どらこさんの
KISSの温度「G」Edition 7th

 男は 白い建物を見上げた
 高さ10メートル以上の 堅牢な建物
 ・・・病院である
 何も言わずに 眺めていた男は
 一言だけ つぶやく
「 ふっ・・・ここか・・・ 」( にやりっ)
 
 
 
 ガチャン♪
 冷たい床の上に 松葉杖が転がった
 100メートル程の長い廊下
 壁際に 伸びる 手すり
 そして 口惜しそうに唇を噛む 少年
「 くっ、なんちゅう 情けない足や!」
 少年は 松葉杖を掴むと、それを杖にして 立ち上がる
 フラフラする体
 特に 右足が 頼りない
「 せっかく直してもろうたのに・・・歩くことも出来へんとは・・・」
 思わず 洩れた 愚痴
 ネルフの最新技術で 完治した 足だったが
 やはり 再生された所為か、今ひとつ 少年の体とは合わない様だ
「 くっ、情けないわ・・・」
 彼の怒りは、その右足よりも 不甲斐ない 自分自身に向けられる
 彼らしいと言えるだろう・・・
 そんな彼の後ろから 声が 響いた
「 ・・・鈴原くん、だね?」
 振り返って、彼の瞳に映ったモノは・・・
 赤い・・・どう見ても 普通じゃない サングラス
 怪しげなヒゲ
 やたらと 高い背
 そして 血色の悪い男
 ( 悪人や・・・どっから 見ても、悪人面しとる・・・)
「 なんや、おっさん?」
 ある意味 失礼な問いかけにも男は 黙って 笑みを浮かべた
「 鈴原くんだね?」
「 あぁ、そうや 」
「 私はネルフの者だ・・・」
 その言葉で やっと納得したのだろう。少年の態度が 軟化する
 ・・・何と言っても、足を治療してくれた ”恩人”である
 多少 妖しくても 受け入れるしかない
「 なんの用や?」
「 ・・・その足を 見せてもらいたい 」
「 まぁ、ええけど・・・」
 ぎこちなく足を差し出すと、男は 熱心に調べた
「 ・・・ふむ、問題ないようだな・・・まだ 歩けないのか?」
 痛い所をつかれたのか、ぶっきらぼうな答え
「 あぁ、そうや・・・」
 それを聞いて 男は にやりっ と笑う
「 ・・・ふっ、問題ない 」
 そして その右足に そっと キスした
 
「 な、な、なんや、おっさん!」
 ギョッとして 足を引っ込める 少年に、男は 謎めいた微笑み
「 ふっ・・・その足を癒してやろう・・・」
 そして 今度は 少年に迫った
 立ちすくむ彼に、そのヒゲだらけの顔を寄せる
 唇を むぅ〜と 突き出す
「 うわぁぁぁ♪」
 バタンと ひっくり返る 少年
 そんな彼に、ゆっくりと迫る ヒゲオヤヂ
 ・・・クリームでも塗っているのか 艶々した ピンク色の唇
「 ヒィィィィーーー 」
 まるで 蜘蛛のように 手足をバタバタさせて 後退すると
 クルリッと 後ろを向いて、少年は 逃げた
 ・・・恐怖に歪んだ顔で
 ・・・動けない筈の足で
 ・・・100メートル程の廊下を 10秒切るくらいの 速さで
 もし、彼が 冷静だったら ひょっとして”神”の世界を 体験したのかもしれないが・・・
 少年には、あの凶凶しい”唇”から 逃げるだけで 精一杯だった
「 た、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ 」
 絶叫が木霊する その廊下
 男は 静かに 微笑む
 
 ・・・ふっ、あれだけで 癒せるとは
 ・・・我が”力” は 偉大だ・・・
 
 

seiriyu@e.jan.ne.jp

なおのコメント(^ー^)/

 今回はトウジが標的に……(滝汗)
 足にされたトウジはかわいそうだけど……
 ゲンドウ……いいヒト?(爆)


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