どらこさんの

KISSの温度「」Edition 21th

 

 

 

 


 すっかり闇に包まれた海岸
 しかし、今夜はその海の中に輝く巨人の姿があった
 巨人は陸地の方に顔を向けると
 赤いサングラスを少し指で戻し・・・笑った
 にやりっ
 
 
 
 
 暗闇の中にいくつもの光条が走る
 
『 ぐおぉぉーーー 』
 
 胸のパレットガンの銃弾を受けた光の巨人が苦しげな咆哮
 
「 倒れろーー」
 弐号機を操るアスカは雄叫びをあげながらも更に引き金を引き続けた
 
『 ぐぅぅぅ 』
 大きく仰け反った巨人はそれでも口元に軽い笑み
 黒い髭で覆われたピンク色の唇がにやりっと歪む
 しかし、その顔面目掛けて 一線の光
 ポジトロンライフルから放たれたビームがその不気味な髭を焼き尽くした
 
『 うぉぉぉーーーー 』
 初めて悲鳴をあげた巨人を見てレイは小さな笑顔
 手にしたライフルを大きく掲げると 後ろを振り向いた
 
「 ・・・碇くん、今よ 」
 
 ダン、ダン、ダン、ダン
 初号機は空気を引き裂きながら疾走
「 うわぁぁぁぁーーーー」
 ただ大声を張り上げながら手にした二又の槍を振りかざす
 狙いは目の前の光の巨人
 第一使徒『アダム』でもあり そして少年の父親でもあった存在
 そしてその胸に赤く禍々しい槍を突き刺した
 
「 とぅーーさぁぁーーーーんんんん 」
 
 
 身体をロンギヌスの槍に貫かれたまま
 巨人はピンクの唇を歪めてかすかに微笑んだ
 そしてそのまま海の中に沈んでいく
 ぶくぶくと大小の泡を吹き上げながら倒れていく『それ』を見つめて
 少年は小さくつぶやいた
 
「 ・・・これで、やっとこれで終わったんだ・・・」
 
 
 
 
 
 海岸線に並んだ三体のエヴァンゲリオン
 最後の戦いを終えて少年はやっとエントリープラグから降りてきた
 彼を迎えるのは 紅の少女 蒼の少女 そして赤いジャンバーをまとった女
「 お疲れさま、シンちゃん 」
 女は自分の父親をたった今葬り去った『弟』に、そんなねぎらいの言葉しかなかった
 少年はどこか暗い瞳を見せる
「 ・・・ミサトさん、本当にこれで終わったんですよね 」
「 えぇ、そうよ。・・・もう、これで私達はあの『癒し』に怯える日々を過ごす事はないわ 」
「 ・・・そう・・・ですよね 」
 なをも暗く沈むシンジに対したのは二人の少女
「 なによ、しっかりしなさいよ!バカシンジ 」
「 ・・・碇くん、あの人は使徒アダムと同化していた・・・私達は倒すしかなかったの・・・」
 そっと寄り添う三人の姿に ミサトの顔はかすかにほころぶ
 そして
 
「 シンちゃん、もう悪夢は終わったわ。これからは新しい時代が訪れるのよ 」
 少年の肩を抱くと海に向かった
「 ほら、日の出よ。新しい朝の始まりよ 」
 
 闇に包まれていた東の空が
 次第に白く染まっていく
 水平線の下から現れた赤い陽
 少しずつ昇っていくそれを見つめながら
 彼等はやっと悪夢を振り払っていくのだ
 
「 そう、これで全ては終わったのよ 」
 
 
『G』の悪夢が・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 が、
 一瞬にして彼等の顔が恐怖に強張った
「 う、嘘でしょ・・・」
「 そんなバカな・・・」
「 ・・・もう、駄目なのね・・・」
「 なんて、インチキ!」
 
 その朝
 昇った太陽は
 
 ・・・ふたつだったのだ
 
 歪んだ赤い円の下
 水平線の下から現れたのは
 
 ピンク色の唇
 
 そしてそれを覆う黒き髭
 
 
 呆然と立ち尽くす彼等を見下ろして
 それは小さく笑った
 
『 ・・・すべてはシナリオ通りだ、問題ない 」
 
 
 
 
 ・・・そして 海に 空に 大地に・・・地球にキスした
 
 
 

 


管理人のコメント
 2002年、最初のFF作品は、どらこさんの『KISSの温度「G」』でした。
 ご堪能いただけたでしょうか?
 きっと、霊験あらたかですよ。(^^;
 
 管理人としては何も申せません。
 ただただ、初「G」に頭(こうべ)を下げ、
「今年も一年間、無事にこのサイトを続けることが出来ますように」
 とお祈りするだけです。(笑)
 
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