キスの温度 特別編 『 シンちゃんフェスティバル 』

 

 

それは6月に入ってすぐの事

突然の使徒の襲来

シンジ達 チルドレンは苦戦しながらも なんとか撃退した 『後』 の事である・・・

 

 

 

 

 

 

 

 『 葛城ミサトの場合 』

 

ネルフの通路を ペッタラ ペッタラと気の抜けたような足音が響いていく

足を半分引きずるように歩いているのは ネルフの若き作戦部長である『葛城ミサト三佐』

ここ数日の激闘の後であろう 髪の毛はボサボサ、げっそりとやつれ果てた顔にはくっきりと疲労の跡、

明らかに寝不足と分かる瞳は真っ赤に充血し、目蓋は半分以上垂れ下がっていた

こうなるといくら美人でも台無し、歩きながらも あっちにフラフラ こっちにフラフラで見ているだけでも危なげだ

口から洩れるのは うめき声だろうか? 「 あぁ〜」 とか 「 寝むぅ〜 」とかの声が聞こえてくる

百年の恋もあっという間に醒めるような酷い光景だ

 

あぁぁ、疲れた〜

毎度の事ながら あいつ等(使徒)ときたら人の都合もお構いなしで攻めて来てくれちゃって・・・

おかげで今週はずっとネルフに篭りっぱなしだったじゃない

ここ3日で5時間しか寝てないし・・・おかげで肌もボロボロ、また婚期が遅くなる〜〜(涙)

 

とにかく疲れた、眠い〜

関係各省への連絡は済んだし、エヴァの補給と修理の打ち合わせも終わったわね

あと残っていた仕事は・・・今回の報告書か

・・・あっ、そうそう 始末書も何枚か書かなきゃならないんだっけ

勘弁してよぉ〜

私の一番苦手なやつじゃない

・・・

・・・なんとか巧く 日向くんに押し付けられないかしら?

 

などと呆けた頭で悪企みしていると、ふと彼女の視界に飛び込んできたものは

・・・飲み物の自動販売機

・・・その脇に設置されたベンチ

・・・その上で横になっている人影

 

ああぁ〜! なにぃぃ〜〜、私がこんなに疲れているのに ひとりで寝っ転がっているなんて 良い度胸してるわねぇぇ〜〜〜(怒)

 

ドスドス とまるで何かでも踏み潰すかの如く 足音荒くベンチに駆け寄るミサト

人はこれを 『八つ当たり』と言う

そんなミサトによる局地型大地震が訪れようとした瞬間

彼女の疲れでぼやけた視界にピントが合い、くっきりと映ったのが

・・・黒いさらさらとした髪

・・・子供特有のきゃしゃな身体

・・・そして男か女かの判別が難しい 中性的な寝顔

そう彼女もよく知っている少年

たとえ偽りだとしても 家族として一緒に暮らしている男の子

エヴァンゲリオン初号機専属パイロット、 サードチルドレン 『 碇シンジ 』だった

 

まるで般若のようだった彼女の顔が みるみるうちに優しい菩薩の如く変化していく

怒れる訳がない

自分には怒る資格さえない

命を賭けて使徒と戦ってくれたのが、この一見頼りなさそうに見える少年なのだ

大人達の都合でいい様に振り回され、好きでもないのにエヴァに乗ってくれているのが この男の子なのだ

彼女自身の『復讐』の駒として、訳も理由も分らずに戦っているのが この大事な『弟』なのだ

今回の使徒にしても、シンジの奮闘が無かったらとうてい撃退出来なかったろう

そんな彼が戦い終了後 少しの睡眠を貪っていたとしても、彼女には怒ることは出来ない

起こさないようにそっとベンチに座ると、あどけない寝顔の少年に指を伸ばす

そして優しい手で その頭をそっと撫でた

 

 

シンちゃん

頑張ったわね

今回もシンちゃんのおかげで やっと勝てたわよ

本当に、お疲れさま

あらっ、そういえばシンちゃんの誕生日・・・過ぎちゃったわよね

今年は盛大にお祝いしてあげようと計画していたんだけど・・・あの使途のおかげて゜無茶苦茶

ごめんね、シンちゃん

・・・

・・・

・・・

・・・これは私からの誕生日プレゼントの代わりよ

・・・来週、パーティやるからそれまでこれで我慢してね♪

 

彼女はゆっくりと顔を寄せた

そして・・・

 

 

ちゅっ♪

 

 

 

ちょっとだけ赤く染まる頬

彼女はすくっと立ち上がるとパシンッと両手で気合を入れる

「 さぁぁ〜て! お仕事頑張りますかっ 」

 

そして元気良く去っていくのであった

 

 

後に残された少年

そのほっぺには 薄いルージュの痕がかすかに刻まれていた


 

 

 

 


管理人のコメント
 どらこさんから、シンちゃん生誕記念の『KISSの温度』を頂いてしまいました。
 今回の作品は連作だそうです。
 知らない間にKISSされたシンちゃん。
 さてさて、この次はどうなりますやら。(笑)
 
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