお湯に 煮干しと昆布で 手早く 出汁をとっておく

そんな時、裏口の扉が 開き 加持が ひょこり 顔を出した

両手に何か 持っている

「 今日は、ほうれん草と アスパラ、 レタスを採っててきたよ♪ 」

と、袋を シンジに見せた

加持達は やたら広すぎる敷地を利用して、裏に 畑を作っている

・・・趣味と実益を 兼ねているのだろう

余った野菜は、”無農薬野菜”として 近所の主婦に 売りさばいていた

「 すみません、加持さん。いつも いつも・・・」

礼を言う シンジに、彼は 笑って 手を振った

「 なに、土地の使用料としたら 安いもんさ♪ おまけに 晩飯まで ご馳走になるんだし・・・」

ふっ と 昔・・・それほど過去の事でもない・・・を 思い出す 加持

探偵事務所の収入が途絶えて、4人で キュウリやねぎに味噌をつけて 齧っていた頃の事を 思い出した

あまりにも悲惨な夕食・・・シンジが それを目にして、食事に誘ってくれたのだった。

加持は 土から上げたばかりの野菜を 丁寧に水洗いすると、ザルにあげた

「 どうする、シンジくん?」

「 時間ないから バターソテーと サラダで・・・あ、少し 味噌汁用に残しておいて下さい。」

「 了解しました、隊長殿♪ 」

おどけて敬礼すると、野菜を切りはじめた

オーブンの中からは 美味しそうな肉の焼ける匂いが 漂いはじめていた・・・

 

 

一方 この屋敷のリビングは、いつもの様に 賑わっている

昔話に花を 咲かせているのは、ケンスケと トウジ。それにアスカも加わっていた

「 でさぁ、トウジったら 硬派だ 硬派だって言いなから、委員長の尻に敷かれっぱなしでさ・・・」

「 な、何 言うとんのや! ワシは 亭主関白や!」

はっきりと言い切るトウジ・・・しかし、彼を見る ケンスケとアスカの視線は 疑わしい

日頃の行動を見ていれば どちらが 上 なのかは、一目瞭然だった

「 ・・・お前、本当に そう 思ってたのか?」

ケンスケの言葉に 怯む事なく 胸を張る トウジ

「 当たり前やろ、ワシは男やで!」

・・・どうやら、ヒカリの亭主操縦法は 絶妙らしい。自分が 支配されている事も気づいてない様子だ

『 今度 じっくりと そのへんのコツを ヒカリから聞き出さなきゃね・・・ 』

アスカは、心の中に しっかりと記憶した・・・

 

レイとマユミは、角の方で 執筆活動に忙しかった

何しろ 締め切りが間近い

・・・いわゆる 耽美小説だが

「 やっぱり、ここは 主人公を雨の中に走らせて・・・」

「 ・・・雨・・・濡れた服・・・透ける体・・・良いかも・・・」

どうやって 少年同士を 絡ませる状況を作ろうかと 思案中

そこに ひょこりと 顔を出したのは マナ

モニターの中の 書きかけの文章を しばらく読む

「 ふぅ〜ん・・・ちょっと アクシデントが欲しいわね・・・」

「 ・・・アクシデントですか?」

「 うん、途中で 喧嘩に巻き込まれる・・・なんて どう?」

「 ・・・傷ついた唇・・・破れたシャツ・・・血の味がするキス・・・」

「 うっ、そして 2人が抱きしめ合うんですね・・・」

何やら 妖しい目つきで 妄想中の 3人であった

 

