男は 白い建物を見上げた
高さ10メートル以上の 堅牢な建物
・・・病院である
何も言わずに 眺めていた男は
一言だけ つぶやく
「 ふっ・・・ここか・・・ 」( にやりっ)
ガチャン♪
冷たい床の上に 松葉杖が転がった
100メートル程の長い廊下
壁際に 伸びる 手すり
そして 口惜しそうに唇を噛む 少年
「 くっ、なんちゅう 情けない足や!」
少年は 松葉杖を掴むと、それを杖にして 立ち上がる
フラフラする体
特に 右足が 頼りない
「 せっかく直してもろうたのに・・・歩くことも出来へんとは・・・」
思わず 洩れた 愚痴
ネルフの最新技術で 完治した 足だったが
やはり 再生された所為か、今ひとつ 少年の体とは合わない様だ
「 くっ、情けないわ・・・」
彼の怒りは、その右足よりも 不甲斐ない 自分自身に向けられる
彼らしいと言えるだろう・・・
そんな彼の後ろから 声が 響いた
「 ・・・鈴原くん、だね?」
振り返って、彼の瞳に映ったモノは・・・
赤い・・・どう見ても 普通じゃない サングラス
怪しげなヒゲ
やたらと 高い背
そして 血色の悪い男
( 悪人や・・・どっから 見ても、悪人面しとる・・・)
「 なんや、おっさん?」
ある意味 失礼な問いかけにも男は 黙って 笑みを浮かべた
「 鈴原くんだね?」
「 あぁ、そうや 」
「 私はネルフの者だ・・・」
その言葉で やっと納得したのだろう。少年の態度が 軟化する
・・・何と言っても、足を治療してくれた ”恩人”である
多少 妖しくても 受け入れるしかない
「 なんの用や?」
「 ・・・その足を 見せてもらいたい 」
「 まぁ、ええけど・・・」
ぎこちなく足を差し出すと、男は 熱心に調べた
「 ・・・ふむ、問題ないようだな・・・まだ 歩けないのか?」
痛い所をつかれたのか、ぶっきらぼうな答え
「 あぁ、そうや・・・」
それを聞いて 男は にやりっ と笑う
「 ・・・ふっ、問題ない 」
そして その右足に そっと キスした
「 な、な、なんや、おっさん!」
ギョッとして 足を引っ込める 少年に、男は 謎めいた微笑み
「 ふっ・・・その足を癒してやろう・・・」
そして 今度は 少年に迫った
立ちすくむ彼に、そのヒゲだらけの顔を寄せる
唇を むぅ〜と 突き出す
「 うわぁぁぁ♪」
バタンと ひっくり返る 少年
そんな彼に、ゆっくりと迫る ヒゲオヤヂ
・・・クリームでも塗っているのか 艶々した ピンク色の唇
「 ヒィィィィーーー 」
まるで 蜘蛛のように 手足をバタバタさせて 後退すると
クルリッと 後ろを向いて、少年は 逃げた
・・・恐怖に歪んだ顔で
・・・動けない筈の足で
・・・100メートル程の廊下を 10秒切るくらいの 速さで
もし、彼が 冷静だったら ひょっとして”神”の世界を 体験したのかもしれないが・・・
少年には、あの凶凶しい”唇”から 逃げるだけで 精一杯だった
「 た、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ 」
絶叫が木霊する その廊下
男は 静かに 微笑む
・・・ふっ、あれだけで 癒せるとは
・・・我が”力” は 偉大だ・・・
なおのコメント(^ー^)/
今回はトウジが標的に……(滝汗)
足にされたトウジはかわいそうだけど……
ゲンドウ……いいヒト?(爆)