どらこさんの
KISSの温度「G」Edition 14th

 少女が ため息をついていた
 鏡に向かって 深いため息を・・・
 
 
 ここは第3新東京
 とある高級マンションの最上級階
 一人の少女が じっと 鏡を見つめている
 鏡に映る 少女の顔立ち
 黒い髪は スラリッと肩まで流れ
 恍い肌に 黒い眼鏡が陰明をつけている
 口元には ポツンと黒子が一つ
 じっと見つめる黒い瞳は どこか脅えているようにも見えた
 彼女は 一言 つぶやいた
「 ・・・陰気な顔だな・・・」
 実は他人から見れば かなりの美少女である
 とある集まりでは 『 苛めてみたい少女』の5本指に入る事 確実だ
 ・・・彼女にとって嬉しい事ではないが
 とにかく ある傾向のマニア(眼鏡っ娘愛好家)には たまらない存在なのだが
 本人にとっては ただのつまらない顔らしい
「 はぁぁぁぁ〜〜」
 ガックリと肩を下ろすと 深いため息が洩れる
 そしてノロノロと上げた視線は 机の上の写真立てに 注がれた
 写真の中の少年は はにかんだような笑みを浮かべている
 どこか中性的に 男の子
 彼女はその写真の少年に つぶやいた
「 ・・・碇さん 」
 
 ほんの短い 付き合いだった
 どこか よく似ていた2人
 でも、彼は 自分に悩みながらも 戦う事を選んだ
 その決断した姿が まぶしかった
 やがて 彼女は 家の都合で 彼が守った街を離れる事となる
 切ない別れ
 今度は 自分を変えようと 決意した筈なのに・・・
「 ・・・結局、私は・・・」
 少女の瞳から 一粒の雫が 流れ落ちていった
 
 やがて 再び この街に移る事が決まった
 内心 再会を心待ちにしていた彼女
 しかし、いざ 彼の学校に 転校してみると
 何も変わらない 彼女が居た
「 ・・・バカな マユミ・・・」
 自分自身を傷つける 言葉だった
 
「 でも・・・しょうがないか 」
 自分を乗り越えた彼は、更に輝く存在となっていた
 そして彼の両脇をしっかりと 確保していた2人の少女
 燃え立つ炎のような 少女
 深い湖みたいな 彼女
 太陽と月
 紅と蒼
 まるで 対称的だが、どこか 似ている彼女達
 互いに牽制しながらも 彼の周りを巡っていた
 とても あの間には 割り込めない・・・
 悲しい諦め
 でも、違った
 結局 言い訳だった
 勇気を振り絞れなかったのだ
 それを あの少女が証明してくれた
 突然 転校してきた 活発な彼女
 栗色の髪に黒い瞳の 元気なあの娘
 彼女は 赤と蒼の少女には目もくれないで 少年にアタックした
『 なんて 勇気あるんだろう・・・』
 沸き立つ心
『 私も あれくらい勇気があれば・・・』
 しかし、鏡の中の自分は 冴えない顔だった
 深いため息だけが 部屋の中に流れていく
 
「 私って どうして こうなんだろう・・・」
 
「 自分を変えたいのに・・・」
 
 
 自分の膝を見つめる 少女
 そんな彼女の耳に 不気味な男の声が 届いた
 
「 ふっ、その願い 適えよう・・・」
 
 
 思わず 少女は顔を上げた
 キョロキョロと 部屋の中を見渡す
 自分以外の人など居ない
『 空耳だな 』と思い込もうとした 少女の願いは 微塵に崩される事となる
 再び 聞こえる 男の声
 
「 ふっ、問題ない・・・」
 
 外だ
 部屋の外から 聞こえてくる
「 ま、まさか・・・」
 震える手で カーテンを開けた
 ガラッ♪
「 ・・・うそ 」
 そこに 彼女は 信じられないモノを目の当たりにする事となってしまった
 
 窓のガラスにへばり付いていた男
 手足が まるでカエルの吸盤みたいに張り付いている
 そして おぞましいのは ヒゲに覆われた ピンクの唇
 ヒルかナメクジをガラス板に乗せたら こんな形になるだろう という 不気味さ
 ブヨブヨと蠢くソレが 邪悪に歪む
 窓にへばり付いて 声など出せる訳がないのに、何故か聞こえる声
 