真ん中で 騒がしいのは、やっぱり 2人の幼児

キャア キャアと 甲高い子供の声が 響いている

「 ほらぁ〜、怪獣さんだぞ〜♪ 」

それと 一緒に、ピンクの怪獣のヌイグルミを手にして、子供と 転げ回っているのは マヤだった

「 ガォー♪ ガォー♪ 」

自分の半分ほどもある ヌイグルミにしがみ付いて、子供達は コロコロと はしゃぐ

「 目から 光線! ビビビーッ♪ 」

「 ・・・口から 炎、ゴォーー 」

2頭の 怪獣が、互いを攻撃し合っていた

そんな2人の子供に、マヤが 指差す

「 ほらっ、あそこに 悪い宇宙人が居るわよ〜♪ 」

指差されたのは、さっきまで 彼等の遊び相手をして 疲れきった顔の ムサシと ケイタ

「 げっ!? 又ですか・・・」

「 ・・・勘弁して・・・」

そんな哀れな声に 耳も貸さずに、彼女は 叫ぶ

「 それぇ〜、やっつけろ〜〜♪ 」

「 ガォーー 」

「 ・・・突撃・・・」

そして3頭の怪獣は、哀れな2人に 突進した・・・

 

そんな情景を ミサトは ビール 片手に 眺めていた

その目は とても 楽しそうに 輝いている。

一人の女性が 静かに 隣に座った

「 ・・・平和ね・・・」

ふと すぐ側から そんな ため息が ミサトの耳に聞こえてくる

「 !? ・・・リツコ 」

白衣を脱いだ彼女は、お気に入りの煙草を口に咥えると、ミサトに 向かった

「 そうでしょ・・・私達に こんな時間が 訪れるなんて・・・あの頃は とても 考えられなかったわ・・・」

そして 大きく 煙を吐いた

「 ・・・本当ね。」

ミサトも 口に ビールを流し込む

しばし、過去の戦いの記憶を 呼び覚ます 2人

不思議な 沈黙が 彼女達の間を 流れていった

いさかい が あった。隠し事も 裏切り も あった。互いを 憎んだりもした。

しかし 時間が そんな 傷痕を すっかり 洗い流していた

「 ・・・ミサト。あなた、今 幸せ?」

ふと 尋ねられた

酔いにまかせた頭で 少し考える ミサト

「 ・・・そうね、面白い仕事はある・・・美味い飯も食える・・・そして 何より 暖かい家庭がある。

とりあえず、幸せ・・・かな?」

誤魔化すような笑いを浮かべる

その顔が 少し 染まっていたのは、アルコールの所為なのか、それとも・・・

リツコは 気だるそうに 煙草を吹かした

「 ・・・そうね。これで うちの会社のゲームソフトが もっと 売れてくれれば・・・」

重い息を吐く 彼女に、ミサトの冷たい言葉

「 アンタが、もっと まともなもん作れば 良いだけよ・・・」

「 な、なんでっすって〜〜! ミサトこそ いつまで その30過ぎの体で プロレスラーなんて やるつもりなのよ!」

「 うぐっ!?」 口から ビールが 吹き出す

「 それとも、女子プロレス界の長老でも 目指しているのかしら?」

一気に ヒートアップする 2人の年増

「 うっさいわね! アンタ、 最近 シワが 弛んでるわよっ!」

「 ぐっ!・・・ミサトこそ 近頃 お腹が ビール腹っに なったんじゃない・・・」

そして いつもの様に 毒舌が 飛び交った

・・・まっ、仲の良い 証拠だろう

 

 

ビィ〜〜♪

リビングの一番奥から、不思議な警報が鳴り響く

ゴォー

かすかな モーター音

そして 赤いランプが点灯すると

ピンポン♪

チャイムの音がして、奥にあった 金属のドアが 開かれた

プシュー

中から現れたのは 2人の男

赤いサングラスに 不気味なアゴ髭の男

いかにも 生真面目そうな 白髪の老人

一瞬 リビングには、今までと違った 緊張した空気が 流れた

「 ・・・碇 司令・・・」 ミサトが つぶやく

「 ・・・副司令・・・ 」 マヤの小さな声

ピリピリとした空気を漂わせながら、2人の男が エレベーターで 現れた

・・・屋根裏部屋からだが・・・

 

