キスの温度 特別編 『シンちゃん フェスティバル 』

 

 

 



それは6月に入ってすぐの事


突然の使徒の襲来

シンジ達 チルドレンは苦戦しながらも なんとか撃退した 『後』 の事である・・・

 

 

 

 

 

 

 

  『 伊吹マヤの場合 』

 

 

 

パタッパタッパタッ

両手に書類を抱えた女性が急ぎ足で駆けていく

本来なら 走るのは厳禁なネルフ本部なのだが とにかく時間が惜しい

正に『ネコの手も借りたい』ぐらいの忙しさだ

・・・でも 先輩だったら、借りてきたネコを可愛がるんだろうな

憧れの人のいくつかあるうちの癖を思い浮かべて、どこか幼い女性の顔が一瞬 ほころぶ

わざわざ ことわざに突っ込んでいる彼女。名前は『 伊吹 マヤ 』という

 

ふぅ〜 忙し、忙しい♪

資材の発注は終わったし、アメリカ支部との連絡は青葉さんがやってくれた・・・と

後は資料をまとめて 先輩に提出すれば 今夜はいいのかしら?

今回 零号機はあまり被害なかったけど

弐号機は右足が完全に破損、初号機に至っては胸部装甲が溶解 左手の神経接続も損壊 おまけに頭部に亀裂まで・・・シンジ君ったら無茶ばっかだもんね

ふっふっ、初めて逢った時には 『線の細い子』ってしか思えなかったんだけど、やっぱり 『男の子』ね

いざってなったら 何とかしてしまうんだから♪

 

小さな笑みを洩らすと、ふと喉が渇いてくる

通路を途中で曲がって 自動販売機コーナーまでやってくると

・・・そこには さっき思い浮かべていた男の子が すやすやと眠っていた

 

「 シンジ君?・・・寝てるの? 」

やだ、本当に寝てる

もう いくら疲れているからって こんな場所じゃ身体に悪いのに・・・

・・・

・・・仕方が無いか

使徒の襲来でここんとこずっと本部に詰めっぱなし

最後の決戦の時なんかエントリープラグの中に18時間も居たんだものね

14歳の子には 過酷過ぎるわよね

本当、私達ったら大人のくせしてこんな子供達に辛い目ばっかりあわせて

・・・

・・・ごめんね、シンジ君

 

彼女の心が 彼女自身を苛む

自分の無力さが 一番痛感される瞬間

マヤはベンチに腰を下ろすと シンジの顔をそっと見つめた

黒いサラサラの髪が、少年の頬をくすぐっている

陶磁器のような白い艶やかな肌

男にしては長いまつ毛がピクピクと震え、一瞬だけ苦悶の表情を示す

十代前半の男の子、その透明な存在感が彼女の胸の中を小さく動かした

彼女があまり得意とはしない『雄(オス)』の匂いが、この少年からは微塵も感じられない

影で『ショタ』とか『ユリ』とか囁かれている彼女の胸腺を 何故か強く刺激する美少年が そこに居た

 

ごくりっ

 

どういう訳か大きな唾が 彼女の喉を通り過ぎる

疲労で少し青ざめていた頬が 妖しく染まりだす

喉が渇く

のどが かわく

なんだか とっても のどが かわく

なにかが ほしい

このうえをみたしてくれる やわらかな きもちのいい モノを・・・

 

彼女の中で何か見たこともない『獣』が目覚めようとしていた

 

「 ・・・シ、シンジ君・・・」

乾いた彼女の口からかすれた声

そしてその手が妖しい動きをしようとした瞬間

 

「 う、うぅ〜ん 」

パタンと少年は寝返りをうった

シンジの腕が一瞬何かを掴んだような仕草をする。そして小さな音をたてて崩れ落ちた時には

もう 彼は安らかな寝息をたてていた

「 すぅ〜、すぅ〜♪ 」

まるであどけない子供が眠るような・・・

 

彼女は2.3度大きく瞬きをすると 小さな 小さな笑いを浮かべた

「 もぅ、シンジ君ったら♪ 」

その笑顔には先程まであった妖しい影はどこにも存在しない

そこに居るのは いつもの朗らかでちょっと潔癖症な 『伊吹マヤ』

・・・私ったら一体何をしようとしたのかしら?

こんな純真な男の子に対して

私ったら・・・まだまだ駄目ね。修行が足らないなぁ〜

 

天井を見上げ 思わず自分自身に対して苦笑する

そしてペンチから立ち上がろうと・・・

・・・したが、何かが彼女を止めた

彼女の胸の中に封印されたはずの 『何か』が

もう一度 そっとシンジの寝顔を覗き込む

柔らかな寝顔にしばし見惚れる

 

・・・これくらいなら 良いわよね

 

・・・そう、これだけなら

 

そしてゆっくりと顔を近づけた

 

 

ちゅっ♪

 

 

 

「 やだぁ〜♪私ったら ふ・け・つ 」

ピンクに染まった頬でいやんいやんと身体を妖しく くねらせる

「先輩♪これが『汚れる』って事なんですねぇ〜。本当に『辛い』ですぅ〜 」

・・・ちなみに全然辛そうには見えない

妖しい動きが更に一層加速する

ふにゃらふにゃら

ほにゃらほにゃら

くねくねくねくね

不思議なダンスが一先ず終了すると、彼女はもう一度振り返って 少年の寝顔を見つめた

「 うふっ♪私ったら、私ったらぁ〜〜」

そして疲れなど微塵も感じさせない陽気なスキップで歩いていくのであった

 

きゅっぽ、きゅっぽ、きゅっぽ (これは違います)(爆)

 

 


 

 

 

 


管理人のコメント
 シンジ君生誕記念の二作目です。
 マヤにもKISSされたシンちゃん。
 うらやましい状況には変わりない。(笑)
 さてさて、この次はどうなりますやら。(笑)
 
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