「 ふっ、癒してやる・・・」
 
 ガラリッ♪
 窓が開くと 男が部屋の中に侵入してきた
 あまりの出来事に 少女の神経は麻痺している
 逃げる事も すっかり 忘れていた
 頭が 真っ白になっていたのだろう、口にしたのは この場にそぐわない言葉だった
「 ・・・ここは、21階ですよ。一体 どうやって・・・」
 男はゆっくりと 微笑んだ
「 ふっ、問題ない・・・」
「 それに その窓・・・鍵が掛かっていた筈なのに・・・」
 男が近寄る
「 全ては シナリオ通りだ・・・」
 そして男の両手が 少女の肩を捕らえる
 彼女は、そこで初めて金切り声を あげた
 
「 あ、あなた、誰なんですかぁぁぁぁ 」
 
 男は ピンクの唇を ニヤリッと 歪ませる
「 ふっ、私は 癒す者 だよ・・・」
 そして 唇が 襲い掛かって来た・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 翌朝
 学校の通学路を 賑やかな集団が通り過ぎていた
 赤 蒼 茶 の3人の美少女
 そして それに囲まれた 一人の少年
「 ちょっと! なんでアンタが 此処に居るのよ? 」
「 ふふん♪私はね、ネルフの総司令から 直々に シンジの護衛を頼まれたんだから♪ 」
 得意げに胸を張る マナ
 当然、ゲンドウは そこまで 許可していないが、そこは元スパイ
 いつのまにか ちゃっかり ゲンドウの署名入りの書類を用意していた
「 だから 私はねぇ、いつでも シンジの側に居なきゃならないのよね〜 」
 と、少年の腕を捕らえようとする
 すかさず その間に体を滑り込ませる 寡黙な少女
「 ・・・アナタは要らないわ・・・私が 守るから・・・」 ポッ♪
 当然 抗議の声
「 ちょ、ちょっと〜〜 」
「 コラァァ、ファースト! どさくさにまぎれて なんて事を〜 」
 バチッ、バチッ、バチッ♪
 紅と蒼と黒の瞳が 凄まじい殺気をぶつけあう
 その隣では、困惑顔のシンジ
「 あ、あの・・・」
 どうせ 無駄な言葉を掛けようとした瞬間
 ドスンッ♪
 いきなり 背中に 柔らかなモノが当たってきた
 当然 地面にこける
「 痛たたた・・・」
 思わず 悲鳴をあげながら、振り向いたシンジの目に飛び込んで来たモノは・・・
 
 ちょっと 短すぎるんじゃないかな・・・と 思う程の ミニスカート
 柔らかそうな太股がその下に続く
 見上げるシンジの視線は スカートの奥に 釘付けだ
 ゴクッ♪
 たっぷり 5秒は 瞳を固定してから、やっと上の方に向かう
 薄手のシャツを こんもりと 持ち上げている曲線
 白い脱色したような髪が 肩まで伸びて キラキラと光っていた
 ピンクのフレームの眼鏡の奥には、悪戯そうに瞳が見える
 口元の黒子だけは どこか 見たような・・・
「 あの・・・誰ですか?」
 すると 見知らぬ少女は にこやかに笑う
「 HA♪HA♪HA♪ 今日はイイ天気よね♪ 気分はオレンジ サンシャイン♪ 」
「 ・・・は?」
 間抜けな声を出す少年
「 やぁねぇ♪ わたしよ。 わ・た・し♪」
「・・・ 」
 どんぐりまなこの シンジ
「 もー、貴方のスイートハート、マユタンでしょ♪ 」
「 ・・・ひょ、ひょとして・・・山岸さん?」
「 当たりぃ♪ 会いたかったわ、マイ・ダーリン♪ 」
 ギュッと 少女は 少年に抱き着く
 柔らかな感触に 鼻の下を伸ばしながら、シンジは 一言だけ つぶやいた・・・
 
「 ・・・山岸さん、壊れちゃった・・・」
 
 
 
 
 
 ちゃん、ちゃん♪
 と、言うわけで 壊れマユミです
 髪は恐怖の為に 脱色しております・・・(笑)
 
 
 
 

seiriyu@e.jan.ne.jp

なおのコメント(^ー^)/

 壊れたマユタン。ソレもまた魅力的かも。<オヒ
 でも、ゲンドウ……21階までどうやって来たんだ。
 ぶにょぶにょとした吸盤が手にもついているとか。(汗)
 しかし、これで残るは……(滝汗)
 
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