どらこさんの
KISSの温度「K」Edition 3rd


 白いベット
 白いシーツ
 その上には 女性が ひとり
 荒い息
 やつれた容貌
 目の周りには くっきりと くま が浮かび上がり
 汗で 髪が 横顔に へばり付いていた
 そんな彼女の元に 年配の看護婦が やってくる
 両手で 運んでくるのは、白い布の固まり
 そして 彼女の枕元に そっと 置く
「 可愛い お嬢さんですよ。」
 布に包まれていたのは、まだ 産まれて間も無い 赤ん坊だった
 
 ・・・この子の為に とんでもない苦労をした・・・
 それが 偽りのない 彼女の本音でもある
 半年以上に渡った 不自由な生活
 ・・・特に ここ 2,3ヶ月の 困難は 計り知れない
 そして 数時間かかった ”産みの苦しみ”
 ・・・何の為に 私は こんな事しなければならないのだろう?
 理不尽さに 周りに 当たり散らした事もあった
 しかし 終わってしまえば それも ただの思い出
 その集大成は 今、産着に包れて 眠っている
 しわくちゃで 真っ赤に染まった 顔
 ぎゅっ と 閉められている まぶた
 ・・・そして こぶし
 そっと 人差し指を 伸ばすと、意外な程の強い力で 握ってきた
 彼女は クスッと笑う
『 もぅ・・・産まれたばかりだってのに・・・お転婆さんね♪ 」
 握られた指が 柔らかくて 暖かい
 そして 強い
 ・・・まるで 離れていく母親を しっかりと捕らえるかのようだ
『 ばかね♪ ママは どこにも行きませんよ 』
 優しく微笑むと 彼女は そっと キスする
 そして 用意しておいた 名前で 呼びかけた
 
「 ようこそ、アスカちゃん。 私が ママよ・・・」
 
 
 

seiriyu@e.jan.ne.jp

なおのコメント(^ー^)/

 出産というものは大変なことです。
 僕も子供が生まれた時立ち会ったのですが、怖くて怖くて、そして……感動しました。
 すべての命に幸あらんことを。


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