流石に ”腐ってもゲンドウ” なのだろうか

強烈な存在感があった

かっては 秘密組織の 司令まで 勤めた男だ

人類の盛衰さえも 手にした事もあった

何よりも 今だに ネルフの制服を着込んでいる

威圧的な雰囲気に、かつての部下達は 息を飲まれた

1年以上同居しているのだが、今だに 馴れる事が むずかしい

しかし・・・

産まれた時からの 存在で、それを ちっとも 気にしてない者も居る

「「 おじいちゃ〜ん ♪ 」」

栗色の頭と 蒼い頭が、ゲンドウ目掛けて 突進していった

ドムッ♪

体と 体が ぶつかりあう 音

そして かつての 男を知っている者だったら、信じられない 光景を目にするだろう

2人の幼児に 押し倒される あの ゲンドウを・・・

「 おひげ〜♪ おひげ〜♪ 」

「 ・・・めがね、めがね・・・」

そして 顔を もみくちゃに される ネルフの総司令だった 男を・・・

「 ・・・リオ、マオ、止めんか・・・」 弱々しく 抵抗する ゲンドウ。しかし・・・

「 ひげだぁ〜!ひげだぁ〜! 」 髭を 引っ張る手は 止まらない

「 めがね、めがね・・・」 あっという間に、サングラスが 奪い取られる

そして うろたえた顔が 顕わになった

すぐ側では、冬月が 含み笑いを 洩らしている。ゲンドウは 幼児達に 逆らえそうもない

『 ・・・ぷっ。なるほど、可愛い 男だ・・・くっくっくっ 』

その目は ちょっぴり 羨ましそうだった・・・

 

 

ゲンドウが、2人の孫の オモチャと化している

トウジの 熱い”漢”論を、アスカと ケンスケが 呆れた顔で 聞いている

相変わらず 妄想に のめり込む レイ、マユミ、マナ

マヤは 冬月に お茶を 差し出して、子供達からの 襲撃を逃れた ムサシとケイタは 一息 ついていた

そんな リビングに、ヒカリの声が 響き渡る

「 みんなぁ〜、夕食よぉ〜〜♪ 」

一斉に 人影が 動き出す

ある者は テーブルの仕度、ある者は 食器の準備、又 ある者は 出来上がった料理の 運搬・・・

「 ちょっと、トウジ! 摘み食いしちゃ 駄目!」

「 ケイタは 箸を、ムサシは 椅子を 並べて〜 」

「 お〜い、今日は 何人分 用意すれば 良いんだ?」

「 う〜ん・・・全部で 18人だね。」

「 さぁ、レイさん。後は 夜の仕事ですね。」

「 そこ テーブル 空けてくれ〜!」

「 ・・・早く 片づけ・・・」

「 シンジ! これ 運んじゃうわよ〜 」

バタバタと 動き回っていく

しかし

・・・相変わらず ゲンドウだけは、子供達に 遊ばれていた。

祖父の体に 馬乗りする 孫達

「 ・・・誰か 何とかしてくれぇ〜〜・・・」

それを 見ていた マユミが 口を開いた

「 ・・・あの〜、良いんですか?」

しかし 周りの人間は 何故か 無関心を装っている

冬月が 苦笑しながら、彼女に 説明した

「 放って置きたまえ。奴だって 本気になれば、幼児の2人くらい 充分に 扱える筈だ。

しかし、あの子達を 拒絶した事はない。

アイツも 遊んでいるのだよ・・・」

優しい口調に、マユミも 納得する

「 そうですね・・・」

どうやら 子供達から 完全に 舐められている感じだが、本人が 納得しているならば、余計なお世話・・・と いった所だろう

「 ・・・なんとかしてくれ〜〜」 再び 哀れな悲鳴が 聞こえた

しかし、結局 誰も 助けようとは しなかった・・・

 

 

