ひとりの男が居た
彼はじっと頭上を見上げている
その視線の先にあるのは・・・巨大な顔
人造人間エヴァンゲリオン その初号機
周囲にはその男と 初号機しか居ない
彼は食い入るように見つめていると 不意にその唇を歪めた
< ニヤリッ >
「 ・・・時が来た 」
男の低い声が 冷たい空気の中に響きわたる
「 ・・・とうとうその時が来た・・・私は これをずっと待っていた・・・」
赤いサングラスの下の瞳は 熱を帯び、ヒゲに覆われた口元が 嬉しそうに微笑む
「 ・・・時が来た。今こそ お前を癒してやるぞ・・・ユイ 」
男は用意していたハシゴを持ち出すと、初号機の口元に 傷つけないようにそっと立てかける
足場を2,3度確認すると ハシゴをゆっくりと登りはじめた
カチャッ、カチャッ♪
小さな金属音
男の手や足も 歓喜で少し震えている
白い手袋に覆われた その手
そこには 『アダム』を取り込んだ痕が くっきりと残っている筈
一瞬だけ その手を見つめた
「 ・・・まさか、アダムと同化した事により こんな力に目覚めるとはな・・・」
「 奇跡の力・・・神の技・・・『癒し』か・・・」
「 最初はシンジだった・・・シンジを目覚めさせるに成功した・・・」
「 不眠症の女性や、アルコール中毒の部下を治す事も出来た・・・」
「 疲れきった部下達を 活気づけた事もあった・・・」
「 歩けなかった少年や、片思いの少女、孤独な少年をも癒す事が 出来た・・・」
「 女癖の悪かった男は矯正させたし、裏切り者には安住の場を与える事もした・・・」
「 いつも寂しそうだった娘が活発になり、老人までもが 元気になったぞ・・・」
「 あの男は・・・いや、まぁ 良いか・・・」
ちょっとだけ口を濁す
「 我が癒しの力は 万能だ・・・きっと お前さえ・・・」
とうとう男はハシゴを最上段まで登りつめた
すぐ側には 巨大な初号機の唇
「 もう 使徒は来ない・・・お前がそこに留まる理由も消滅した 」
「 後はあの老人達の醜い計画が残っているだけだ・・・しかし もう そんな事に付き合う意味はない 」
「 私のこの力があれば な・・・」
「 さぁ、ユイ・・・今こそ我らはひとつとなるのだ 」
男はそっと その唇を近づける
「 ふっ、癒してやるぞ・・・」
「 ウォォォォォ〜〜〜ンッ!!!!」
突然 初号機は咆哮をあげる
顎の拘束具が簡単に弾けとび 巨大な歯が剥き出しとなった
そして・・・
グチャッ、グチャッ♪
バリッ、ボリッ♪
モグモグ・・・ゴックン♪
肉と骨を砕く音の後に 一瞬の咀嚼音
ガチャンッ♪
フロアにハシゴが倒れる金属音が響く
それっきり 初号機は動作を停止した
唇にかすかに残っているのは 赤いLCLの跡だろうか?
その後、ゲンドウの姿を見た者は 誰も居なかった・・・
管理人のコメント
どらこさんから『KISSの温度「G」Edition』のシリーズ最終話を頂きました。(^-^)/
最後は、念願の初号機と一つになったお話。
これで「G」の魔の手にかかる恐怖は去りました。(^^;
不幸(幸福)な子羊も枕を高くして眠れるでしょう。
どらこさんお疲れ様でした。(^-^)/
ん?
そういえば「A」「R」「R(金髪)」「M」は?
…………
どらこさんっ! こうなったら毒を喰らわば皿までっ。
最後まで行きましょう!(T-T)
管理人の矮小な嗜好で制限してしまうにはあまりにも惜しい作品です。
書いたら読むかって?
う〜ん。(^^;;;;;;;;;;;;;;
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