ずらり と テーブルの上に並んだ 料理の数々

キツネ色に揚がった から揚げ

じっくりと 焼き上げられた 照焼きは、レタスの上に こんもりと 乗っている

たっぷりと 薬味を細切りした周囲には 新鮮なカツオの叩き。それには ニンニクのすりおろしが 添えられていた・・・当然、肉が まだ 苦手な レイの前には 大盛りで

ボール一杯の 野菜サラダ

ほうれん草とアスパラとベーコンのバターソテーは艶々した 輝きを 保っている

それに ヒカリ手作りの漬物。彼女が ぬか床をかき混ぜるのは 日課である

・・・野菜のほとんどは 加持達が作った作物だった為 以外と 安く済んでいた

黄金色に 輝いているのは シンジ特製、山芋のすりおろしを混ぜた 卵焼き

各自の前には 白いご飯と お味噌汁 それに 取り皿が 並んでいる

床に置かれている容器。それには カツオの切り身の端切れと アジの開き。それを 取り囲んでいるのは5羽の 温泉ペンギン

すっかり 準備が出来た所で、号令が かかった

「 じゃぁ・・・いただきます!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「 いただきますっ! 」」」」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「 クワァー! 」」」」」

一斉に 箸が 握られ、料理へと 向けられる

各員、 自分の取り分を 確保しようと 必死である

レイは まず 取り皿に ニンニクを 山盛りにして、にっこりと 微笑む

アスカは 取れるだけのから揚げを 皿に乗せた

子供達の 世話に追われる お父さん、シンジ。 「 パパ、これ食べるぅ〜 」 「 ・・・僕は あれ・・・」 その姿は どう見ても ”お母さん” だ。

「 碇、私にもよこせ・・・」 「 ふっ、問題ない・・・」 卵焼きの取り合いする のは2人の老人。すぐに 幼児達にせがまれて 譲るはめになった

ご飯粒をポロポロこぼしながら がっついている トウジ。ヒカリは そのご飯粒を 『 やれやれ・・ 』 と 言いながら 拾っていた

トウジと 対抗していたのは ムサシ。体格も 2人は拮抗している

意外にも大食漢なのは ケンスケだった。なにしろ 収入の大半を カメラの器材につぎ込んでいる為、貴重な栄養源を逃す訳にはいかない

隣り合った 加持とミサトが、悪態をつきながら 食事を楽しんでいる

それに 向かいのリツコが 加わると もう 暴露合戦となった

マナと マヤは 皆のご飯や味噌汁の オカワリに 大忙し 。そんな2人を さりげなく フォローする ケイタ

マユミは そんな騒がしい食卓に しばし唖然とするが、すぐに 笑顔に変わった

椅子の下では ペンペン一家が 盛んに鳴き声をあげている

賑やか過ぎる この家の食事・・・これも 毎度の事であった・・・

 

 

 

 

ザッバァ〜〜ンンンッ!!!

盛大な水飛沫が 止んた後に、 トウジの声が 風呂場に 響いた

「 はぁ〜〜〜ぁ、やっぱ 気持ちエエなぁ〜〜〜♪ 」

顔を ゴシゴシと こする 仕草が どこか オヤジくさい

その隣では ケンスケが 頭にタオルを乗せて のん気な顔

「 ふぅ〜・・・ここの風呂は 格別だね♪ 」

彼が言うのも、 もっともであった

銭湯に負けない程の 大きな浴槽・・・大人 数人が 手足を 伸ばしても 余裕がある

それに 正真正銘の 温泉なのだ

リツコが 地下深くの源泉から 引いてきたお湯は、24時間 いつでも 入れる様になっていた

これは 不規則に為りがちな 住人達にも、そして 頻繁に 泥だらけになる 園児達にも 好評だった

事実、ここの幼稚園の 売りの ひとつにもなっている・・・温泉付きの幼稚園 という訳だ

シンジは、自分の息子の頭を 洗ってやっている

「 ほら、お湯かけるから 目を つぶって・・・」

「 ・・・・・・ 」 コクッと うなづく 泡だらけの 頭

ザッバァ〜〜

白い泡が 流れ落ちると、艶やかな蒼い髪が 現れた

仕切りの向こうの 女湯から、アスカのけたたましい声が 聞こえてくる

「 こら! リオ、我慢しなさい。」

そして 漏れてくる 幼女の高い声

「 いやだぁぁぁ〜〜!」

「 ・・・後、少しだから・・・」

「 もう、駄目だぁぁ〜〜〜 」

どうやら 女湯では、今日も 腕白なお姫様が 母親達を てこずらせている様だ

シンジは 息子を きれいに洗い上げると やっと 開放する

「 マオ、もう 良いよ・・・」

「 ・・・うん 」

開放された 幼子は、とてとてと 湯船に向かった

その目標は、お湯の中で 浮かんでいる まだ 小さい温泉ペンギン

「 ・・・ペン次郎・・・」

こっそりと 抱きしめようとするが、陸の上ならいざ知らず、水の中で ペンギンを 捕まえようとするのは 至難の技である

腕の中を するりっ と すり抜ける 温泉ペンギン

追っかける 子供

「 ・・・待って 」

「 クワッ、クワッ!」

たちまち お湯の中は 大騒ぎだ

避難した トウジと ケンスケが、シンジの隣に座って 体を洗いはじめる

「 なあ、シンジ・・・」

「 ん? なに・・・」

「 今夜な、うちに ケンスケを泊めてやろう と 思うんやけど・・・」

「 ん、良いんじゃない。」

「 それでな・・・明日の朝飯・・・」

何やら言いにくそうな トウジに、シンジは苦笑する

「 良いよ。ケンスケの分も 用意すればいいんだよね。」

「 すまんな。」

トウジの後ろで 手を立てて 拝む仕草をする ケンスケ

「 悪いな。いつも いつも・・・」

「 かまわないよ。どうせ ついでだし・・・すると 明日は21人分か・・・」

何やら 思案する シンジ

トウジは 怪訝な顔する

「 21人? ・・・日向はんと 青葉はんとで 20人じゃないんか?」

日向は現在、 ミサトが所属するプロレス団体の マネージャーとして 働いている

最初は、ミサトの付き人だったのだが その手腕を買われて 引き抜かれたらしかった

今でも 毎朝 マイクロバスで 参上して、ミサトの送り迎いを している

・・・噂では、とある 女子プロレスラーと 親密になっているらしい

一方、 青葉は リツコのソフト会社の営業部長となっている

・・・と いっても、リツコと マヤと 青葉しか 居ない会社だが・・・

つまり 仕事というのは、毎朝 この家の地下室から 製品を持ち出して、それを あちこちの店に 売りに回るという 事である

・・・まるで 行商だった

と 言う訳で、2人とも 朝 この家に訪れたついでに、朝飯を御馳走になっている 次第である。

これで いかに シンジが お人好しである事が わかろう

 

トウジに質問に、シンジが答える

「 うん。でも 明日、カヲル君が 帰ってくるんだって・・・」

「 なに! 渚の奴が 帰ってくるんか!」

トウジの顔が 厭そうに 歪んだ

カヲルは 学生時代から モデルとして デビューし、今では 世界中から 引っ張りだこ の存在だった。

そして 世界中で その浮き名を流している

・・・男女問わずに

当然 トウジとの相性は良くない

「 アイツ・・・高級マンションに住んどる癖に・・・」

「 うん。でも、やっぱり 誰かが 迎えてくれるのって 嬉しいから・・・」

カヲルの思惑も知らずに、シンジは 微笑む

ちなみに 滅多に使われる事が無いカヲルの部屋は、シンジの隣だった

『 それだけや無いんやど。 あの ホモ太郎は・・・』

トウジは 口の中だけで 呟いた

( どうりで、アスカ と レイ が ピリピリしてる筈や・・・知らんど、ワシ・・・)

明日の修羅場を 想像すると、胃が痛くなる彼であった・・・

 

すっかり 体を洗い終えたシンジは、浴槽で 遊んでいる男の子に 声をかける

「 マオ〜、行くよぉ〜 。 置いていっちゃうよぉ〜〜♪ 」

父親の声を聞いた 幼児は、ペンギンとの追いかけっこを 名残惜しそうに 止めると、シンジの後を追う

「 ・・・待って、パパ・・・」

シンジは 追いかけてきた息子を、フワフワのバスタオルで迎えると 丁寧に拭いてやった

そして 着替えを済ませると 風呂場を後にする

そこで ばったりと アスカ、レイ、リオ と 遭遇

風呂上がりの肌が、ピンク色に上気していた

「 そっちも 終わったの?」

「 えぇ。 もう リオったら 言う事 聞かなくなっちゃって・・・誰に 似たのかしら?」

アスカの愚痴が 漏れる

「 ・・・ 」

レイが 何か 言おうとしたが、シンジが 視線で止めた

何も 余計な 争いを起こす事はない

大人達の足元では、子供達が はしゃいでいる

そして そのすぐ脇を スタスタと通り過ぎる 白と黒のツートンカラーの生き物

「 あっ、ペン次郎・・・」

男の子は、名前を呼ぶと 捕まえようと 走り始める

そして 角を曲がった瞬間

「 きゃ!」

短い女性の声がした

廊下に転んだのは マユミである

「 マオ!」

「 マユミさん!」

ドタドタと 殺到する 大人達

「 大丈夫ですか、マユミさん?」

「 えぇ、平気です。」

幸い 男の子も 彼女も 怪我は無いようだ

ほっと 一安心すると シンジは、男の子に 向かった

「 マオ! 駄目じゃないか!」

「 ・・・・・・ 」

父親の叱責に 身を縮める 男の子

ただ 合わした両手が、 困惑した様子で 絡み合っている

「 さぁ、マユミさんに 謝りなさい・・・」

「 ・・・・・・ 」

幼児は 頬を膨らませて うつむくだけ

「 マオ! 謝りなさい。」

シンジの声が 一段と 大きくなる

緊張した空気が 流れた

そんな時、幼女が 2人の元に 近寄って来た

そして、男の子に向かってしゃべる

「 あんた、ばか?」

男の子は おずおずと 顔を上げた

「 ・・・どうして そういう事 言うの・・・」

再び 叫ぶ

「 あんた、ばか?」

彼は小さな声で 答えた

「 ・・・ごめんなさい。こんな時 どんな顔したらいいのか わからないの・・・」

三度、少女の声

「 あんた、ばか?」

男の子は、女の子の手をつないだ

「 ・・・さき、行くから・・・」

そして 2人で 仲良く 歩き去っていく

子供達の後ろ姿を 呆然と 見送る 大人達

「 ・・・何、あれ?」

後ろから トウジの声が 響いてくる

「 子供ちゅうもんは、親の真似するもんや・・・」 うんうんと うなづいている。

互いに 顔を見合わす アスカ、レイ、シンジ

「 一体、いつのまに・・・」

「 ・・・アスカの口癖・・・」

「 レイ、アンタだって・・・」

すると 更に 追い討ちを掛ける トウジ

 

「 ・・・どうでもエエけど・・・逃げたんとちゃうか?」

今度は 間抜けな顔を 見合わせる3人だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ども、どらこです。

なおさん・・・次男誕生 おめでとー!

一応、前作の続きの つもりです

・・・って 1万5千ヒットも 兼ねて(笑)

 

さて、この世界

ネルフ解散のあおりを受けて、貧乏になった 彼等のお話です

助け合って 生きていく 彼等 エバァ キャラクター

うむ、感動的な話に・・・なりませんね(笑)

 

さて、 これからも なおさんのご活躍を 期待しまして・・・

・・・親馬鹿さんもね♪

 

 

 

 

PS

リオ君が 女の子になったのは とある パパの リクエストであります

文句は そっちにね ♪ リオ君。

 


 はい、とあるパパのなおです。(笑)
 万生誕生&『るなぶる』壱萬五千ヒット記念に、どらこさんからの『マイスイートホ−ム』の続編を頂きましたぁ。

 個人的には、続編を すっごく楽しみにしていたのです。(なんたって、リオ、マオが出てくるし)
 日記のネタもでてきて、日記作者冥利(?)に尽きると言うものです。(笑)
 
 しかし、カヲル。名前は出てきてますがまだ登場していませんね。
 と、いうことは …… 期待 していいのですね? どらこさん!(笑)
 
 
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